Scrapboxの用法

断片のマルチコンテキストとScrapbox

毎日さまざまな着想をメモしているのだが、中には扱いに困るものがある。

たとえば、以下のメモだ。

何がどう困るのか。このメモを文脈付けられないのだ。

それは、このメモに含まれる情報が文脈を欠いているからではなく、多重な文脈と接続しているからである。つまり、マルチコンテキストなのだ。

このメモは、知的生産の技術に接続もするし、情報社会論にも接続するし、情報摂取のノウハウにも接続する。もちろん、そのように感じるのは私だけである。言い換えれば、多重な文脈は私という認識平面で交差している。よって、私という認識主体において、このメモをどこか一カ所に位置づけるのは極めて難しい。言い換えれば、単純なカテゴライズは困難である。

単純なカテゴライズ?

「知的生産の技術」フォルダ
「情報社会論」フォルダ
「情報摂取の作法」フォルダ

のどこかに入れる、ということだ。このフォルダは、ノートブックでも大項目でもなんでもいい。情報の所属先である。

こうした場合、デジタル情報のコピー容易性を用いて、すべてのフォルダに突っ込んでしまう、という手段がある。それはそれで一手ではあろう。ただし、手間がかかる。この例では三つで済んでいるが、それ以上多くなると手間的な破綻をきたす可能性は高い。

では、どうするか。むろん、リンクである。

一つのファイルを作り、それぞれのフォルダにそのファイルへのリンクを貼っておけば、この問題は解決する。というか、それ以外に解決する方法はない。

ファイルにタグを付けるという方法もあるが、それは抽象してみれば基本的には同じことだ。フォルダにコピーとタグ付けは、情報の表出系に違いはあるけれども、あるコンテキストに情報を結びつける、という働きは同一で、リンクを使えばそれが簡単に複数に接続でき、タグはそもそも最初からそうできているというに過ぎない。

よって、Evernoteであれば、一つのノートに、「知的生産の技術」「情報社会論」「情報摂取の作法」タグを付ければいいだろう。WorkFlowyでも、項目に#(あるいは@)でタグを付けられる。そうすれば、情報のマルチコンテキストが保存できる。

ここまでは完璧である。理論的には。

たとえば上記をScrapboxで保存したとする。すると、次のようなページになる。

下の方に三つのハッシュタグがついているが、それが先ほどまで述べていたタグと同種の働きをする。その部分だけをみれば同一だが、Scrapboxでは文章中にあるリンクも、ハッシュタグと同じ働きをする(というか違いは見た目だけである)。つまり、情報に載せられるメタ情報の数が多い。

「いや、Evernoteだって、〈インターネット〉とか〈『ウェブ進化論』〉とか〈リベラルアーツ〉とかのタグをつければいいじゃん」

まさにそのとおりである。理論的には。

問題はEvernoteで上記のようなノートを書いたあとに、そんなタグ付けを果たしてウキウキ気分で行うのか、という点だ。三つのハッシュタグ程度ならやるだろう。特別な記号を接頭辞にしておけば、入力補完も働くのでそれほど手間はかからない。しかし、文中にあるような一般語句までタグ付けするのは面倒ではないだろうか。少なくとも私にはひどく面倒に思える。

もちろん、やってやれないことはないだろう。しかし、それを500ページとか1000ページとかの単位でやりたいだろうか。言い換えれば、あなたの知的生産人生でそのような営為を積み重ねて行きたいだろうか。私はノーである。ある種の手間が消せないことは許容しても、その手間はできるだけ小さくあって欲しい。

なにせ知的生産人生は長いのだ。

まとめ

もちろん、これはメモの管理の段階であり、これを素材にしていかにアウトプットを生み出していくのかについてはまた別途の検討が必要だろう。

しかし、少なくとも上記のようにしておけば、「知的生産の技術」について書くときでも、「情報社会論」について書くときでも、「情報摂取の作法」について書くときでも、このメモは準備が整っている。必要とあれば参照され、そうでなければスルーされる。でもってそれは、〈インターネット〉や〈リベラルアーツ〉のような一般的な語句においても同様である。

これまでたくさんのメモツールを使ってきたが、マルチコンテキストをそのままに保存しやすいという点では、Scrapboxはずば抜けている。重要なのは、手間が極めて小さいこと、リンクもまたハッシュタグであること(あるいはその逆)という点だ。

たいした機能ではないように思われるかもしれないが、どれだけ高機能であっても、手間がかかるものは見事に淘汰されていく。人間はそんなに勤勉ではないのである。

おそらくこの話は、地味に聞こえるだろう。少し拡張されたハッシュタグ、若干かからない手間。そういう印象があるように思う。たぶん、ライフハック系のサイトで「○○はマジ神!」みたいに評されることはないだろう。しかし、そういう地味な使い心地が長い間使い続けてくツールでは重要である、ということを、これまでの情報整理ツールで確認してきたのではなかっただろうか。次々にアップデートされるけれども、まったく使い勝手が改善されないツールにしょんぼりしてきたのは僕たちだったのではないか。

新機能も確かに大切である。しかし、それ以上に日常の大半を占める動作が簡単かどうかが一番大切なのである、というのがしがない私の最近の感想である。

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