以前、以下の記事を書いた。
R-style » Evernoteの根本の思想と今後への期待
未来のEvernoteがどのような姿をしているのかはわからない。でも、こういう形であればもっといいだろうな、という予感みたいなものはある。というか、私たちはその姿を少し知っているのだ。
続きを書こう。
なに、そんなにたいそうな話ではない。みんなよく知っている、アレの話だ。
共通点
そう、iTunesだ。このアプリは、音楽再生アプリでもあるが、ミュージックライブラリ管理アプリでもある。
つまり、情報管理ツールなのだ。
その視点でちょっと見ていこう。
まず、iTunesは、シングルライブラリである。すべてが一つのデータベースにまとまっている。
もし、Evernoteを誰かに説明しようとして、その人がiTunesを使っているなら、こう聞いてみたらいい。J-popを聴くのとクラシックを聴くのが別のアプリだったら嫌ですよね、と。私たちは、シングルライブラリの有用性を、iTunesを通じてまざまざと感じているはずなのである。
さらに一つ一ひとつの曲には、メタ情報がたっぷり付いている。曲名、アーティスト、アルバム、ジャンル、レート、作成日時……。それらのメタ情報によって、楽曲を検索できる。
ここまでは、まあEvernoteとも共通している。
差異1
大きな違いが「プレイリスト」の存在だ。
ユーザーがデータベースにある曲を使い、好みのプレイリストを作ることができる。
これだけなら、Evernoteのノートブックと同じじゃないか、という気がする。しかし、Evernoteのノートブックは単にメタ情報の変更であり、言ってみれば、あれは検索なのだ。定型の検索で、データベースの一部を切り出しているに過ぎない。だから、ノートの順番を任意に操作できない。
iTunesのプレイリストは、適当に曲を選んで放り込んだ後、自由に順番を移動できる。もちろんメタ情報を使った整列も可能である。この違いは、相当に大きい。ようはプレイリストはユーザーの「ワークスペース」なのだ。
さらにプレイリストには、「スマートプレイリスト」という存在もある。特定の条件を付け、それによってデーターベースから曲を抽出する機能だ。データーベースの曲が数百曲ならあまり使わないが、数千を超えてくる場合は、こうしたアルゴリズム的プレイリストも大いに役に立つ。
Evernoteはどうだろうか。
いや、問いを変えよう。
上記のような機能がEvernoteにあったら、どれだけすばらしいだろうか。
差異2
iTunesに曲を登録するには、とてとてとCDショップに出かけて、買ってきたCDをリッピングする方法もあるのだが、iTunes Storeでポチる方法もある。これがたいへん便利であり、Appleのビジネスモデルも支えている。
Evernoteの場合は、自分でノートを作るか、外部で言えば、Webクリッパーによる取り込みがある。これも大Google航海時代ではたいへん便利である。私たちの日常の情報摂取がブラウザ経由だからだ。
では、仮にEvernote Storeなるものがあったとしたらどうだろうか。そこで靴下を買う?
まさか。
Evernoteの中に入れておいて便利なものを買うのだ。
いろいろある。いろいろあるが、たとえば電子書籍だ。
実装の方法もいろいろある。なんならAmazonと提携して、Kindle端末かKindleアプリのハイライトメニューに「Evernoteに送信する」という一項目を付けくわえてくれるだけでいい。それを押すと、その本の書誌情報と共にハイライト箇所がEvernoteに送信される────
なんという至福。なんという愉悦。
というと、ちょっと大げさだが、たいへん便利なことは間違いない。
Googleの登場で、私たちの日常の情報摂取がブラウザ経由になった。Kindleの登場で、私たちの日常の情報摂取が電子書籍に寄りつつある。Webクリッパーが、私たちの日常に寄り添っているように、電子書籍版の何かも欲しいところだ。
もちろん、コンテンツを直接販売してもいい。そこまで舵を切れば、Evernoteは情報プラットフォームとして新しいステージに立つことになるだろう。
差異3
もう一つ、ちょっとした話を。
iTunesは「音楽再生アプリでもあるが、ミュージックライブラリ管理アプリ」であると書いた。Evernoteは後者として認知されるが、前者はどうだろうか。
一つの仕組みとして、プレミアムで使えるプレゼンモードがある。が、あれは他者に向けた機能である。iTunesで音楽を再生するように、Evernoteでノート内の情報を「再生」できないだろうか。
「いや、PDFとかプレビューできるじゃん」
という意見もあるだろう。その通りだ。でもプレビューだったらOSの標準機能でもできる。私が提案したいのは、「再生」というメタファーを使って、新しい機能は考えられないか、ということだ。
もちろん、それに関してはまったくのノーアイデアである。
でもまあ、「ノートをいかに利用するのか。そのためにEvernoteとしてどのような機能があればいいのか」はしっかり考える必要はあるだろう。
さいごに
私は一人のユーザーであり、しかもかなりコアにEvernoteを使っているユーザーである。6万4000もノートを保存しているユーザーはなかなかいないだろう。
もし上記のような機能を目指してEvernoteが進化を続けるなら、私がこのツールを手放す可能性は限りなくゼロに近い。でも、Evernoteが現状に留まって、代わりに別の似たツールが上記の方向を目指すなら……。
さてさて、皆さんはどのような機能を望むだろうか。
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