就職活動先を考える前に考えたい事

就職活動先を考える前に考えたい事

「若者はなぜ3年で辞めるのか?」という本はタイトルだけみると、中高年向けの若者批判書に見える。しかし実際はまるで逆である。若者向けに書かれた既存の日本社会システムの批判だ。

終身雇用というのはすでに幻想である事が発覚している。しかし年功序列制度は「成果主義」というものが日本企業に取り入れられながらも未だに根強い力を持っている。それは単なる制度というだけではなくそこに所属する人々の価値観に強く根付いているものだ。
もちろん日本企業の上に立つ官僚制度がその制度を堅守しているわけだから、企業だってその制度に追従してしまう、というのはある面では仕方がないといえる。

すくなくとも、年功序列の弊害について知るということはこれから社会に出て企業で働く人間、あるいは自ら企業を興す人間にとっても必要な事だと思う。

それは単に社会に対する批判的な視線を身につける、といったネガティブなものではない。今までの日本社会にはきちんと整備されたレールというものが存在しており、いかにしてそのレールに乗るか、そして乗った後はいかにして無難に人生を過ごすのか、というのが主な課題であったといえる。レールに乗り切れなかった大抵の平凡な人はいろいろな保護からは遠いところに追いやられてしまった。

しかし今の日本社会においてそのようなレールは存在しない。いや存在はしているかもしれないが、あまりにその数が少なく、大部分の人が乗れるものではなくなった。一見安全そうなレールはまだまだあるが、その安全性は何の裏付けもない。

だからこそ、多くの就職活動者は安定的な「公務員」というものを選択しがちになる。もちろんそれは間違った事である、といいたい訳ではない。しかし仕事というのは人生でかなりの時間かかわっていくたぐいのものだ。自己実現の一つの手段でもある。仕事は仕事、プライベートはプライベートとはっきり割り切って、定時の仕事を淡々とこなしていく人生にまったく苦痛を覚えないのであればそれも選択肢の一つであろう。もちろん公務員の仕事がやりたくて仕方ない、という公僕的メンタルを持ち合わせている人ならばぜひ公務員になってもらいたいところだ。

しかしながら、仕事を人生の一部としてとらえている人にとって、公務員、有名大企業にただ安定だからという理由で就職することは将来後悔を招く一因になりかねない。

本来は「自分が何をしたいのか」「何ができるのか」ということを切実に問い続けないと充足感というのはなかなか得られない。目標と現状のギャップを埋めるために日々努力し、向上していかなければすぐに使い捨てられる「人材」扱いされてしまう。
自分の力を発揮できる仕事場、信頼できる仲間といったものが人間の人生に対する満足感を高めてくれる。しかしそれは待っていれば与えられるものではない。

しかし、公務員や自分の希望とは全く無関係の大企業に就職した後にそのような問いかけをしてしまった場合、あまりよい結果はでないだろう。無理矢理自分の今の常態を肯定して自分の本心の方をゆがめてしまう可能性もある。それはあまり健全な事とはいえない。

今の社会に閉塞感が満ちあふれているとすれば、それは今までの大人たちの行動の結果なのだろう。しかし今後このような閉塞感を打ち払える可能性を持っているのは今の若者である。
今の若者が感じる閉塞感と中高年が感じる先行きの暗さとは絶対的な差があるように思う。中高年はこの先どうなるかわからないから不安と思っているが、若者はどうせ行き先なんてたかが知れている、というどん詰まり感があるように思えてならない。
この先どうなるかわからない、というのは一種の不安材料でもあるが、逆に考えればどうとでも先行きを変えられるということにもなる。そして無謀なほどの妄想を描けるのが若者の特典でもある。
しかし、この社会において、情報をある程度受信している若者はある種あきらめに似た気持ちを描いているのかもしれない。社会から押し込められ、どこにもいきようのない気持ちを描いているのかもしれない。

今のような状況において、単純に年功序列がよい、成果主義がよいという二元論で議論するのではなく、人間が一つの希望をもって働ける社会と今の日本経済との擦り合わせといったことを考えていく必要があるだろう。そして、それは本来は今の中高年が後の世代に向けて必死に構築していくべきもののはずだ。しかし既得権益化してしまっている人々にそれを期待する事はできない。

結局のところ、現状を返るためには自分から行動し始めるしかない。それは社会についても、自分自身の人生についても同じ事なのだ。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)
光文社
発売日:2006-09-15
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