ライフハック・マインドについて

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覚えてます?「ライフハック」の語源とそれに引き続くおかしな歴史 | Lifehacking.jp

「ライフハック」という言葉はもちろん「ライフ = 人生」を「ハック」することから来ているのですが、これが用語として初めて登場したのは2004年、もう13年も前のことになります。

この「生産性を支えるのは一見つまらないテクニックだ」という意味でのライフハックは、人口に膾炙して広まるにつれてプログラマーだけではなく、生活や人生一般についても適用されるようになりました。

ギークなプログラマーたちは、四六時中コードについて考えている。それは、コーディングに関する時間の割合が、人生のほとんどを占めることを意味する。だから仕事の改善案が、ほとんどすぐ人生の改善案に直結する。work hack ≒ life hack なわけだ。

しかし、多くの人にとって仕事時間の占める割合はそれほど過多ではない。他にもいろいろなものが詰まっている。だから、life hackという言葉の広まりと共に、life hackが内包するものも多くなる。

オリジナルが消えてしまうと言葉はさまよって、最も広がりやすい形に落ち着いてゆく傾向があります。最初は “Life hack” として登場した言葉でしたが、すぐにスペースのない “Lifehack” あるいは “LifeHack” という言葉に変化していきます。

日本ではむしろ、〈ライフハック〉ではなく、〈ハック〉という言葉が軽いニュアンスで使われるようになった。今でも「ハッキング」というと重々しい響きがあるが、「ハック」は実に軽い。容易に使える。ライフハックブーム以前では、こんな風に「ハック」は使われていなかったはずだ。つまり、ワードハックが行われたことになる(ほら、こんな風に簡単に使える)。

ブーム中では、さまざまな書籍が「〜〜ハック」というタイトルで出版され、それらを総体として捉えると、「ハック」≒「術」ということで意味的には落ち着いてしまったように思われる。つまり、「生産性を支えるのは一見つまらないテクニックだ」の前半部分がごっそりとそげ落ちてしまい、「テクニック」(あるいは「つまらないテクニック」)だけが意味的に残留したわけだ。

しかし、もともとのライフハックの精神とは何だったのだろうか。テクニックを使うことだろうか。引き出しいっぱいにテクニックを揃え、それをトランプのカードのようにビシビシと切っていくことだろうか。おそらくは違う。

自己と対象の関係性を、(自己寄りに)最適化すること。

たぶん、そんな風に言えるのではないか。

ハッカーマインドは、対象をそのまま受け入れたりはしない。手を入れられそうなところは、バンバン手を入れていく。それは、わかりやすく言えば「お上思考」(おかみしこう)ではない、ということだ。授けられたものを「はは〜」と受け取るのではなく、改善を、カスタマイズを、プラグインの導入を、積極的に行っていく。環境を、状況を、設定を甘受したりはしない。

キラ・ヤマトがガンダムのOSに手を入れたように。エルネスティ・エチェバルリアが幻晶騎士を魔法演算だけで直接制御したように。

そのマインドこそが、ライフハックの肝だったのではないだろうか。テクニックは、その後に追従するものであり、(たとえどれだけ有効であろうとも)それ自身が信奉されるものではなかったはずだ。

普通、「デフォルト」(既存)というのは意識されない。それは「もともとそういうものだ」という空気のような認識がなされる。しかし、ハッカーはむしろデフォルトを「デフォルト」(他の人間が設定したもの)として強く認識し、そこに手を入れようとする。

それは、仕事のやり方しかり、時間の使い方しかりである。

ある対象を見つめる眼差し。それが「そういうものである」という甘受なのか、「何か変更できないか」という探求なのか。

私たちは、個々のライフハック(≒テクニック)を通して、その開発者のまなざしに触れることができる。視線を重ねることができる。その接触は、あらゆる年月を超えて(あるいは、人間の知性がシャットダウンするそのときまで)有効であろう。

その意味で、どこかの時点でそれらの「大全」が編まれるのは、有益なことであるはずだ。

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というわけで、たいへん期待しているわけである。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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