6-エッセイ

料理人にとっての一皿

料理人っていますよね。料理を作って生計を立てている人です。

その人にとって、一皿を作ることは、もちろん生計を立てるための手段です。それがまさに対価をいただく術(すべ)なのですから、何もおかしいことではありません。しかし、彼にとって料理を作ることは単なる手段なのでしょうか。

個人的には、優れた料理人というのは、「美味しい料理を作る」という目的を持っているよう思えます。だからこそ、研究し、研鑽し、探求するのです。その視点に立てば、料理を作ることは、それ自体が一つの目的です。手段ではありません。

でもって、だからこそその一皿一皿に充実感があり、楽しさがあり、誇りがあるのでしょう。単なる手段ではこうはいきません。

もちろん、「美味しい料理を作る」ことの先には、お客さんに満足してもらうとか、コンテストで優勝するとかいったより大きな目的があり、やっぱり「料理を作る」ことは手段だと言えるかもしれません。逆に言えば、それが手段か目的なのかは、視点の置き方によって変わってくる流動的なものでしかなく、実際はそれらの動機が多層的・階層的に入り組んだ構造を持っているのでしょう。

で、それを単純化しすぎて捉えると、けっこう大きい勘違いをしてしまうかもしれません。わかりやすい物語には、何かしらトラップが潜んでいるものです。

ついでに言えば、自己目的化というのも物語の単純化とイコールです。これまた注意が必要です。

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