0-知的生産の技術

HowTo本はいかに読むべきか?

いかに多量にかき集めても、自分で考え抜いた知識でなければその価値は疑問で、量では断然見劣りしても、いくども考え抜いた知識であればその価値ははるかに高い。
ショーペンハウエル 「思索」より

昨今はビジネス本がブーム化している。いろいろなジャンルのビジネス本がかなりインパクトのあるタイトルで次々と販売されている。そしてその多くが「HowTo本」である。

人がHowTo本を読む時に期待するのは何だろうか?
それは多くの場合「速効性」ではないかと思う。やり方が分からなくなった時に取扱説明書を読む時のような気分でビジネス:HowTo本を読むという人が多いのだろう。
しかしながら、そのような読み方は往々にして用をなさないばかりかある種の害すらもある。

なぜ用をなさないのか?

著者個人のビジネス環境に置かれて作り上げられたHowToは同じような環境に置かれ、かつ情報処理的好みが近しい人間でないと、そのまま通用するというのはなかなか考えにくい、と言う点が一番大きい。

使いやすいようにカスタマイズされていればされているほど汎用性を失い、読者の個人性からは離れてしまう。

有害に成りうる場合とは?

この場合の害とは、読んだだけで何かを成し遂げた気持ちになってしまうことや、あるいは、HowTo本に書かれてある事をそのまま実践しようとして、当然のように挫折し、抱く必要のない劣等感を感じてしまう事などがある。

上に述べた「個人カスタマイズ」を意識せずに、そのままのやり方で自分の仕事に適用することは三角の型に四角の物を詰めるようなもので、どこかに無理が出てくる。

その無理がそのHowToと自分との差ではあると考えずに、自分自身の何らかの能力・資質に問題があると感じてしまい、自信を失う。

ではどのように接するのか?

実際に使われているようなHowToというのは、大体ある原則を現場適用したものだ。HowToがまずありきではなく、基本的な原則があって、それを応用した物、という認識を持つことが大切である。
それを踏まえて、以下の二つの接し方があると思う。

○自分なりの方法論を作る
これはかなり遠回りとも言える方法である。

まず、出てきたHowToから元になった原則を抽出する。うまく本の中でその原則が紹介されているものもあるし、書いている著者自身がそれに気がついていない時もある。後者の場合は読者がその原則をしっかり見つけ出す必要がある。

そしてその抽出した原則から、自分なりのHowToを作り出す、という方法だ。
HowTo本を上手く使いこなせている人はおそらくこのような接し方をしていると思われれる。この自分なりの方法論を作っていく過程こそが重要で、HowTo本はそのキッカケ作りにすぎない。

例えば、「情報は一冊のノートにまとめなさい」という本に書かれてある内容を一種のHowToとすれば、その底にある原則は「情報は時系列で一元管理し、インデックスを作成すれば効率がよい」という原則だ。
著者が紹介しているようなノートのサイズなどは原則ではない。個人の環境によって変わってくる。もちろんノートにこだわらない人もいても良い。Evernoteはまさにこれを体現したようなサービス(アプリ)になっている。

自ら思索することと読書とでは精神に及ぼす影響において信じがたいほど大きなひらきがある。
ショーペンハウエル 「思索」より

○思考のプロセスを楽しむ
HowTo本に書かれてあるHowToは大体著者が作り出したものだ。(どこからかHowToをかき集めてきただけの本ももちろん存在することは私も十分承知している)
そして、それは必要とする状況があったからこそ生まれた場合が大半である。
どういった状況・必要性からその著者がそのHowToを作り出していったのか、という思考のプロセスをじっくりと味わうという読み方もある。

紹介されているHowToが使える、使えないということを一切抜きにして著者がどのような視点・姿勢で問題解決に当たろうとしたのか、という点を探る、という読み方だ。
そしてその視点・姿勢に共感できる点があれば吸収していく。

二つの接し方を紹介したが、共通に言えることは書いてあることを鵜呑みにしない、ということだ。

内容からある程度の距離を置いて自分自身の視点で見つめ直す。これによって単に他人の頭が考えたことをなぞるだけではなく、自分自身の思考の元を作り出すことができると思う。すくなくともこういった読書ならばショーペンハウエルに酷評されることもないのではないか、そんな気がする。

もちろんこの記事に書いてあることもそのまま実行すれば良いというものではない、原則は「HowTo本は鵜呑みにしない」であり、それを適用すればHowTo本は読まない、という選択ももちろんあり得る。

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