ノート作りと本

一昔前までは、たくさんノートを作っていた。我が家の本棚には、その名残が大量に陳列されている。綴じノートが多かったが、バインダーノートも負けてはいない。

しかし、最近ではめっきりノートを作らなくなった。現状メインで稼働しているのは、KOKUYOのB5百ページのノート一冊だけだ。

どうしてこうなったのだろうか。

やはり、デジタル化であろう。まずiPhoneの導入によって、メモがほぼそれに吸収された。今でもミニノートは使うが、思いつきの9割以上はiPhoneやMacからメモしている。ミニノートのページが進む速度は激減した。その他の書き留めも、テキストエディタやEvernoteで行い、やっぱりノートを使う量は減っている。

でも、それだけではない。

ふと、思うことがある。ノートを盛んに作っていた時期ならば、まず間違いなく「シャドウバースノート」というのを作って、そこでカードの分析やら、デッキ構築についての考察を書き込んでいただろうと。でも、今の私の頭の中に浮かんでくるのは「そういうブログを作ろうかな?」である。

つまり、アナログノートからデジタルノートへ移行しただけでなく、ノートからブログにも移行が発生している。ノート活性期であれば、「テーマノート」として作っていたものを、今なら「テーマブログ」として展開したくなっているのだ。少なくとも、私の頭の中の回路はそのように調整されていることを強く感じる。

結果、ノートをほとんど作らなくなった。

これは、単なる変化なのだろうか。それとも、成長なのだろうか。あるいは、退化ということもありうる。

ノートからデジタルノート(あるいはブログ)への移行には、明確な二つの差異がある。

私のデジタルデータの総本山はEvernoteである。そこにすべてが詰まっている。テーマノートを、Evernoteで再現しようと思えば、テーマノートブックになるだろう。しかし、Evernoteでノートブックを増やしすぎると使い勝手が落ちる。ここで言う、「増やしすぎる」とは100以上を示していることに注意されたい。私はこれまでそれくらいのノートを作ってきたのだから、Evernoteでも同じようになるだろう。が、そんなことになると使いにくいので、どうしてもノートの形にしてしまう。つまり、一枚のノートを、一冊のノートに見立てて情報をそこに書き込んでいくわけだ。

一見、情報を一カ所に集めているから同じではないかと思われるかもしれないが、ノートブックとノートでは、Evernoteにおける存在感がまったく違う。1枚のノートはEvernoteではたいして目立たない。言い換えれば、目につきにくい。

アナログノートならば、一冊のノートを作り、それを作業机にでも立てかけておけば、それが目に入るたびに、「そうだ、自分はこれについて考えていたのだった」ということを想起する。Evernoteでのノートは、そうした喚起力がやや低い。同じことを期待するならば、ノートブックでなければならない。

が、ノートブックは数が増えすぎると使いにくい。よって情報はノートとしてまとめられ、埋没していく。行き止まりだ。

ブログの場合はどうだろうか。

まず第一に、ノートほど簡単に作れない。もちろん、操作的には簡単に作れるが、心理的な敷居は高いだろう。さらに言えば、内容を書き込む敷居も高くなる。なにせ、たとえ誰からも読まれないにせよ、公共空間に提出する文章である。誤字脱字は無視するにしても、支離滅裂な内容は書きにくい。少なくとも、自分の綴じノートに書いているのと同じようには書けないだろう。

これも行き止まりである。

ノート作り、ということ

一冊のノートを作り、そこにテーマを設定すると、いやおうなしにコンテキストが惹起される。それはEvernoteに新しいノートブックを作ったときと極めて似た感覚であるはずである。

が、現状の私はさほど新しいノートブックを作るようなこともしてないし、新しいブログを頻繁に立ち上げてもいない。つまり、〈ノート作り〉をしてない。ノートに何かを書くようなことはしている。しかし、ノートを作ってはいないのだ。

これが意味することは何だろうか。

この世界には「本」というコンテンツ媒体がある。本は、コンテキストによって串刺されたコンテンツ群である。それぞれの本は、それぞれのテーマを持つ。固有のテーマがあるからこそ、一冊の本の存在が要請される。

では、ノートはどうなのだろうか。私たちが何かしらのテーマを抱えるとき、そのコンテキストを惹起し、保持するための媒体が必要なのではないだろうか。一つのテーマを伝えるために一冊の本が必要となる、というのを同じようにである。つまり、他者のための「本」と、自分のための「ノート」は、方向性は違えど、コンテキスト保持という点において共通しているのではないだろうか。

こうして執筆術とノート術の話が接続されることになる。新しい知的生産の荒野である。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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