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どっか~ん!
なぜなに”知的生産”~!
「お〜いみんな〜、集まれ〜。なぜなに”知的生産”の時間だよ〜!」
「わ〜い! ねえねえ、お姉さん、今日はどんなお話をしてくれるの?」
「今日はね、グループ編成の第二ステップだよ!」
「やった〜〜!」
「じゃあ、さっそく始めましょう」
(シーン切り替え)
表札作成
前回は、拡げた紙片の中から、内容的に近しいものたちを場所的にも近づけておく作業を紹介しました。グループ編成のファーストステップです。
その作業を続けていくと、小さなグループが複数生まれ、またそれぞれのグループにも数枚程度の紙片が集まってきます。そこで一通り落ち着いたら、次のステップに入りましょう。
まず、適当なグループを一つ選び、そこに含まれている紙片を眺めます。なぜその紙片がそこに集められたのかと言えば、実行者がそれぞれの紙片に何かしらの近さを、あるいは親近感を覚えたからです。しかし、集めている段階ではその感覚は漠然としており、言葉にはなっていません。ここではそれを言葉として表します。
なぜ、自分はこれらの紙片を集めたのか。それぞれの紙片をつなぐ(リンクする)要素とは何なのか。
それについて考えるわけですが、むしろ用いる自問は以下のような形が良いでしょう。
「これらの紙片の内容を、一行見出しに圧縮して表現するとすれば、どういうことになるか」
たとえば、私が「コンビニ店長虎の巻」に関するブレストを行い、そこから以下のような小グループを作ったとします。
・スタッフの時給の上げ方
・コミュニケーションノートの運用法
・半年面談の効用
・フレンドリーに接すること
これらを眺めて、むむむっと考えます。上記の項目群の一行見出しを作るとすれば、どうなるか。
「意欲的に働いてもらう環境作り」──こんな風になるかもしれません。もちろん他にもあるでしょう。ともかく、見出しを考えられたら、それを新しい紙片に書き、もともとの小グループを束にしてその上に見出しの紙片を置きます。グループの表札というわけです。
これで「まとまり」が一つ完成しました。あとは同じことを他のグループにも行い、次々と表札を作っていくことになります。
注意点としては、表札を作ってみると、仲間はずれが出てくる場合があります。たとえば、「意欲的に働いてもらう環境作り」ではなく「スタッフとパスをつなぐ」という見出しを考えた場合、「スタッフの時給の上げ方」はこの場所にそぐわないかもしれません。その場合は、グループから外してしまい、別のグループに居場所を探すことになります。
最初に小グループを作ったときは、あくまで漠然とした感覚だったので、そういう「まぎれ」が起こることも十分ありえます。この辺の臨機応変さはキープしておきたいところです。
認知負荷の減少
上記の作業を続けていくと、小グループが一枚の表札に代表されるようになるので、目に入る紙片の数がぐんぐんと減ってきます。このことに関して、川喜田氏は面白いことを書いています。
そうすると表札つきの小チームがあちこちにたくさんでき、おびたただしい紙片の数が減ってくるから、はじめのノイローゼ気味からはよほど救われてくるであろう。
これは少し前の記述を受けたもので、そこでは以下のように書かれています。
三時間の討論では紙片は二、三百枚にもなることもあるから、せっかちな人はまるでノイローゼになりそうな気持ちにもなろう。
ブレスト直後の紙片を拡げた段階では、相当数の情報が無秩序に展開されており、私たちの脳(認知)はそれをうまく処理することができません。しかし、小さなグループを少しずつ作っていくことで、情報が圧縮され、情報量は減ります。脳の認知が耐えられる量へと近づいていくのです。これは、記憶の「チャンク」作りに呼応しているといってよいでしょう。
最終的に全体がうまくグループ化でき、完璧に脳の認知に収まるとき、私たちはそれを「分かった」と感じます。それが目指すべき地点でもあります。
とは言え、ここでのポイントは、一度は「分からない」(ややもすればノイローゼになりそうな)状態からスタートし、それを「分かる」状態へと持っていく点にあります。もし、「分かっている」状態からスタートしてしまえば、新しいものは何も生まれないでしょう。単に事象を分解したものに留まるはずです。
しかし、発表者自身が「分かっていない」状態に身を置き、それをグループ化していく中で「分かる」ようになっていくのであれば、それは新しい発見がそこにあったことを意味します。発想とは、そういうものでしょう。本の著者が、「本を書くことが一番の勉強」と言うのも、こうした要因が関係しています。
今回も少し脱線が過ぎてしまいました。次回は、グループ編成の最終ステップに移ります。
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