箇条書きリスト:メモのフォーマット(1)

-ツールあれ。人はそう言った。-

箇条書きリスト

具体的なツールを見ていく。実装、と言い換えてもいい。

まずは、リスト、特に箇条書きリストについてからスタートしよう。

まず、箇条書きリストは、

  • 要素が一列に並べられている
  • 要素が箇条書きされている

の二点を満たすものだ。

また、「買い物リスト」などのように接頭に文脈(コンテキスト)を含む名称を持つものは、

  • 集められた要素はその文脈に即する

という要請を持つ。

ただし、これらは厳密な型定義を要求するプログラミング言語の世界と違って、曖昧さを許容する人間がつくるものだから、この要請に従わないで作られるコンテキスト・箇条書きリストもある。

それが運用の妨げになることもあるのだが、それはツール側の話ではなく、作る側の話なのでここには問題にしない。あくまで要件の確認である。

一覧と順番

コンテキスト箇条書きリストの特徴はなんだろうか。

まず、コンテキストに沿った要素が一望できる点がある。その点は「買い物リスト」や「タスクリスト」を思い浮かべればわかるだろう。逆に言えば、一望することに意味があるとき、このツールの実装が要求される。

※箇条書きのタスクリスト

その点に関係することだが、リストは他のフォーマットに比べて余計な情報を持たない。階層や平面が存在しない。そこにあるのは要素とその順番だけである。もし、必要とする情報が要素の想起とその順番だけでいいのならば、この一番シンプルな実装が適している。むしろ、(余計な情報について考えなくて良いという意味で)優れているとさえ言える。

また関連して、要素の順番に情報的価値が高く、それが変更されることが想定されるなら、紙に書かれたリストよりも、デジタルツールのリストや付箋群で作成されたリストの方が望ましいと言えるだろう。

順番というものがたいした意味を持たない、あるいはそこに思考を向けたくない場合は、むしろ「変更できない」(≒するのにコストがかかる)紙のリストの方が適している。世の中には、変えられないことがメリットを持つこともあるのだ。

箇条書きの特性

コンテキスト箇条書きリストのもう一つの特徴は、項目が持つ情報が極めて小さいことだ。

[箇条書きとは過剰に書かないことだ]と以前書いたが、箇条書きのメリットは簡易な摂取、認知容易性にある。プレゼンテーションのスライドなどでも「箇条書きを使いなさい」というアドバイスをよく見かけるが、それと同じである。他者にとって摂取しやすい情報形式であるならば、自分でそれを扱うときも同じだろう。

ただし、認知容易性はトラップを持つ。『ファスト&スロー』で明らかにされているように、人は認知が容易であるものほど信じやすくなる。だからこそ、スライドで箇条書きを使うわけだ。そこでは、真実性の探究よりも他者の説得に力点が置かれている。

この点が、自分のリストにも返ってくる。箇条書きリストにすると「もっともらしく」見えるのだ。これがアウトライナーで構成案を作って、「うん、よし」と頷いたあとに執筆をスタートさせると必ず詰まるところが出てくる理由の一つでもある。箇条書きは、詳細な検討(≒システム2の発動)を抑制する。だからこそ、情報は扱いやすくなる。

コンテキスト箇条書きリストが役立つ場面

単に情報がそこにあればよいのであれば、箇条書きリストは役に立つ。逆に、要素の詳細な検討が必要な場合は、箇条書きリストを作って満足していてはいけない。

もちろん、詳細な検討の出発点として箇条書きリストを作るのは、いつでも良いスタートになるが、そのリストが完成して感じる満足感は認知容易性から生じた「誤解」である可能性がある。

たとえば、この文章をここまで追いかけてきた人は、もしかしたら「本当にそうか?」「別の可能性もあるのでは?」と考えたかもしれない。それがシステム2の発動である。私がもし上記を箇条書きリストでまとめたら、きっとなんとなくわかった感じがして、それで納得してしまうかもしれない。少なくとも箇条書きリストはそういう心の動きを促す傾向を持つ。

当たり前だが、スーパーでカレーの買い物をするときに、「そもそも本当にカレーにはたまねぎが必要なのか」を考えていては日常生活に困難が生じる。システム2は常に発動していなくてもいい。情報があり、その情報に沿って行動する、という場合なら、箇条書きリストは大いに効果を発揮する。しかしそれは、情報を扱う「仕方」の一つでしかないことは念頭に置いておくべきだろう。

さいごに

コンテキスト・箇条書きリストは、二つの軸で情報を保存する。文脈と箇条書きだ。

その二つの情報軸から使用者は脳内に情報をデコードする。「買い物」リストに掲載されている「たまねぎ」は、「たまねぎを買う」だと解釈される、ということだ。

たった二つの軸しかないのだから、これは極めて少ないと言えるだろう。だからこそ、情報の取り回しがよくなり、また認知容易性を発揮させる。

しかし、情報量の少なさはデコードの失敗の可能性を拡大させる。自分の作ったリストでありながら、そこに書かれていることの情報をうまく再生できないことも少なくない。これを「解釈の余地」と捉えることもできるし、「混乱の萌芽」と捉えることもできるだろう。

コンテキスト・箇条書きリストは日常で頻繁に使われる優れたツールではあるが、そのツールでは対応できない領域もしっかりと考慮しておきたい。

▼関連するメモ:
説得力のある文章を書くには – 倉下忠憲のメモ

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