7-本の紹介

【書評】アウトライン・プロセッシングLIFE(Tak.)

すべては、つながっている。おそらくそう言っていいだろう。

本書は、アウトライナーの使い方の本であり、「やること」の扱い方の本であり、自分との接し方の本であり、著者の生々しいアウトラインが覗ける本でもある。

位置づけとしては、『アウトライン・プロセッシング入門』の続編に当たるのだが、印象としてはスピンアウトが近いかもしれない。前書で扱われていた”タスク管理から「生活のアウトライン」へ”の項目にzoomし、そこから一つ上の階層が探索された。そんなイメージだ。

目次は以下の通り。

本編の前に……アウトライン・プロセッシングミニ入門
Part 1 アウトライナーフリーク的タスク管理論
Part 2 DOの全体像をクリアにする「ALL」
Part 3 今日をクリアにする「DAYS」
Part 4 アウトライナーフリーク的タスク管理論・追記
Part 5 アウトライナーフリーク的「重要なこと」
Part 6 「重要なこと」をクリアにする「BE」と「AS」
Part 7 「DOのアウトライン」から「ライフのアウトライン」へ

話は「やること」をいかに扱うのかから始まり、そこからぐんぐんと視点が展開していく。それは一つの説明でありながら、一つの物語ですらある。実に奇妙で、楽しい本だ。

むちゃくちゃ雑に分類すれば、あるいは頭の固い分類官(そういう職業があるとして)がカテゴライズすれば、本書は「タスク管理」や「個人の成功論」に位置づけられるだろう。しかし、そのような分類では、本書の輪郭を掴まえることはできない。論説風でもあり、エッセイ風でもあり、端正でありながらも遊び心がある本書の輪郭は、安易なカテゴライズでは到底扱えないものである。

もちろん、いかにタスクを扱うのか、という話は出てくるし、いかに生きるのか(あるいは生きるとは何か)という話も出てくる。その意味で、固い分類が間違っているわけではない。ただし、正しいとも言えない。

片方に極めてテクニカルな話がありつつも、もう片方には奥深い思想の話がある。そして、それらが接続している。この接続がポイントなのだ。思想とテクニックが断線することなく、一冊の中で相互に作用しあっている。そこに奇妙な落ち着きの良さを私は感じてしまう。

極論すれば、「やること」は「生きること」なのである。人生は行動で構成される。「林檎を買う」というアクションは、タスクでありならが、確実に私の人生の一部である。しかし、zoomはそれを見えなくさせる。

ある種の方法論の効能を確定させるためには、前提の固定が必要となる。出世するための仕事術は、怒られない程度に仕事をこなす仕事術とは相容れない。ここに方法論の固さがある。

ある作業を目の前にしたとき、「なぜその作業をするのかを問いましょう」というアドバイスはよく聞く。目的を明確にすることで、意義を確認する。自分の行動をモチベートする手段としては一般的なものだろうし、効能もあるように思う。しかし、そのアドバイスは、暗黙に再帰の適用限界を規定している。

作業の目的を問うことは、仕事の目的を問うことにつながる。そしてその問いは、自然と「なぜ自分はその仕事をしているのか?」という問いに接続する。

「〜〜をするのはお客様を大切にするためです」
「なぜ私はお客様を大切にする仕事をしているのか?」

この問いは非常に危うい問いである。破壊的と言っていい。それまでの前提をひっくり返す可能性を秘めた問いだ。答え方によっては、目の前の仕事が仕事ではなくなる可能性があるのだが、一般的な仕事術はそういう問いを想定していない。

しかし、「やること」は「生きること」なのである。目の前のタスクについてじっくり「考えて」いるうちに、仕事そのものを変えてしまう、ということは充分に起こりえるだろうし、起こりえる可能性を封鎖するのは健全とは言えない。

アウトライナーという構成装置は、破壊装置でもある。階層をのぼり、組み替えることで、私たちは一つのフレームから自由になることができる。

今私は極めて大げさな話をしているように思われているだろうが、そうではないのだ。知的操作のツールは、認識を支えるツールでもある。私たちが概念を扱うとき、同時に世界(という認識)も扱っているのである。

このことが持つ意味は存外に大きい。世界は固定され改変を拒むものなのか、それとも変化を許容し関与の余地を持つものなのか。その認識の差異は、生き方の差異にもつながっていくだろう。

(1ペイン式の)アウトライナーの上では、すべての項目が操作可能であり、改編可能であり、掘り下げることができ、レベルアップさせることができる。そして、それらすべては同一平面上に「属して」いる。分類はあっても、疎外はない。

その世界の上で「考える」ことは、一体何をもたらすのだろうか。

本書は、アウトライナーを使った「考え方」の本である。

一般的に「考え方」というと、知的生産や研究の局面においてのみ用いられる印象があるが、本書はその適用範囲を拡げた本であると言っていい。

日常に遍在する「考える」と、それを支えるツールとしてのアウトライナー。著者の中でその二つはつながっている。読者の中でその二つがつながっていなくても、おそらくどちらかの話は(あるいは両方の話が)役に立つことだろう。