断片からの創造

「アイデアを育てる」:デジタルカードツールとそのメソッド

≪断片からの創造≫が私の直近の、そして大きなテーマだ。

それは単にボトムアップ的に何かを作っていくことだけを指すものではない。断片と全体の再帰的構造関係や、創造と破壊の両義性について検討する話になる。

が、風呂敷を広げるのはさておいて、実際的な話をしよう。カードを使って何かを作る、ということだ。

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哲学者の著作には断片集的なものが多数ある。はじめから大きな構造のもとに記された文章ではなく、書き手が日常的に書き留めたであろう文章を断片として使い、一冊の本にまとめ上げた著作だ。

巨大な構造物がそこに存在していないがゆえに、読者としても気楽に読める。たぶん書き手も負荷は小さいものだっただろう。流れの中で文章を正確に位置づけるのはたいへんな苦労だ。もちろん、そうした苦労が背景にあるがゆえに、本は本としての独特な価値を持つ。が、それ以外の手法はあってもいいだろう。

それが断片的創造である。

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理想を言えば、日々は小さくカードを書くように文章を書き留め、それらを後からまとめあげることだ。ここで、「まとめあげる必要はあるのか?」という書籍文化に対する根本的な疑問を提示することも可能ではあるが、今はその問いは冷蔵庫にしまっておいて、まとめあげる前提で話を進める。つまり、本というアウトプットを生成する。

何人もの書き手が、情報カードを使ってやっていたようなことを、情報カードを使わずに行う。そのためには、どのような環境があればいいだろうか。

難しく、面白い疑問だ。

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「アイデアが育つ」などと言う。それは具体的にどのようなものなのだろうか。

まず何かを思いつく。頭の中で言葉が蠢く。それを書き留める。知的生産の基本中の基本だ。

おそらくそのとき、その蠢きの中には「タイトル」や「見出し」などといったものはない。単に何かを思いつくのだ。

ただ、そうして書き留めたものを眺めてみると、その情報の塊を一言で言い表せるような何かを与えられることもある。それは表札であり、シンボルであり、凝縮されたシノプシスである。上手い見出しがつけられると、チャンク化が行われて認知的な負荷も減る。良いことづくしだ。でもそれは、基本的に後から発生するものでしかない。添付するものでしかない。

しかし、である。そうして見出し+本文、という形ができあがると、その内容に刺激されて何か別のことを思いつくことは多い。そして、その際には最初に見出しを作れることも少なくない。思考の階層が一段上に登っているからだ。一番最初にメモを書き出したときは一階だった。それに見出しを与えることで視点は二階にあがった。すると、今度は二階の視点から思考が動き出す。だから、そこでは先に見出しを作ることもできる。

そうして二つの「書き留めたもの」を眺めてみると、さらにもう一段階の視点が加わる。ここの表現は少し難しい。先ほどのメタファーを続ければ、階段をもう一段上って三階に行く、と言いたくなる。でも、それは本当なのかどうかはわからない。ともかく、その二つの「書き留めたもの」を共通でくくるような概念が思い浮かぶ。そこでそれもまた書き留める。

もちろん、二つともに書き留める。

こうして書き留めたものを仮に「コンテキストタグ」と呼ぶことにしよう。異なる断片にリンクを生じさせるメタ情報だ。もう少し言えば、異なる断片に潜む関係性を表現するための情報だ。

これが生まれた後に、自分が今まで書き留めたメモをもう一度頭から(あるいはおしりからでもいい)読み返してみる。すると、同じタグをつけられるものがポコポコみつかる。それにもタグをつけていく。

これで準備は整った。むろんこれで即座にアウトプットが生み出せるというわけではないが、何かしらの土台のようなものがここでセッティングされたことになる。

あとは、さらなる追加要素を求めたり、個々の要素の関係性や位置をよりはっきりさせていけばいい。

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皆が口々に「考える」と言う。しかし、「考える」の実体は多様である。アイデアを育成していくことも、その多様さに含まれるし、そこには独自のメソッドが内在している。

今回紹介したのは私のツールであり、私のやり方であるが、少し抽象化して捉えれば、他のツールでも運用可能だろう。

人間側で重要なのは、まず書き留めることであり、次に書き留めたことについて考えることだ。ツール側で重要なのは、一覧できることであり(階層的に表示を分けるのはタブ−)、それらに手軽にアクセスできることであり、加筆・編集できることであり、それらのカードを何らかの手段で抽出できることである。デジタルならば、お茶の子さいさいだろう。が、私にとっては既存のツールはやや大げさにすぎる。単にテキストを並べておきたいだけなのだ。

よって、DIYの出番である。

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