Scrapbox企画:第二回:Scrapboxの特徴

前回は、Scrapboxは他の情報整理ツールとは異なる、という点を確認した。

では、そのScrapboxはどのような特徴を持つのだろうか。

Scrapboxの特徴

以下のような特徴がある。

  • ブラウザベースのクラウド
  • シンプルなUI設計
  • 便利な入力記法・操作方法
  • リンク主体のフラットスタイル
  • 複数人での情報整理
  • CSS・JSによる拡張性

それぞれ見ていこう。

ブラウザベースのクラウド

Scrapboxはブラウザで使える。これは人によってメリットになったりデメリットになったりするだろうが、私のようなネット中毒者であれば大歓迎な環境である。

でもって、最近ではもはやデフォルトになりつつあるが、クラウドなのでパソコンからでもスマートフォンからでも同一のデータにアクセスできる。

これはまあ、基本的なお話。

シンプルなUI設計

上記とやや関連するが、Scrapboxは、基本的にインターネットを使っている人であれば、新しく理解しなければならない概念が非常に少ない。これは特筆すべきことである。

「ページ」「リンク」「テキスト」「画像」

ほら。一般的な用語しかない。そして、ただ使うだけならばこれだけで十分OKなのだ。

その点、Evernoteであればノートとノートブックみたいな説明が必要だし、WorkFlowyもアウトライナー的な機能説明がどうしても必要となる。もちろん、概念的難しさはそれほどないが、それでも敷居がまったくないわけではない。

Scrapboxは、「この+ボタンを押したら、新しくページが作成されて、あとはそこに自由に書いていけばいいんだよ。自動的に保存されるしね」で、済む。wikiにありがちな「編集画面」とか、そういう話も必要ない。

あまりにもシンプルに使えるがゆえに気がつきにくいが、これは結構すごいことである。パソコンヘビーユーザーでも、おそらく認知的負荷はこの方が小さいだろう。

便利な入力記法・操作方法

記法についての詳しい解説は、また回を一つ設けたいと思うが、とりあえず「覚えなければならないこと」が極めて少ない。乱暴に言えば、”[“さえ入力すれば、あとはなんとかなる感がある。

私は長年でんでんコンバーターを使っているのだが、見出しをつけるマークダウンの記法は頭に入っていても、画像を入力するための記法をいつも忘れて検索してしまう。はっきり言って統一感がない。

その点、Scrapboxは、”[“が重要だ、という点さえ覚えておけば、結構本当になんとかなってしまう。極めてユーザーライクな設計だ。

リンク主体のフラットスタイル

おそらく、Scrapboxの特徴を語る上で、一番アクセントが置かれるのがこれだろう。

Scrapboxは、階層構造を持たない。プロジェクトがあり、その下にノートがある。以上だ。Evernoteのように、ノートブックとスタックのようなものも作らないし、WorkFlowyのように再帰的構造を繰り返すこともない。

梅棹忠夫の言葉に「分類するな。配列せよ」というのがあるが、まさにそれを地でいくスタイルである。

※情報カードのようにただひたすらに並ぶページたち

パソコンファイルのフォルダ式管理システムに慣れている人間にとっては、こんなもので情報が整理できるわけがないと感じるだろう。逆に、野口悠紀雄の「超」整理法に親しんだことがある人間なら、なるほど、と思うかもしれない。

私たちは手持ちの情報すべてに等しくアクセスするわけではない。アクセスの仕方には偏りがある。それを理解すれば、フォルダ式管理システムは絶対的要求でないことが見えてくる。そうでなくても、管理できるのだ。

では、Scrapboxはどのようにして情報を整理するのか。これに答えるためには、まず「情報を整理するとはどういうことか」に答える必要があるのだが、それはまた別のところで書くとして、簡単にScrapboxの方式だけを提示しておくと、リンクである。強力なリンク機能によって、Scrapboxは情報を整理する。

そんなことが可能なのかと言えば、これが可能なのである。

Evernoteも、「ノートリンク機能」の導入によって、この可能性に大幅に近づいた。これは幾万の拍手を送ってもいい。ただ、結局そちらをメインにする方向には進まず、相変わらずノートブック主体での整理(分類)となっている。この点に、私はまだまだEvernoteの飛躍の可能性を見るわけだが、それは完全な脱線なのでここで止めておこう。
※ちなみに私は、今EvernoteをScrapboxのように運用している。主にUI的な側面で。

ともかく、Scrapboxはページを、つまりは情報をリンクでつないでいく。それがもたらすものは、やはり回を一つ設けて書いてみたい。

複数人での情報整理

この点は、人によってはまったくメリットがないだろうが、Scrapboxの優れた特徴の一つである。複数人での情報整理が簡単かつ便利に行えるのだ。

しかも、非同期だけでなく同期で、つまりはリアルタイムでの同一ページ編集もできる。いや、「できる」というレベルではなく、やっていて楽しくすらある。これは異例の事態である。

私はEvernoteで、共有ノートブックをいくつか持っているのだが、同時にノートを編集しようとすると、競合エラーが起きがちである。それでまるまる本文が消えてしまった経験も一度や二度ではない。だから、共有ノートにアクセスするときはけっこう慎重になってしまうのだが、Scrapboxではそんなことは起こらない。むしろ、誰かがそのページに「いる」と嬉しくなってしまう。180度くらいの転換である。

そして、この点が、Scrapboxが示す新しい情報整理──私の文脈に引きつけて言わせてもらえば知的生産──の可能性を示しているようにも思う。この共同作業から生まれる何かは、個人が書斎にのみ引きこもって作り出す何かとはやはり質が異なるだろう。完全なオープンでもないし、ひとりっきりのクローズドでもない。そのような中間的な在り方は、今のネットに欠落しつつあるものではないだろうか。

とまあ、風呂敷を広げたくなってきたので、この辺にしておくが、Scrapboxの共同作業はたいへん心躍るものである。

CSS・JSによる拡張性

これはまあ、デフォルト以外に興味が無い人にとっては無縁な話であるが、ブラウザベースなので、CSSやJavaScriptによるカスタマイズが可能である。

他のツールだと、ブラウザの拡張機能を使ってそうしたカスタマイズを施すことになるのだが、Scrapboxでは標準にその機能がついている。

でもって、公開されているプロジェクトに関しては、そこで行われているカスタマイズは他のユーザーにも閲覧できるので、「これいいな」と思うものは簡単に導入(コピペ)できる。

これまたユーザーライクというか、初心者ライクである。私も、いろいろなところからコピペさせていただいている。感謝である。

さいごに

というわけで今回はScrapboxの特徴について見てきた。もちろん、細かい点は他にもいろいろあるだろうが、大筋はこんなところではないだろうか。

とは言え、これだけでは「で、結局Scrapboxって何に使えるの?」という疑問は氷解しないだろう。よって次回は実際例について見ていくことにする。

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