0-知的生産の技術

『アイデア大全』オススメ技法 〜第Ⅱ部編〜

前回:『アイデア大全』オススメ技法 〜第Ⅰ部編〜

今回は、第Ⅱ部編をお送りします。

アイデア大全
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いきなり、まいりましょう。

ヴァーチャル賢人会議

おそらく、「考える」という行為のもっともデフォルトなフォーマットがこの技法でしょう。他者の思考を自らに取り込み、使役する。『読書について 他二篇』でショウペンハウエルが皮肉気味に「本を読むことは、他人に考えてもらうこと」と述べていますが、まさしく自分の頭の中に他者の思考の躍動を流入させることによってのみ、はじめてそれをインストールできるようになります。そのような過程を積み重ねることなしに、思考力を鍛えることなどできません。

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私も、たとえば講演のスライドを作るときなどは、流れに乗ってくると頭の中で会話が始まります。「〜〜は、○○なのです」「でも、それって××じゃないんですか」「そう思われますよね」と。ときにその話し相手は、ピュアな入門者であり、皮肉な笑みを浮かべる哲学者であり、意地の悪い批判者であったりしますが、その対話相手の存在によって、話の流れが規定されることは間違いなくあります。

複数人による会議なのか、それとも面と向かった対話なのかはいろいろあるでしょうが、頭の中でのやりとりは、おそらく必須のものでしょう。

オズボーン・チェックリスト

超有名ですね。拙著でも紹介したかと思います。

一般的には、チェックリストを使って一つひとつ検討していくわけですが、何度もやっていくと、自然とこの問いが浮かぶようになります。要するに、上と同じですね。

質問は、

1.他に使い道は?
2.応用できないか?
3.修正したら
4.拡大したら
5.縮小したら
6.代用したら
7.アレンジし直したら
8.逆にしたら
9.組み合わせたら

なのですが、実は次の技法と融合します。

属性列挙法

改善したい対象を選び、その属性を列挙した上で、その一部を変更してみる、という技法で、たとえば『数学ガール』があるなら『歴史ガール』とか『数学ジェントルマン』とか、そういうノリです。『アイデア大全』ならば、『アイデア10選』とか『知的生産の技術大全』とか、そういうノリです。

で、おわかりの通り、これは書籍のタイトルや企画案を考えるときに、バリバリ活躍します。ええ、もう、そりゃ大活躍です。だいたい、私の初期のブレストは、この発想で埋め尽くされます。大半は、ゴミ箱直行のアイデアなのですが、中にはピンとくるものもあったりして、なかなか侮れません。

で、よく考えてみると、これは属性に対するオズボーン・チェックリストなわけです。たとえば『アイデア大全』→『アイデア10選』は、オズボーン・チェックリストの「縮小したら」が適用されています。逆に「拡大したら」であれば、『思考技術大百科事典』とかになるでしょうか(書ける著者はいないでしょうが)。

つまり、対象全体を扱うときにはオズボーン・チェックリストになり、その対象に含まれる属性を扱うときには属性列挙法と呼べるわけですが、認識の上ではそれを統一してしまっても問題ないでしょう。というわけ、私は『アイデア大全』を読むまで、この二つが別の技法だとはぜんぜん考えていませんでした。なかなか勉強になります。

弁証法的発想法

これもよく使う思考アプローチです。たとえば、時流にのった(つまりヒットしている)Aがあり、自分が作りたいと思っているAとまったく逆のBがあるとしましょう。

そのとき、AがよいかBがよいかを考えるのではなく、Aの長所を取り入れたBを作れないか、あるいはBの矜恃を残したAを作れないか、といったことを考えると、極端思考に陥らずに、かつ新しい方向性を見つけられたりします。たとえば、『アイデア大全』も、実用書であると同時に人文書であると高らかに宣言されていますが、それもこの思考アプローチによって生まれたのではないか、と考えられます。

NM法T型

アナロジー(あるいはメタファー)を使った思考も、「考える」の基本的な要素ではあります。私も対象を認識するときに、「これと同じものは何か?」を常に考え続けていますし、説明するときも、「それって○○みたいなものですよね」とよく言います。世界にパターンを見るのが人間存在なのです。

NM法T型は、シンプルにそのアナロジー思考を進める手順を提供してくれるので便利ですが、これも慣れてくると思考領域に常駐し始めます。

カイヨワの〈対角線の科学〉

さて、最後の一つです。

たとえば、「情報カードの使い方からEvernoteの使い方を考える」「ドラッカーのマネジメントからブログの運用を考える」「種子の育成からアイデアの育成を考える」「場の力学から執筆について考える」などなど、私の著作には対角線を引いているものが多く含まれています。

とは言え、まだまだ浅学ゆえに、それほど長い対角線は引けていないのですが、それでも私の内側にはそうした対角線への憧れがあります。梅棹忠夫氏の胚葉の分化と産業史、ソシュールやレヴィ=ストロースの「構造」、そしてカイヨワの神話とカマキリ。メッセージの受け手に「納得」以上のものを与えてしまう。新しい知の領域へと誘ってしまう。それは説明のための橋でありながら、新大陸の存在をほのめかす風の匂いでもあります。

そんなものを生み出すことができたらいいな〜と考えながら仕事をしていますが、まだまだ道のりは遠そうです。

さいごに

というわけで、『アイデア大全』のオススメ技法を紹介してみました。

ともかく技法というのは、「実際に行い」「熟達するまで繰り返す」ことが重要です。そのようにして、身のうちに取り込んでこそ、必要なときに技法は活きます。最初のうちはぎくしゃくするでしょうが(自転車の練習を思い出してみてください)、繰り返すうちに無意識にそれらが発動するようになってきます。

おそらく、本当に面白くなるのは、そこからでしょう。それまではまあ、ぼちぼちやっていくしかありません。

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