カード法における情報カードと、こざね法におけるこざねの違いについて検討する。
その上で、デジタルカードはどのように運用されるかを見ていく。
カード/こざね
デジタルカードは、サイズや記入量は可変である。よってそれは、カード的にもこざね的にもなる。
ここでいうカードとは、情報カードのことであり、「カード法」を構成する要素を指す。着想などの情報を蓄積し、アウトプットに役立てるのがカード法の肝であり、現代版であればPoICが、旧来版であれば『知的生産の技術』や『知的生活の方法』などが言及している。
一方こざねとは、紙片のことであり、文章の構成をタンジブルに構築していく「こざね法」で扱われる要素を指す。いわゆるアウトラインの構成だ。これも同じく『知的生産の技術』にて言及されている。
この二つは、アナログツールで見ればあきらかに違っているのだが、デジタルだと一見した違いはない。というか、意識的に設定しない限りは違いは存在しないとすら言える。よって、その性質について考えてみる。
それぞれの要件
こざねは小さい紙片であり、そこに書き込まれるのはせいぜい一行ほどのメッセージとなる。なぜか。こざね法は構成を考える手法であり、必要なのは全体を見通すことだからだ。執筆時に必要となる詳細な情報は、ここでは不要となる。
一方、カードは、知識や着想を蓄積していくためのシステムである。いわゆる「忘れるための記録」であり、ある程度細かく書きつけておかないと、時間が経った後の自分がデコードできなくなってしまう。
つまり、こざね法は俯瞰的であり、時間限定的である。よって、一行だけの書き込みがたくさん並んでいてOKだ。さらに言えば、タイトルと本文のような区分けも必要ない。むしろ、それらがあると自由にこざねを動かせなくなってしまう。意識をフォーカスすべきなのは、話の「流れ」である。重たい荷物はコインロッカーにでも預けておくべきだろう。
対する、カード法は、凝視的であり、長期保存的である。ここでは、二つの要素が役に立つ。本文は内容を詳細に想起する際に、タイトルは全体の概要を端的に表現するために。なぜ、全体の概要を端的に表現しなければならないのか? それはカードがたくさん溜まっていくからである。全体を読まないと処理できないのでは、データは扱いづらい。論文でもシノプシスが重要だと思われるが、それと同じである。
またタイトルをつけることによって、自分の中での整理が進むという側面もあるだろうが、それはカードの書き方の話になってくるのでここでは立ち入らないことにする。
とりあえず、こざねとカードには上記のような機能・目的的な違いがある。
デジタルツールでは?
単純に考えると、アウトライナーで、下位の項目を持つ項目は「カード」的だと言える。そこにはタイトルがあり、本文がある。WorkFlowyならnoteを持つ項目もそこに加えられるだろう。
逆に、下位の項目を持たない項目は「こざね」的である。重たいものがくっついておらず、自由に動き回れる。
ただし、アウトライナーは下位の項目表示を「閉じる」ことが可能だ。こうすると、カードとこざねが切り替えられる、という風にはある程度言えるだろう。留保したのは、タイトルの書き方によって機能するときとそうでないときがあるからだ。きちんと見出しとして機能する書き方をしていないと、こざねとしては使用に耐えないだろう。これはツール側の問題ではなく、使用者側の情報処理の問題であるのでここでは深入りしないことにする。
ちなみに、こざね法は自由に並び替えて「流れ」を、つまり要素の配列を考える行為だから、ある情報単位が自由に動かせないツールでは実施できない。そういうメモツールも少なからずある。
何が必要か?
さて、textLineで、私が実現しようとしていることは、新しいデジタルでのカードシステムだ。よって、こざね的な要件はそれほど必要ない。
一応情報カードだって、箱の中で順番を入れ換えられるのだから、カードの並びをいじれることは必要だが、アウトライナーのようにせっせと動かして回れるような必要性はあまり高くない。せいぜい、近しいものを寄せておくか、あるいはピックアップしたいものを一番上か一番下に移動させることくらいだろう。
むしろ必要なのは、カードを「くる」ことだ。大量に蓄積されたカードを効率的に、あるいは楽しく閲覧できること。そちらに力を注いだ方がいい。そうしてカードを「くる」ことで、現在抱えている問題に対するヒントを見つけたり、あるいはカード同士の反応を(脳内で)引き起こす。そういうことができるツールである方が望ましいだろう。
あとは、たくさんたまったカードを、一定の基準によって「抜き出す」ことができれば、アウトプット生成時にも役立つはずである。が、その実際のニーズを知ることができるのは、カードがたまってからだろうから、まずは「くる」ことについて集中的に考えてみたい。
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