情報管理ツール考察:既存のツールの運用適性

前回:情報管理ツール考察:情報のカテゴライズ

前回の話を受けて、以下のツールの運用適性について考えてみよう。

  • Evernote
  • WorkFlowy
  • Ulysses
  • Scrivener
  • Scrapbox

Evernote

Evernoteは総合ライブラリーとして機能する。主に役立つのは、working及びarchiveだろう。特に検索能力が優れているので、archiveの保管場所としては最適である。言い換えれば、静的な情報を扱うにはEvernoteは極上のツールである。

では、activeなもの、特にその中にあるideaはどうだろうか。これはなかなか厳しい。作成したノートは後からいつでも編集できるのだが、ノート同士の操作に関してはマージしか無く、そのマージもあまり優れているとは言い難い。全般的に、複数の断片から何かしらの全体像を立ち上げていく作業は不得手である。ノートの順番を任意に配置できない点も痛い。

WorkFlowy

対するWorkFlowyは、active及びworkingな情報の扱いにおいて活躍する。項目が自由移動できる点、複数の項目を同時に表示できる点などをとってみても、動的な情報の扱いには最適である。

ただし、項目同士を連結していくような動作は特にはないので、これだけで最終的なアウトプットに仕上げるのは難しいかもしれない。

また、使用済みの項目を貯め込んでいくような使い方をすると表示が重くなり、WorkFlowyの軽快さが失われてしまうので、archiveな情報を保管する適性はあまりないだろう。

Ulysses

Ulyssesは、EvernoteとWorkFlowyの間ぐらいの存在だと言える。扱える情報単位はノートレベルなので、文章の保管に向いている上、それらの順番の任意配置が可能だ。さらにマージもスプリットも自由自在である。非常に断片的に工程を進めていける。

また、エクスポート機能の存在も考えると、最終アウトプットに限りなく近いworkingな情報を扱うのに向いていると言える。特にworkingな情報は、カテゴリ下に置かれることが多く、Ulyssesのグループ機能は最適である。

逆に、一行だけの書き留め(idea)を大量に集めるような使い方は、あまり適性がないだろう。それらのideaたちは基本的にグループに属することなく、むしろ越境的な存在であるので、UlyssesのUIではすこし動きが鈍くなる。

一応ワンライブラリ方式であるので、archiveな情報を保管していくことも可能だが、そうしたところでUlyssesらしさが発揮されるようなことはないだろう。

Scrivener

Scrivenerは、如実にworkingな情報向きである。そもそもとしてファイル=プロジェクトであるから、動いている、言い換えれば統合に向かって歩みが始まっている情報のためのツールである。エクスポートの精緻なコントロールも、最終アウトプットが強く意識されている。

逆に、思いついたことをポンポンいれていくような、activeなものを扱うのはまったく適性がない。断片の操作自体は優れているが(マージもスプリットもできる。自由配置も可能)、ファイル=プロジェクト構造のScrivenerでは越境的なものは扱いづらい。

archiveで言えば、使用済みのScrivenerファイルそのものがarchiveではあるが、「自分が作成した原稿全てから〜〜というキーワードで検索する」というような使い方ができないので、Scrivener単体では、若干archive性は弱いと言えるだろう。

Scrapbox

Scrapboxは、ほぼwikiなので扱いが難しい。wikiは手段にも目的にもなりうるからだ。

たとえばwikipediaのページを作成・編集している人は、「最終アウトプット」を作っていると言える。もちろん、そのページを他の人が参照して何かのアウトプットに役立てることはあるだろうが、ページ作成者にとってはそのwikiページそのものがアウトプットになる。

逆に、自分のローカル環境にwikiを立ち上げて、そこに自分の用のメモや備忘録を書き付けていくような人であれば、そのwikiは、何かしらのアウトプットのための補助装置(≒手段)であろう。wikiそのものは「最終アウトプット」とは言い難い。

が、まずは機能だけに注目しよう。ページ単位リンクベースで管理が行われるScrapboxは、一行だけのメモを1000も2000も集めるような使い方にはあまり適性がない。ノート同士のマージもスプリットもないので、項目同士を直接反応させて、それらを少しずつ大きくしていく、という使い方はしにくい。その意味で、単にactiveなものは扱いにくい(特に越境的なものはなおさらである)。
※ひとつのページに雑多なメモを集約する使い方はできるが、アウトライナーのように下位項目を閉じられないので、やっぱり不便である。

逆に、方向性がはっきりしているものを一定の括りの中で集めていく使い方は最適である。リンクによる関連項目の自動表示は、これまでのツールにはなかった機能だと言える。

しかし、UlyssesやScrivenerのように、ここからダイレクトに最終アウトプットを生み出すのが向いているのかというと、微妙なところだ。なぜか。

Scrapboxは、情報の塊ごとにページという輪郭線を持つ。最終アウトプットはそれらの塊をさらに統合して生成されるのだが、その段になって、塊が崩れ、新しく生まれることがよくある。こっちをあっち、あっちをこっち、ということが頻繁に発生するのだ。UlyssesやScrivenerはそうした操作に適しているが、Scrapboxは輪郭線を崩す操作が難しい。

これはもともとScrapboxが立体的な情報構造を持たないように設計されているからであろう。とは言え、たいていの最終アウトプットは立体的な情報構造を持つ(ex. 部・章・節・項)。だから、構造に関与できる操作が必要になってくる。

その意味で、Scrapboxの運用は、それ自身がひとつのreferenceであるような存在を作っていくことを意識した方がうまく使えるかもしれない。Scrapboxから何かを生み出すというよりも、Scrapboxそのものを育てていく、作っていくような感覚だ。その場所に中間アウトプットやそれ以前の状態の情報を置くのではなく、Scrapboxのページを(暫定的な)最終アウトプットと捉えて情報を整えていく。そういう位置づけである。

もちろん、そうして作成されたScrapboxのページを利用して自分で何かしらの最終アウトプットに役立てることはあるだろうが、それはideaの利用と言うよりはむしろreferenceの利用である。自分でwikipediaのページを書き、別の自分がそれを利用する。こういう雰囲気だ。

あえて対比的に書けば、Evernoteは「自分グーグル」で、Scrapboxは「自分ウィキペディア」(あるいは攻略wiki)である。これは単なる表現上の差異だけではなく、その内側にある情報をどのように扱っていくのか、という点において違いがある。

next step

これで一通り、既存の情報管理ツールについて目を通せた。その中で、ある種の情報を扱うときにはどんな操作が必要なのかも、おぼろげながらに立ち上がってきたように思う。

次回は、さらにそこを掘り下げてみよう。また、既存のツールではない、つまり違ったツールについても探求してみたい。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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