断片からの創造

カードサイズでガシガシ書いていく。では、デジタルは?

企画案の構成作りが頓挫しかかっていたので、デジタルツールからいったん離れてアナログでいくことにした。「詰まったらやり方を変える」というのが、倉下流知的生産術の心得その4である。

ふらふらとダイソーに行き、目についた付箋を購入した。

100枚入りで108円。サイズはiPhoneSEよりも少し大きい。つまり、普通の付箋よりはかなりBig。当初はこれを小さな付箋の母艦(グルーピングのくくり)にしようかと思ったのだが、小さな付箋にチマチマ書いていたら、突然「もう、こっちにどんどん書けばいいんじゃね?」と閃いたので、実際にそうしてみた。

捗った。実に捗った。「そうか、今のMy脳が求めていたのはこの作業だったのだな」と納得しながら、現状はせっせことこの付箋に項目を書き出しているところである。

さて、こうした付箋に書き出すことの効用とはなんだろうか。別に付箋に限ることはない。情報カードだって同じだろう。ある限定されたサイズの紙に書き出すのは、一体何が良いのだろうか。

まず思いつくのは有限化である。Twitterが捗るのと同じだ。小さなサイズでいいと脳が納得するから、身構えずに書き出せる。もっと小さな付箋ならばさらに捗りそうだが、頭に浮かんでいるのが「文章」だと少々収めにくい。今の私の脳内モードは、「どんな項目が含まれるのか」を確認するものではなく、「どう語るのか」を確認するものなので、通常の付箋よりは大きいサイズがいいのだろう。

もう一つ、別の形の有限化もある。

上の写真をご覧頂くとわかるが、付箋なりカードなりに書き出したものは、目に入る。少し前に書いたものを簡単に想起することができる。これはアイデア出しには最適な環境であろう。しかし、その数は限定的である。なんといっても物理空間だし、この付箋は台紙の上に貼るようにしているから、スペースが限られているために多重に貼り重ねられている。言い換えれば、直近のものしか目に入らない。

パソコンのアプリケーションで「最近利用したファイル」という項目に、これまでのパソコン使用歴の全ファイル名が表示されたらそうとうにうっとうしいと思うが、こうした情報の扱いでも似たようなことは言えるかもしれない。目に入るけれども、その量が限定されているのが良いのだ。もちろん、ペリペリめくっていけば過去のふせんも目に入れることができる。

この点は、アウトライナーの強力さでもあろう。下位項目が開閉できることにより、自分の目に入れるものを制御することができる。マインドマップは項目の開閉ができないものがあるので、そこがネックになることが多い。超絶大きな項目数を扱うなら、個人的にはアウトライナーの方がよい気がする。特に完成物が階層構造を持つものならなおさらだ。

だったら、なぜアウトライナーで捗らなかったのかと考えてみると、それは「書き込み時のフォーカスであろう」という推測が浮かび上がってくる。つまり、付箋であれば書くときは、その付箋しか目に入らない。言い換えれば、「今考えている項目」だけにフォーカスできる。しかし、アウトライナーで、新項目を作るたびに、いちいちズームはしないだろう。さすがに面倒がすぎる。

その点、付箋は自然とそういう形になる。「書くときは単一の対象にフォーカス。書き終えたら、それが他の要素と混ざる」その繰り返しである。でもって、書いているときでも、意図的にそうしようと思えばこれまで書いた付箋が目に入る。その刺激を得てさらに書き込みが進むこともあるだろう。

ついでに言えば、付箋は一枚一枚取り上げて、その内容を読むこともできる。デジタル的に言えば、ズームした状態で、次の項目に移動できる、ということだ。これが構成案を考えたりするときに役立つ。まだ「流れ」を整える段階でなく、一つひとつの項目を評価したい段階なので、個別でのビューが結構役立つのだ。

その点から考えると、Keynote的なアプリなら抜群に相性が良いように思えるのだが、実際やってみると、項目内容をquicklyに書き出していくときに操作感で詰まってしまう。+ボタンを押し、テンプレートを選び、入力したいテキストボックスをタップする。この操作が煩わしい。とは言え、どこか別の場所にサクサク項目を書き出して、それを変換してカード的に表示してくれるならば、個別のカードビューは実に最適なものであることは間違いない。

あるいは、そういうアプリを自作してしまってもいいのかもしれない。ここまで検討してきた課題から要件を定義すれば、以下のようになるだろう。

  • 次々に(サクサクと)項目を入力していける
  • 項目の入力時はそれだけにフォーカスできる
  • が、気が向けばそれまでに書いたものを参照できる
  • 書き終えたものは他のものと混ざる
  • それらはすべて残っているが、すべて目に入る必要はない
  • 順番を入れ換えられると望ましいが必須かどうかはわからない
  • 書き終えたものを単一表示できる(入力時と同じモードであってもいいし違うモードであってもいい)
  • 単一表示時に「次の項目、前の項目」という操作ができる

ここまできて、Scrivenerのコルクボードモードが実に良い線をついていることに気がつく。だいたいの要件を満たすのだ。しかし、一枚のカードを取り上げての拡大表示ができない。

カードをエディタで開くことはできるが、カードに書かれているのはsynopsisであり、エディタは本文の編集なので、少し用途的なズレもある。その点だけが惜しい。それ以外のカードの扱いは、抜群である。

というわけで、今のところ私が望む「デジタルカードアプリ」は手元にはない。まあなくたって、人生に著しい支障が生じるわけではないが、少し探究してみたい気持ちもある。きっと、便利だと思うのだけれども。

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