さて、今年読んだ本のなかで、「頭をガツンとやられた一冊」を紹介しましょう。
ほんとはね、名前を挙げたい本はいっぱいあるわけですよ。しかし、紙面上の都合とかそういう大人の事情が、えっ、前置きはいらない? ではさっそくまいりましょう。
グランプリ
グランプリに輝いたのは、タレブの『反脆弱性』です。いや、もう、これは文句なしですね。同じ著者の『ブラックスワン』が楽しめたなら間違いなく大丈夫ですし、それ以上に「役立つ」一冊だと思います。
特別賞
グランプリではないものの、特別賞に輝いたのは『テトリス・エフェクト』です。本書もほんとうに面白いのですが、私があと2割ほど読み終えていないので、特別賞となりました。あと残り2割の展開によっては、グランプリ級になるかもしれませんが、読み終えていないのでこればかりは仕方がありません。
さて、本書はテトリスの話ですが、実はテトリスの話だけではありません。ゲームの歴史であり、機器とゲームデザインの話であり、東西冷戦の話でもあります。本当にいろいろな要素が詰まっていて、なおかつ読み物としても面白い。これは一級品ですね。というわけで、続きの残りを貪り読みたいと思います。
さて、グランプリと特別賞の発表も終わったので、あとは部門別に見ていくとしましょう。
小説部門
まあね、もうね、これですよね。いろいろ言いたいことがないではありませんが、それでも、まあ、すごいな〜、という言葉しか出てきません。合わせて、以下も読むと面白いでしょう。
新書部門
ほんと、びっくりするくらい面白いです。軽い文体でありながらも、縦横無尽な引用と、丁寧な語りかけが心に迫ってきます。それにしても面白い問いですよね。「人はなぜ物語を求めるのか?」。だって、もうここにも物語が宿っています。
実用書部門
悩みました。入りやすさ、親しみやすさで言えば『アイデア大全』に軍配が上がる気もするのですが、本書が提示する二つの問題解決アプローチは、もうそれだけで多くの問題解決に貢献するほどの重要な「物の見方」です。正直、網羅性よりも、そちらの方が重要ではないかとすら思ってしまいます。というわけで、こちらをピックアップ。
もちろん、『アイデア大全』も面白いですし、もっともっと具体的事例を求めるなら、『ライフハック大全』も参考になります。
学習部門
「そもそも勉強するってどういうこと?」から入りながらも、その後はさまざまな飛翔を見せてくれる本書。特に、「言葉を使うこと」について改めて考える一冊となってくれるでしょう。
生物学部門
奇妙な生き物とその生態を収集した一冊ですが、文体も軽く、スイスイ読めます。でもって本当に、世界は奇妙です。童貞でうんぬんとか言っているのが、一瞬でバカらしくなります。そういうのって、人間の、特に近代的価値観に刷り込まれたものでしかありませんね。世界の広さって、そういう刷り込みよりもはるかに広大です。
産婆部門
何だよ、産婆部門って感じですが、読んでいるうちに、理解が深まるよりも、自分で考えたいことが増える本です。二人の対比から生まれる思考の渦が本当に面白くて、そこに読者もグイグイ引き込まれていきます。
ちなみに、同じく産婆部門では、以下の本が次点でした。ちょっとハードですが、それでも問いを磨ける一冊です。
IT部門
これは、2017年の現代で、改めて考えておく問題です。一方で自由の少々であるようなインターネットが、もう一方でプラットフォームビジネスの土台となり、人がその掌の上で踊らされているという事実。加えて、フィルターバブルの問題。奇しくもそれは、「自由とは何か?」という非常に哲学における根源的な問いを再発させるものでもあります。
SF
もちろんSFなのですが、新しいSFという感じがしました。取り扱われている技術が新しいのではなく、世界の描き方が新しいと感じるのです。でもって、それとは別種の新しさは、ケン・リュウからも感じます。
ライトノベル部門
賛否両論はあろうかと思います。しかし、本書が本シリーズにおいて重要な位置づけを持っていることは間違いありません。「そうきたか〜」と思わず叫んでしまったことはここに明記しておきましょう。とりあえず、全体的にこのシリーズが結構好きです。
閉幕
というわけで、当初はグランプリの一冊(正確には上下巻で二冊)の紹介のつもりだったのですが、ついつい特別賞とか、部門別とかを追加してしまいました。それでもまだ、フォローしきれてはいませんので、気になる方はメディアマーカーなりHonkureなりを覗いてみてください。
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