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【書評】『アイデア大全』(読書猿)

Posted on 2017 年 1 月 24 日 by Rashita
Tag:
  • 書評
  • ,
  • 発想法

「人類よ、これが発想法だ」

思わずそんなハリウッド映画的キャッチコピーを思いついてしまう本である。古今東西の発想法を俯瞰し、位置づけ、整理した上で、それぞれに解説が加えられている。

アイデア大全――創造力とブレイクスルーを生み出す42のツール
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著者は読書猿。というか実際はメルマガ「読書猿」あるいはブログ「読書猿Classic: between / beyond readers」の中の人なのだが、提喩としても読者の感覚としても読書猿で間違いはないだろう。少なくとも私にとってはそうである。

さてそのブログ「読書猿Classic: between / beyond readers」であるが、これはまあ、「東に千夜千冊あれば、西に読書猿あり」くらいの存在である。まあ、どちらも西なのかもしれないが、ここではそれは気にしない。ともかく、本を貪るように読み、知識を探求し、一歩間違えれば自分で概念を構築してしまいがちな人にとっては、ある種の「宝物庫」である。

本書から受ける印象も近い。「大全」の名は伊達ではなく、よくもここまで集めたなと感嘆が漏れる。まるで、アーチャーとして顕現したギルガメッシュのゲート・オブ・バビロンを眺めているようだ。もはや、その光景だけで神々しさすら感じられる。人類の知を扱う技術を辿る旅は、それだけで読み応えのあるコンテンツとなる。

しかし本書は、実用書であることからまったく逸脱していない。それは拍手を送っていいだろう。そうでなければ、この本は必要な人には届かないのだ。本書の基本は、あくまで発想法を「使う」ことにある。だからこそ、各発想法にレシピとサンプル(実際例)がついている。その意味で、本書は非常に使いやすいノウハウ書だとも言える。

同じように発想法を集めた本としては、マイケル・マハルコの『アイデア・バイブル』があるが、本書はそれよりも広く・深く発想法が収集されている点が大きく違う。ビジネスや学術の分野だけでなく、宗教や呪術の分野にまで分け入って行われるその収集(いっそ狩猟と言った方がいいかもしれない)によって、本書には非常に多様な発想法が集まっている上、それぞれの発想法の文脈的解説まで行われている。

アイデア・バイブル
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技法的解説を行う本は珍しくないが、文脈にまで踏み込んだ本は稀有であろう。その解説によって、私たちはそれぞれの発想法を一段深く理解し、他の発想法との関係性を連想できるようになる。このような仕事は、本書内でも紹介されているカイヨワの知的活動に近く、それだけで目を見張るものがある。

本書ではそのように収集された42の発想法が、

01 バグリスト/02 フォーカシング/03 TAEのマイセンテンスシート/04 エジソン・ノート/05 ノンストップ・ライティング /06 ランダム刺激/07 エクスカーション/08 セレンディピティ・カード/09 フィンケの曖昧な部品/10 ケプナー・トリゴーの状況把握/11 空間と時間のグリッド/12 事例-コード・マトリクス/13 P.K.ディックの質問/14 なぜなぜ分析/15 キプリング・メソッド/16 コンセプト・ファン/17 ケプナー・トリゴーの問題分析/18 仮定破壊/19 問題逆転/20 ルビッチならどうする?/21 ディズニーの3つの部屋/22 ヴァーチャル賢人会議/23 オズボーン・チェックリスト/24 関係アルゴリズム/25 デペイズマン/26 さくらんぼ分割法/27 属性列挙法/28 形態分析法/29 モールスのライバル学習/30 弁証法的発想法/31 対立解消図(蒸発する雲)/32 バイオニクス法/33 ゴードンの4つの類比(アナロジー)/34 等価変換法/35 NM法T型/36 源内の呪術的コピーライティング/37 カイヨワの〈対角線の科学〉/38 シソーラス・パラフレーズ/39 タルムードの弁証法/40 赤毛の猟犬/41 ポアンカレのインキュベーション/42 夢見

2つのパート、11の章に分けられている。

第I部 0 から 1 へ
 第1章 自分に尋ねる
 第2章 偶然を読む
 第3章 問題を察知する
 第4章 問題を分析する
 第5章 仮定を疑う
第II部 1から複数へ
 第6章 視点を変える
 第7章 組み合わせる
 第8章 矛盾から考える
 第9章 アナロジーで考える
 第10章 パラフレーズする
 第11章 待ち受ける

注目したいのは、二つのパート分けである。第Ⅰ部は「0から1へ」ということで、何も無いところから何かを見出すための「発想法」が紹介されている。しかし、無から有を生み出すことはできないのだから、そこで行われることは、ざっくり言えば「問題設定」である。問題が見えていないところに問題を設定(見出す、命名、たぐりよせ)したり、すでに存在している問題を再解釈したり、再定義することが「0から1へ」の発想法となる。

この発想法は、0→1であるからして創造的でもあるが、それはつまり破壊的でもある。どういうことかは後で説明するとして、次のパートに入ろう。

第II部の「1から複数へ」では、すでにある1を多様に膨らませていく発想法が紹介されている。一般的に発想法と言ってイメージされるのはこちらの方だろう。『アイデアのつくり方』で有名なヤングの定義(「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」)もこちらに属している。システマティックな方法もあり、逆に遊びに近いものもあるが、概して非常に身近な発想法(というよりも頭の使い方)と言える。

アイデアのつくり方
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たとえば、出版社に勤めている編集者がいて、半年で6冊本を出版しなければいけないとしよう。そのとき、「アイデア出し」として活躍するのは「1から複数へ」の方だ。自分の手持ちのアイデア、書店で売れてる本、雑誌やテレビの人気の企画といったものを「既存の要素」として扱い、それらの新しい組み合わせを考えれば、企画案はいくらでも湧いてくる。

しかしそのとき、「なぜ半年で6冊も本を出版しなければならないのか?」という問いを立てることもできる。込み入った話は避けるが、出版業界の事情がそこにあるとして、「じゃあ、新しい出版のビジネスモデルを構築しよう」と思い立つかもしれない。それは、極めて創造的な行為だが、「日常」に対する破壊行為だとも言える。

以上のように、0から1を作り出すときには、たいてい別の何かを壊すことにつながるので、発想法にもTPOはある。必要とされる発想(の土俵)があり、それに適した発想法があるのだ。その意味において、本書のパート分けには好感が持てるし、実用的でもあろう。

各発想法のより細かい分類については、11の章が担当している。章題で端的に要約されているので、ここでの解説は不要だろう。ちなみに私は『ハイブリッド発想術』において、発想法を以下の4つに分類した。

  • 制約設定法
  • 自由連想法
  • メタ思考法
  • トリガーワード法

今見返しても十分機能する分け方だと思うが、本書に比べると若干実用性に欠けるかな、という印象もある。そのあたりを今後掘り下げてみるのも良さそうだ。その辺のアイデアもモクモクと刺激される本である。

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さいごに

「大全」とある通り、本書は一通り読んだ後、本棚に置いておける本だ。発想の行き詰まりを感じたら、手にとってパラパラと読み返しこれまでと違った発想法を試してみる、といったハンドブック的な使い方ができるだろう。

それはそれとして、本書は発想技法の歩みとして読んでも面白い。これだけ網羅的な(トランス・ジャンル的な)知的生産の技術系の本はめったにない。その意味でも、著者の続刊には期待している。

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