リスト作りと線を引くこと

よく似た、でも少し違う二つタスクリストがあるとする。

さて、どちらの方がタスクが多く感じられるだろうか。

私たちは、この差異に注目した方がいい。

優雅な休日と切羽詰まった締切

休日など、今日は一日たっぷり時間があるぞ、というときほど、作業はあまり進まなかったりする。集中できない・やる気が起きない、といった現象が生じる。

逆に、13:00には新幹線に乗らなければいけないから、午前中までに原稿を上げないと、というときは、ちょっとびっくりするくらい集中できたりする。

私たちは、この差異に注目した方がいい。

脳内の自然シミュレーション

打ち上げられたフライを、外野手は走って追いかける。弾道予測アルゴリズムを用いることなく、なんとなくの感覚で落下地点を探り当てる。

あるいは、自動車を運転しているときに、少し早めの速度でカーブに突入すると、「あっ、これは曲がりきれないな」と判断してブレーキを踏むことがある。どのようなコンピュータも物理演算は行っていない。しかし、私の脳は自然と何かを計算し、予測している。

面接の前には緊張するし、彼女とのデートの前にはワクワクする。歯医者に行くのは気が重いし、給料日にはテンションが上がる。心情はコンテキストに依る。でも、それだけではない。

人の脳は予測している。これから来るシチュエーションをシミュレートし、そこで必要なエネルギーを計算する。時間を見積もり、余裕に応じて集中力を配分を決定する。

予測に導かれる分配

パーキンソンの第二法則は、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」と語る。脳の予測でも同じようなことが起こる。持ち時間に合わせて、人の脳はエネルギーの出力を決定する。1時間の持ち時間があれば、それに合わせて作業に投下する集中力の量を調整する。余裕があれば散漫に、余裕がなければ集中する。

時間がある休日に、やる気が起きないのも当然である。そこでは脳は、かなりゆったりとした見積もりを上げている。だから、集中しようもない。なにせ時間はまだたっぷりあるのだから。

脳が抱える問題

脳は予測しているが、脳はバイアスを持つ。また、脳は時間が見えない。この二つが、時間管理・タスク管理を難しくする。

第一に、脳は自分の能力を過大評価する。1時間という単位時間でたくさんのことができるような気がする。それはつまり、1時間という持ち時間に10や20のタスクが割り当てられても余裕に感じる、ということだ。だから、集中力は投下されにくい。

第二に、脳は時間が見えていない。短い時間なら「感じる」ことはできるが、5時間と6時間を体感だけで区別するのはおそらく難しいだろう。しかし、予測では6時間を扱えてしまう。私たちは6時間を脳内で計算できるような気がするのだ。

だから、休みの日に「今日はあれとこれをやろう。それとあれも」と計画を立てると、それが脳内だけのものならば、非常に余裕があるように感じるし、1時間ほど作業を進めても、「まだまだ時間はある」と感じてしまう。だから、集中力はなかなか出てこない。残り1時間ぐらいになると、いよいよダメなことが明らかになり、その時間くらいは集中できるかもしれないが、当初描いていたバラ色の一日とは程遠い結果である。

でもそれは、言ってみれば、自然な現象なのだ。

そして、だからこそ記録やタスクリストというものが意味を持ってくる。

さいごに

必要なのは、脳の予測(あるいはシミュレーション)への関与である。これをできるだけ精緻にして、認知的エネルギー(集中力)の投下を助けたい。そのためには、限定することである。わかりやすく言えば、時間を区切ることだ。

今日一日であれとこれとそれをやる、というのは誤差が大きくなるが、午前中までの2時間でこれをやる、だとさほどでもなくなる(完全にゼロになるわけではない)。

本当にバカらしいように感じるかもしれないが、今日中にあれとこれとそれをやると認知するのと、午前中にあれをし午後の3時までにこれをし午後6時までにそれをする、と認知するのは同じではない。線が、つまり区切りが入っていると、認知は変わる。それは予測が変わるからだ。

まったく同じ15分という時間であっても、それが「休みの日のたっぷりある時間のうちの15分」と、「もう出かけなければいけない直前の15分」では、使い方(使え方)は変わってしまう。

私たちは、この差異に注目した方がいい。

「タスクリスト」と「やりたいことリスト」を分けるのも、「デイリータスクリスト」を作るのも、一日にセクションを設定するのも、すべて「線を引くこと」だ。それが認知を変え、予測を変え、行動の前提となるもろもろを変えていく。

別に線を引いたところで、現実は何も変わっていない。国境線を引いたところで、大陸がそれに応じて分割されるのではないのと同じことだ。しかし、それで政治が変わり、文化が変わる。線にはそういう力がある。

線を引くこと。あるいは、状況に応じて線を引き直すこと。

それは、私たちの道具であり、私たちが使える道具でもある。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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