タスク管理と集中力

タスク管理を行う目的は、大きく二つある。

一つは、備忘録。タスクを記録し、適切に配置しておくことで、忘却を防いだり、タスクに対する前のめりな対応(ようは段取り)を可能とする。これはわかりやすいだろう。

もう一つは、若干わかりにくい。端的に言えば、集中力の確保である。どれだけ〈やるべきこと〉が溢れかえっていようが、現実の私はどこかの瞬間に何かのタスクに着手しなければいけない。現実の行動を一つ選び取らなければいけない。「あ〜〜、やるべきことがいっぱいあるよ〜〜」と叫んでいても(あるいは嘆いていても)、何一つ進捗は生まれない。行動が必要である。

しかし、まさに〈やるべきこと〉が溢れかえっているというその事実が、行動を妨げることがある。「あれもやっておいた方がいいな」「これもやっておいた方がいい」と気になってしまうことで、結果的にどれも選べない、ということが起こりうる。仮に選んでも、他のことが頭に常駐して、集中力が発揮されない。これはパフォーマンスに影響を与えるので、生産性的にも精神衛生的にもよろしくない。

タスク管理がうまくいっていると、「ともかく今はこれをやる」という風に思いやすくなる。そうしたところで、〈やるべきこと〉マウンテンが崩せるわけではまったくない。集中力を発揮することで多少進捗の速度は上がるかもしれないが、枯れ葉の厚みほどの違いしか生まれないだろう。それでいて、「ともかく今はこれをやる」と思えることは決して無駄ではない。少なくとも、その作業の実行において必要のないことに脳のリソースを注がなくても良くなるからだ。

もう一度言うが、どれだけ〈やるべきこと〉が溢れかえっていようとも、今の私はその中のどれか一つを選び現実的行動を取らなければいけない。でもって、タスク管理とはその行動をサポートするためのものであるはずだ。わざわざマスタータスクリストから、今日やることを選んでリストを作るのも、そのためである。そんなことをしたって、〈やるべきこと〉マウンテンは崩れてはいないし、そもそも見て見ぬ振りしているだけではないか、と思われる向きもあるかもしれないが、まさにその通りである。「見て見ぬ振り」というと語感は悪いが、その時点で気にしても仕方がないことを目隠ししているわけだ。そうすることで、当面は今実行しているタスクに集中力を振り分けることができる。

これは思考力を使う作業ほど顕著な効果が現れる。たとえば、「今週はメルマガが遅れているな〜、今日中にあれとあれとあれを書かないと、明日以降結構しんどくなるぞ。でも、応募の用の小説も書いておきたいし、読書メモも作らないと再来月発売予定の本もしんどくなるな〜」ということを頭の中に置きながら、何かの原稿を書くのはたいへん困難である。実体験から言えば、ほとんど無理と言っていい。少なくとも私の脳の容量は、片方で心配をしながら、もう片方で原稿をバリバリ進められるほどはないらしい。

現実として確かに、「今週はメルマガが遅れているな(略)」という事実はある。それを自覚することで、その日の予定なんかも変わってくるかもしれない。が、その心配は少なくとも原稿を書いているときは必要ないのだ。「今週はメルマガが遅れているな(略)」事実はあるにせよ、「ともかく今はこれをやる」と思い立って、原稿に取り組まなければ、進捗は生まれないし、それはさらに状況を悪化させることにつながる。

一時的にではあれ、目の前の作業に意識をコミットすること。

そのために必要なのが〈inbox〉であり、何かしらの〈リスト〉である。目の前の作業を終えた後の自分が気にしたらいいことは、デイリータスクリストに書き込んでおけばいいし、翌日以降の自分が気にしたらいいことはinboxに入れておく。それらのツールと自分が「接続」されているならば、「ともかく今はこれをやる」と思いやすくなる。そうなったら万々歳である。

つまり、二つの目的は絡み合っている。しっかりとした備忘録がそこにあるからこそ、そこに「先送り」することによって、「ともかく今はこれをやる」と思いやすくなり、それが集中力の発揮を可能にする。

世の中には、集中しようとさえ思えば集中できると考えている人もいるようだが(おそらく実際にも存在するのだろうが)、なかなかそうでない人が多いのではないだろうか。そういう人が、「ともかく今はこれをやる」と思えるようにサポートすることがタスク管理を実行することの意義でもある。

でもって、これはMP戦略とも関わってくるのだが、それは次回に譲ろう。

(つづく)

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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