2-社会情報論

書店のりばーすえんじにありんぐ

以下の記事を読みました。

妄想・ネット本屋さん – 仮庵

最近、本屋さんのサイトを作るなら? という妄想をしている。予定は別にないのだが、「こういうものを作るとしたらどうする?」は頭の中でひんぱんにやっているので、趣味なのだと思う。

同じようなことはHonkureを作るまでに、あるいは作ってからも延々と考え続けています。

少なくとも、リアル書店をそのままウェブ上に持ってくるような試みはうまくいかないでしょう。環境や制約条件が違いすぎて、コンバートは不完全に終わります。それが機能するのはおそらくVRの世界だけです。つまり、丁寧なりばーすえんじにありんぐが必要になってきます。

書店の書店たる

既存のネット書店と、リアル書店の違いに目を向ければ、やはり本との出会い方の違いが挙げられるでしょう。前者は、基本的に検索志向です。名前やジャンルを知っている本を探すのはたやすい。しかし、それ以外の本との出会いについては、トップページ的な場所に集められた本と、ランキングの上位に位置した本だけです。書店で言えば、「入り口」付近しかないことになります。

書店に通うような人は、やはり書ブラ(=書店内をブラブラと散策すること)に価値を見出しているでしょう。で、その書ブラの効用とは、名前も存在も、あらかじめ知らなかった本との出会いです。そうした、ある種のセレンディピティーに満ちた出会いがあるからこそ、今日も私たちは、闇夜の篝火に吸い寄せられる蝶のように書店へと足を運ぶのです。

ブラウジング・リンク・サーフィン

さて、ウェブならではの体験を考えてみると、やはり思い浮かぶのがリンクです。おそらくみなさんもWikipediaのページを延々と読み漁った経験をお持ちでしょう。リンクからリンクと飛び回り、知識(あるいは蘊蓄)の海を泳ぎ回る。素晴らしい体験です。ハイパーテキストの恩恵がそこにはあります。

ウェブ上の書店は、その恩恵を存分に使うものとなるでしょう。一冊の本があり、その本につらなる別の本がある。その別の本にも、やはりつらなる本がある。そうして、情報迷宮組曲が完成する。

ここまではよいでしょう。問題はその次です。

シビュラはブックガイドたりうるか

もう一つ、デジタルならではの体験を考えてみると、「別に自分で本を探さなくてもよくね?」というアイデアに辿り着きます。情報をこちらに向けて送ってくれるのがデジタルメディアの良いところです。だから、私が検索キーワードを持たないような本を教えてくれるような何かがあれば、リアル書店とはまた違った「出会い方」ができるかもしれません。

ただし、それをいかに実現するのかは難しい問題です。

購入履歴のビッグデータを元にしたリコメンド。これはある程度はうまくいくでしょうが、ある程度しかうまくいかないでしょう。自分の購入履歴は、ようは自分の過去の足跡です。その足跡に沿った本ならば見事に提示してくれますが、進む方向をシフトさせてくれるような本との出会いは期待できません。なぜなら、そのような本は、読んでみるまでは自分が読むとは思いもつかなかった本なのですから。大げさな言い方をすれば、そうした本は「自分」を変える本であり、過去の「自分」に基づいた提案では、どうしたってたどり着けないのです。

では、ウィズダム・バンクによるオススメはどうでしょうか。

ウィズダム・バンクとは__私が今作った概念ですが__、有識者が「読むべき本」をリストアップしておき、それをしかるべきタイミングで通知してくれるシステムのことです。「今のあなたは、この本を読むべきですよ」と。見事なディストピアではありませんか。何かしらの学問を誰かから教わっているならともかく、自由な読書の在り方とはこのようなものではありません。たとえ、そうして提示される本がどれほど優れていても、そうした読書の(微力であっても)「強制」は、何かの尊厳を損なってしまいます。

私たちは読むべき本を読むのではありません。読みたい本を読むのです。

Honkureの今

と、まあ、いろいろ書いてしまいましたが、それほどたいした結論があるわけではありません。

書店の(機能面での)デザインとは、本との出会い方のデザインであり、そこにデジタルならでは、ウェブならではの何かを加えられれば、新しいものを生み出せるのではないか、という話ではあります。でもって、その出会いにおいて、本を選ぶ自由を阻害するものは、たとえ一時的に利用者から喜ばれようとも、好ましくはないだろうとも思います。なぜなら、そうした価値観の最後に待っているのは、「別に本は読まなくていい。というか読まない方がいい」になるからです。

でまあ、いろいろ考えた上で、Honkureで実現している(あるいは実現を目指している)要素は以下となります。

  • メディアミクス
  • 複数の書棚
  • 文脈の本棚
  • リンクでつながる
  • 複数人で実現

メディアミクス

書店は別に本を売るだけの場所ではないでしょう。雑貨を置いてもいいし、DVDやCDを置いたっていいはずです。書籍は豊かなコンテキストを持っているので、それに接続するメディアを陳列できれば、利用者にホクホクした笑みを浮かべてもらえます。でもって、デジタルならそれが簡単に実現できます。よって、Honkureでは書籍以外にも、アニメや映画、音楽といったメディアも「陳列」しています。

さらに言えば、書店のおっちゃんが書いた小冊子みたいなもの__ようは私が書いたコラム__も並べてあります。それも広い心で「メディアミクス」的に受け取ってもらえればありがたいところです。

複数の書棚

リアルの書店では、一つの棚に差してある本は別の棚に差しにくいのですが、デジタルならそれは簡単です。著者ごと、レーベルごとに動的に棚を作成できます。そのために、本の紹介記事にはペタペタとタグを貼ってあり、それが一つひとつの「本棚」として機能してくれます。

文脈の本棚

これはまだまだ道のりは遠いのですが、わかりやすい書誌情報以外にもタグがついています。≪これから1000年の神話≫や≪知的生産とその技術≫といったタグです。これらは広い意味ではジャンルですが、むしろ私が設定したテーマと言えるでしょう。そうしたテーマごとに本を漁っていくことも可能になっています。

もちろん、一冊の本に複数のテーマタグがついていることもあります。

リンクでつながる

本の紹介の中に、別の本の紹介が入っていて、そこにリンクで飛んだら、また別の本の紹介が、という形になることを目指しています。Wikipedia漁りの模倣です。

また、本の紹介についているタグから、別の本にたどり着けることも意識しています。今はまだ数が少ないですが、1000冊ほど本を紹介できれば、一日読んでも飽きないサイトができることでしょう。

複数人で実現

これはまだ実現できていないのですが、ウェブ的な力と言えば、やはり集合知があります。それこそWikipediaがまさにそれです。

「文脈の本棚」については、やはり私の主観が大いに入りますし、大いに入るからこそ価値があるとも言えます。でも、それだけではやはり頼りないので、複数人が集まって本にタグづけをしてくれれば、たいそう面白いことになるだろう、という予感があります。

さいごに

Honkureは、Amazonのアフィリエイトがたくさん貼られていますが、別に本を売ることが第一目的ではありません。本と出会ってもらうことが第一目的なのです。結局の所、本を読む人・読書を好きになる人が少しでも増えないと、この業界自体がどん詰まりになるのは見えていますので。

でもって、それと同時に本を書く人も増やせるようなサイトでありたいと考えています。その辺は、2st stageあたりの課題ですが。

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