WorkFlowyとDynalist、あるいはワンアウトラインの宿命

WorkFlowyとDynalistは共に優れたクラウド型アウトライナーである。

シンプルなWorkFlowy
機能性を追求したDynalist

Dynalistは、WorkFlowyのむずむずするところに、手が届いている。

WorkFlowyは、ワンアウトラインである。ここにすべてが集まる。よって、ユーザーはファイルといったものを考えなくてもよい。実に素晴らしい。

Dynalistも、形式的にはファイルを持つが、実はWorkFlowyと同じだ。ユーザーはここにアクセスさえすればいい。情報はすべてここにある。2ペインは、(基本的には)見た目だけの話である。

ヘビーなWorkFlowyユーザーは、創意工夫によって(たとえばブラウザの「お気に入り」などを駆使して)インデックスを作っていたりするが、それをそもそもの機能として内蔵させたとも言えるだろう。

ワンアウトラインの方式でやっていくと、どうしてもそのラインは長くなっていく。なにせ「すべての情報」が集まるからだ。すると、特定の項目にアクセスするために多少時間がかかるようになる。インデックスの存在はそれを助けてくれる。

それだけではない。

ラインが長くなると、ある項目を別の項目に移動(ドラッグ)させるのも苦労する。Dynalistは「Move to」という機能で、見事にそれを解決している。

であれば、

WorkFlowy < Dynalist

という不等式が成り立つのだろうか。DynalistはWorkFlowyに対する上位互換と言い切れるのだろうか。

仮初めであるにせよ、Dynalistにはファイルがある。フォルダも作れる。それはつまり、区切りがある、ということだ。

ユーザーの体験としては、すべてはDynalistに収まっている。しかし、それぞれの項目はどこかのファイルに位置する。位置せざるをえない。

どのようにその位置を定めるのか。適切なファイルに割り振ることによって、だ。

では、適切なファイルが、その時点では見つからないようなものはどうする。

さて、どうする。

WorkFlowyならとりあえず項目を作って、行き先がないなら、そこに置いておけばいい。基本的には、特定の項目にズームして使うことが多いのだから、そういう「ヨソモノ」がラインに混ざっていても、たいして気にはならない。

では、Dynalistはどうだろうか。おそらくはinboxに指定してあるフォルダに仮置きされることになるだろう。後で処理しよう、と。

最初のうちはいい。たぶん、たいして気にならない。

しかし、時間が経つにつれ、そのinboxにはヨソモノが溜まっていく。溜まっていってしまう。

さて、どうする。

きっと、「その他」といったファイルを設けて、そこに移動させることになるだろう。

そうして、もう二度と、そのファイルが開かれることはなくなる。なにせそれは「その他」なのである。時間と共に、それは雑草化していく。

やがてそれは、Dynalist全体にまで広がるかもしれない。

少し、勇み足気味に言おう。限定的な、あるいは使う意図がはっきりしている情報を扱うのならば、DynalistはWorkFlowyよりも優れているかもしれない。

しかし、情報の位置づけにカテゴリを要するDynalistは、はざまの情報を扱いにくい。どこにも位置づけられないものを、置いておくための場所がないのだ。

もしその場所を作れば、ほとんど必然的にその場所はゴミ箱となり、結局保存していないのと変わらない状況となるだろう。

なぜなら、Dynalistはすべての項目を一覧できないからだ。目にしたいものしか目に入らない。そういう世界である。

では、WorkFlowyはその問題は解決するのか。

もちろん、しない。

WorkFlowyだって、思いつくことをどんどん放り込んでいくだけでは、ラインは膨大となり、いずれは収集がつかなくなる。

これはワンアウトラインの思想でツールを運用していく限り、必ず発生する現象である。つまりこれは、ツールそのものの問題ではない。ある種の運用方法が抱える宿命なのだ。

しかしWorkFlowyでは、全項目を展開することで、作成した項目すべてに「目に触れる」可能性が生まれてくる。必ず見るとは限らないが、少なくともそれは0ではない。

さらに、である。

WorkFlowyもDynalistも、原則として見出しと項目を区別していないが、Dynalistはファイルと項目は区別されている。WorkFlowyでは、shift + tabをずんずん押していけば、どんな項目でもいつかは最上位項目になれる。もちろん、そこから下ることもできる。Dynalistは、そうした形にはなっていない。ファイルの下に属した項目は、ファイルにはならないし、ファイルは項目にはならない。

先ほども書いたが、意図が明確な情報を扱う上では、これはたいした問題にはならない。項目がファイルになることも、ファイルが項目になることもほとんどないからだ。

しかし、はざまの情報たちはそうではない。彼ら断片たちは、いくらでも自由に組み変わる可能性を持つ。よくわからない項目があつまり、そのうちの一つが上位項目となることもある。そこから新しいプロジェクトが立ち上がることもある。WorkFlowyの形式は、それを自由に受け止める。この点は、些細に思えるが、案外重要である。

とは言え、そうしたことはアウトラインを「操作」しない限りは起こらない。ただ入れておくだけで、自然発酵するようなものではない。

だからこそ、糠床のように自分の手でかき回す必要があるわけだ。

入れた項目をときどきは眺めて、手を入れる。結合させ、編集し、構造を作る。ちょっとだけエントロピーを減らす。そうすれば、見通しもつきやすくなる。

見通しがつきやすいと、見返しやすくもなり、手も入れやすくなる。そういう循環が続いていく。

逆に、放置し始めると、見返すのも嫌になり、ラインがどんどん長くなって、さらに溝は深まる。悪循環が続いていく。

エントロピーの増大はツールによって発生するわけではない。情報の(あるいは私たちの脳の)一つの傾向である。とすれば、あとはその減少をいかにやりやすくするか、あるいはツールがそれを促してくれるかを考慮すべきだろう。

もう一度言うが、WorkFlowyとDynalistは共に優れたクラウド型アウトライナーである。そして、(ある期間だけでも)位置づけが固定的な情報の扱いでは、Dynalistの方がやりやすいかもしれない。

が、情報には「はざまのものたち」もいる。その点は、案外WorkFlowyの方が扱いやすい。

むろん、扱いやすいからといって、扱っていなければ、いずれ死蔵するのはどちらのツールでも同じである。多少であっても、項目を動かすこと。それが一番のポイントなのだ。ツールがその行動を助けてくれるなら、むろんそれにこしたことはないわけだが。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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