1-情報ツール考察

発想の道具としてのEvernote その3

前回:発想の道具としてのEvernote その2

動かす道具としてのEvernote

動かす道具としてのEvernoteはどうでしょうか。言い換えれば、連想を広げ、発展させていくための道具としてのEvernoteの優位性はどのように評価できるでしょうか。

これは、残念ながらそれほど高い評価とは言えません。やや残念、くらいの位置づけと言っても良いでしょう。

  • 大学ノート
  • バインダーノート(ルーズリーフ)
  • 情報カード
  • デジタルノート
  • アウトライナー

これらの中で、圧倒的に「動かす」に適しているのはアウトライナーです。次点が情報カード。バインダーノートも多少適正はありますが、劇的に優れているわけではありません。綴じノート、固定化されたデジタルノートは及第点以下です。

ここで注意しておきたいのが、アウトライナーとEvernoteの違い、あるいは情報カードとバインダーノートの違いです。これらはそれぞれ作成した項目を後から「移動」させることができます。だったら、機能的にはほとんど変わらないのではないか? 

実は変わります。情報を移動させることには、「整理」(あるいは管理)のための移動と、頭を「動かす」ための移動があるのです。この両者は、基本的に異なる操作なのですが、どちらも移動という共通項目を有しているがゆえに差異を認めにくい傾向があります。

Evernoteとバインダーノートの移動は、「整理」のための移動であり、アウトライナーと情報カードの移動は頭を「動かす」ための移動です。もちろんこれは単純に二項に分離できるわけではありません。バインダーノートの移動でも、頭を「動かす」ことはできますし、情報カードも「整理」のために移動させることはできます。が、比重としては各々の特性の方が大きく出ます。

バインダーノートの移動は、ノートの位置を変えることです。適切な場所を見出すこと、後からしかるべき場所に移動させることに使われます。しかし序列は1軸であり、(バインダー内では)あるページを閲覧しているときには同時に別のページは閲覧できません。これは頭を「動かす」ことにはさほど適していません。

その点情報カードは、縦横無尽に置くことができます。縦に並べたり横に並べたり上に重ねたりできます。複数のカードを同時に閲覧することも余裕です。頭を「動かす」にはこうしたことが必要です。

アウトライナーとEvernoteの違いもこの点にあります。アウトライナーは基本的に複数の項目を一画面に表示させる使い方をしますが、Evernoteは、1ノートを表示させる使い方をします(そうではない使い方もできますが、基本的な使い方として、という話です)。

頭を「動かす」ために情報を動かすことは必要ですが、情報を動かしたからといって頭が「動く」わけではありません。整理のための移動と、頭を「動かす」ための移動を切り分けて考える、というのが一つの重要なポイントです。

資料活用という点

別の側面からも考えてみましょう。

頭を「動かす」ために必要なもの、言い換えれば連想を広げていくために必要なものは刺激です。入力刺激。

Evernoteの場合、標準でランダム表示はできませんが、プレミアムで使える「コンテキスト」という機能は、関連性に基づいて別のノートを表示してくれます。これは頭を「動かす」点では非常に期待の持てる機能であり、他のノートツールが持っていない差別化ともなる機能です。とは言え、抜群に機能するわけでもなく、宝くじで3000円くらいがあたる程度の期待値です。

では、過去の資料などはどうでしょうか。Evernoteは他のツールと比べて本当にいろいろなものを保存することができます。それらの資料は連想に役立つのか。

役立つ面もあるが、そうでない面もある、というところでしょう。Evernoteは数年を超えて資料を蓄積できるので、自分が保存していたことをすら忘れていた資料と再会できます。その点は間違いなく頭を「動かす」ことに貢献します。

問題は、どうしたらそのような再会が実現するのかですが、これがあまりうまい動線がありません。ノートが増えてくるとノートとの再会は検索頼りになりますが、逆に言えば検索しなければ再会できない、ということでもあります。保存していることすら忘れていたノートを、どのようにして意識的に検索できるでしょうか。ここでは、「別のノートを探そうとしていたけど、たまたま見つかった忘れていたノートとの再会」という恋愛ドラマ並の偶然に期待するしかありません。

Evernoteの整理に使われるノートブックにも多少問題があります。たとえば、アイデアを保存するノートブックと、資料のスクラップを保存するノートブックは分けるでしょう。よって、片方を探しているときに、もう片方のノートがたまたま見つかる可能性がグッと減ります。むしろ、そのようなときにこそ、頭が「動く」ことを考えると、ここではもったいない何かが発生していると言わざるを得ません。むしろ、運用自体を≪ワンアウトラインの思想≫に寄せる必要があるのかもしれません。

ノウハウ・トリガー

さらに別の側面から考えてみましょう。

たとえば、どこかで発想法が紹介されていたとします。その手順をクリップしておき、後から使用する。このような場合はEvernoteが抜群に活躍します。あるいは、発想を促すための自問をリスト化して保存しておき、アイデア出しを行う場合に活用する、というのもEvernoteは得意です。

このような側面での、頭を「動かす」ことはEvernoteにもできますし、むしろ得意でしょう。とは言え、これは積極的にアイデア出しをしているときであって、日常的な行動に落とし込まれていない点がネックとなります。効果が発揮される時間が限定的、ということです。

できれば、ツールを使っている時間帯全体に発想(連想)を促す何かが埋め込まれているのが理想と言えるでしょう。

まとめ

以上見てきたように、頭を「動かす」ための要素には複数の側面があり、Evernoteはそのうちのいくつかは得意でも、全体で見ればあともう一押し、というところがあります。特に、移動という点は、整理には長けているものの、頭を「動かす」要素としてはたいへん力弱いものです。この点は、むしろそれらが得意なツールとタッグを組んでうまくやっていくのが(現状では)得策でしょう。

では、

  • ためる
  • 動かす
  • 固定する

の最後の一つはどうでしょうか。

次回:発想の道具としてのEvernote その4

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