アイデア、問題解決、ライフハック その2

アイデア、問題解決、ライフハック その1

まずはアイデアからいこう。

問題解決の道のりは、問題の発見・認知・確認・設定が第一歩目だと前回書いた。しかし、アイデアはそうではない。むしろ、問題が発見された後に要請されるのがアイデアである。言い換えよう。我々がアイデアを「必要」とするときには、もうすでに問題は認識されている。よって、アイデアにおいて、スタートとしての問題認識はあまり問題視されない。

むろん、アイデアを生み出すために問題を分析したり、結合したり、再構成したり、といったことは行われる。しかしそれは、解法としての問題の再定義であり、言い換えれば、その背景にはすでに認識された原初の問題が存在する。アイデアを求めるとき、問題はすでに存在している。この点が、問題解決とは違うわけだ。

別のケースもある。

我々は、何の必要性もないところにアイデアを思いつくことがある。誰も困っていないのに、「あれと、あれを組み合わせたら面白いんじゃね?」と閃くのだ。面白いには、役立つ・便利・儲かる・売れる・早く帰れる、と何を当てはめてもいい。何かプラスの効果をもたらすものだ。

こうなると話が逆転する。

アイデアが生まれることによって、それが実施されていない状況が「問題」になるのだ。つまり、アイデアが問題を要請する。必要は発明の母なのかも知れないが、発明が必要の母である場合もある。新しいテクノロジーが社会において利便性を伝染させていくように、新しいアイデアは、世の中に問題をまき散らす。それが、文化を、ひいては社会を「前進」させることにも寄与するが、かといってどちらが前であるのかの議論は置き去りにしてはいけないだろう。よくよく考えれば、そんなものは問題などではなかったのかもしれないのだから。

話が逸れた。

ともかく、アイデアにおいてスタートとしての問題認識は、どちらにせよ、つまり問題から要請される場合でも、問題を要請する場合でも、あまり思念の対象には上らない。問題解決とは、この点が異なるのだ。だからこそ、『問題解決大全』では、第1章および第5章で「問題の認知」が扱われている。

さて、ここで思い出すのがW型の問題解決である。川喜田が『発想法』の中で紹介している概念なのだが、これが実にうまい。

以下は、『発想法』に掲載されている図版である。

単にリニアに並べればこうなる。

  • 問題提起
  • 情報あつめ
  • 整理・分類・保存
  • 要約化
  • 統合化
  • 副産物の処理
  • 情勢判断
  • 決断
  • 構造計画
  • 手順の計画
  • 実施
  • 結果をあじわう

上から下までの一連の流れを通すことによって、「ひと仕事の達成」へと向かう。KJ法をご存じの方ならば、この過程の要約化と結合化をKJ法のコア部分が担当していることに気がつかれるだろう。

上記のリストは、項目の多さ、つまり行為に対する解像度も高さも素晴らしいのだが、川喜田はさらにこれを複数のレイヤーに配置した。図版で言えば、上の図がそれにあたる。これが見事な仕事であった。

行為は、「思考レベル」レイヤーと「経験レベル」レイヤーにそれぞれ配置される。まず「問題提起」は思考レベルである。それを出発点として、次に情報あつめが始まる。たとえば、現場(現地)に赴き、情報収集する。これは経験レベルの話である。この問題提起から情報集めに移動する動きは、「探検」と名付けられている。

集めた情報は、何からの方法によって整理・分類・保存されるであろう。でなければ、研究は続けられないし、知見も生み出せない。情報を集め、それを整理すること。それが「観察」である。

もちろん、それで終わりではない。観察によって集まった情報を用いて、新しい情報が仮設される(あるいは仮説される)。それがKJ 法の、ブレスト〜AB型までの流れである。これはもちろん、思考レベルの話だ。

つまり、である。「ひと仕事の達成」においては(あるいは「研究という名の仕事」においては)、思考レベルと経験レベルの行為が、〈行ったり来たり〉するのである。問題提起、情報集め、仮説の建設がまずVの字を形成し、そこで生み出された(仮説的な)解決策に基づいて実行を進め、その効果を検証するプロセスが続きのVの字を形成して、全体はW型となる。行ったり来たりが、二回繰り返されているわけだ。

もちろん、ジグザクした株価のチャートが、拡大すればより細かいジグザグを含むように、上記のWも純粋な直線のWではない。たとえば、「観察」の工程においては、情報あつめをし、それを整理・分類・保存していく中で新しい視点が生まれ、それが続きの情報あつめに影響を与える、ということはいくらでも起こりうる。真っ直ぐに、一方的に進むのではなく、そこでも〈行ったり来たり〉はあるわけだ。

とは言え、全体の流れとして見た場合、このW型の問題解決は、小気味よいくらいに綺麗にまとめられていると言えるだろう。

ポイントはやはり〈行ったり来たり〉である。二項を立てておきながら、それらを単純に対立はさせていない。むしろハイブリッド的な調和がそこにはある。でもって、それは理念先行ではない、ということだ。

アイデアや発想法が扱うのは、思考レベルで完結する話か、よくて経験レベルで得た情報を元に思考を進める話である。もちろん、それはそれで有用なもの、言い換えれば全体のプロセスを構成するパーツの一部ではあるのだが、それだけでは経験レベルへのフィードバックは起こらない。なにかを「為さなければ」ならないのだ。

そこでは、情勢判断・決断・構造計画・手順の計画など、「アイデアの本質」とは関係ないもの(あるいはそう感じられるもの)が要求される。が、ここをクリアしない限りは、アイデアは思考レベルに留まり続ける。アイデア富豪アウトプット貧乏、というわけだ。

だからこそ「知的生産の技術」はそれ単体では機能性は薄く、「タスク管理の技術」と絡み合うことによって、はじめて現実に対する影響力を持つようになる。でもって、それらを都合良く包括することができる言葉がライフハックであった、というのは改めてここに書き留めておきたい。

(つづく)

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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