タスクとアイデアは(似ているようで)違う

ややこしい話をします。

タスクとアイデアは、似ているようでいて違う、という話です。

まず、「思いついたこと」があります。もう少し言うと、自分の脳によって知覚された情報、あるいは浮かんできた心象ですが、その辺を込み入るのはやめましょう。ともかく、「思いついたこと」があるとします。それはもちろん、情報です。

で、その情報の中で、行動に関するものが〈タスク〉となり、思考に関するものが「アイデア」となります。「今日のブログを更新する!」は〈タスク〉で、「それでも地球は動いている!」は〈アイデア〉です。

ただし、二つの点に注意してください。まず、この〈タスク〉は、別に何と呼んでも構いません。〈アクション〉でも〈行動〉でもOKです。アイデアをアイディアと呼んでも、赤をレッドと呼んでも、たいして困らないのと同じで、そこに「行動に関する情報」を示すカテゴリーの存在が示されればOKです。ただし、これを〈ミッション〉と読んでしまうと、タスク管理の別の領域を指す言葉と重なってしまうので、実用的な側面から言ってそうした呼称は避けた方が良いでしょう。名前空間の管理は大切ですね。

で、二つ目の注意点ですが、〈タスク〉にしろ〈アイデア〉にしろ、それらは「思いついたこと」、つまり自分の脳によって知覚された情報という点では共通しています。これは非常に大切なことです。「思いついた」(つまり認識が意識された)段階では、それらはすべてフォーマットの点では等価なのです。それを実用的な側面から、便宜的にカテゴライズすると、いくつかの領域に属することになるわけです。

なぜこれが大切なのかと言えば、どのようなカテゴリーでも基本的には恣意的なものにしかならないからです。もちろん、明らかにどう考えても100人見れば100人ともが「これはタスクだ」と言うものも(あるいは逆にアイデアだと言うものも)あるでしょうが、その中間にはどっちつかずなものがたくさんあります。でもって、タスク管理がややこしくなるのは、そのような領域の情報の扱いにおいてです。

あなたがプログラムのコンパイラだとしましょう。

s = 1 + “1”

とか言われたら、sの型に悩んじゃいますよね。それと同じです。

もし「思いついたこと」には、先駆的にカテゴリーが内在されており、イデアを見つけるように、そのカテゴリーについて考えれば、適切な振り分け先が見つかると考えているのなら、とりあえずその考え方は放棄しておきましょう。明らかなタスクや明らかなアイデアはもちろんありますが、その中間地点にあるものはたくさんあり、それは恣意的な決定を待っています。むしろ、その扱い方がタスク管理の要点の一つだと言えるかもしれません。

変換可能性

ややこしい話を続けましょう。

とりあえず、便宜的に「思いついたこと」をタスクとアイデアに分類できたとしましょう。しかし、それで終わるわけではありません。

「思考に関する情報」は、「行動に関する情報」に変換できます。「それでも地球は動いている!」という発見(まあ、発言ですが)は、そのための論文を書くというタスクにも、教会に対して抗議するというタスクにも変換できます。もう少し正確に言うと、「それでも地球は動いている!」というアイデアを保存しつつ、それをDuplicateしたものを変換する感じです。

これはもともと両者が「思いついたこと」として同一であり、それを便宜的にカテゴライズしただけであることから容易に理解できるでしょう。時期が変われば、その便宜的な割り振りが変わることはいつだってありえます。

で、それとは別にタスクの実行に他の「思いついたこと」が必要になることがあります。私が、『叛逆の仕事術』という本を書いているとして、たまたま散歩中に、「第二章に、”できないことはするな”を書くことができるな」と思いついたとしたら、それはアイデアではありますが、『叛逆の仕事術』の執筆というタスク(あるいはプロジェクト)から参照される形で、タスク化されます。

どちらにせよ、これらの分類は静的ではありません。ダイナミックに変化していきます。それが「思いついたこと」の扱いが難しい理由でもあります。

行動を表現する語句ではなく

では、「新しいWebサイトを作ろう!」と思いついたとしたら、これはタスクになるのでしょうか、それともアイデアになるのでしょうか。もちろん、どちらにもなりえます。

きっと、そういう閃きがあったときは、そのサイトを作る意義だとか、楽しんでくれそうな人のイメージとか、実際のサイトのデザイン案だとか、いろいろなものが一緒に思う浮かぶでしょう。それはアイデアとして保存しておきたいところです。

でもって、一念発起して実際にその作業に取りかかるつもりなら、それをタスクとしても取り扱う必要があります。アイデアノートに入れているだけでは何も前に進まないのが、人の常です。もちろん、当面取りかかるつもりながないのなら、しばらくはアイデアノートに眠らせておいてもよいでしょう。

タスクかどうかの判断材料は、思いつきの中に、行動を表現する語句が含まれているかどうかではありません。もし、行動を表現する語句が含まれている情報すべてをタスクにしていたら、タスクリストはあっという間にえらいことになるでしょう。その思いつきが、「自分がとる行動」にカテゴライズできるかどうかが、タスクとアイデアを分ける境界線です。

もし、「新しいWebサイトを作ること」が自らの使命であり、何が何でも成し遂げなければならないと考えているならば、それはタスクですし、まあええか、と思っているならアイデアとして扱えば十分です。

ただし、ややこしいのはそこまではっきりしていないものが世の中には一杯あることと、さらに言えば、時間によってその感覚が揺れることです。だから、タスク管理の内側は動的でなければいけません。一度リストを作れば、あとはその通りに、とはいかないのです。

「理知的かつ統一的な自我」という概念を放棄すると、タスク管理はひどく手の込んだものになってくるのがおわかりでしょうか。タスク管理のややこしさは、人間のややこしさでもあるわけです。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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