Scrapboxは宇宙船

あなたは宇宙船に乗って、宇宙を旅することになりました。

その宇宙船は、めちゃくちゃデカイのですが、マッドなサイエンティストの発想──「重力に縛られているから、人間は真なるニュータイプに進化できないのだ」──によって、重力発生装置が装備されていません。

だだっぴろい空間に、ぽつんと自分ひとりが浮かんでいる状況です。

あなたの宇宙服は、22世紀のネコ型ロボットと同種のテクノロジーでできているので、必要なものを思い浮かべて両手をバシっと合わせると、必要なものが生成できます(重力は除く)。

で、使い終わったら、それをそのままその辺に漂わせておきます。なにせ重力がないので、どこかにものを「置く」ことはできません。ふわふわと漂うだけです。

で、どんどんものを生成していくと、最初に作ったものは自分から遠く離れていき、最近作ったものだけが自分の周りに漂うことになります。

こうなると、昔作ったものを使いたくなったときにあちこち漂わなければならないのですが、さすがにそこはマッドなサイエンティストです。心の中でその物の名前を念じれば、量子場に干渉して、その物を自分の方に引きつけることが可能なのです。

しかも、単にその物単体を引きつけるだけでなく、「これって、一緒に使うかもね」みたいなものも一緒に引きつけられます。鉛筆を引きつけたら、ノートと消しゴムを一緒に引きつける、みたいな。

ただ、どれとどれが「一緒」なのかはわからないので、ヒントとなるキーワードの設定が必要です。たとえば、鉛筆とノートと消しゴムについては、「書く」というキーワードを念じておけば、次に「書く」ことについて考えたら、それらが一緒くたに引きつけられてきます。

どの物にどんなキーワードを設定しておいたかはとても覚えておけるものではないので、ときどき思いもよらぬ物が引きつけられてきますが、別に問題はありません。「置き場所」がないので、その場所に「戻す」ような手間もないからです。そして、もしかしたらそこから新しい物の使い方が見えてくることだってありえます。

そのような空間装置では、どこに何を「置くか」ということを考える必要はまったくありません。ただ、物をそこに漂わせておけばいいのです。そして後から使いやすいように、自分に馴染みのある名前やキーワードさえ設定しておけば、「必要」に合わせてその物を引っ張ってこれます。

棚の何段目に何を置くとか、ペン立てには10本しか入らないからよく使うものだけを厳選しようとか、一番上のスペースは手が届かないからあまり使わないものを置いておこうとか、その他一切の「置き場所」的制約から解放されます。

なにせそこには重力がありません。そもそも地球における整理整頓の概念が通じないのです。

おそらくそのような環境は非常に落ち着かないでしょうし、なんなら疑似重力発生装置みたいなものを作って、「置き場所」を設定しようとするかもしれません。でもまあ、それは無理があります。やってもいいでしょうが、そうなるとだだっ広い宇宙船のごく一部しか利用できないことになります。

だったら、もういっそ開き直って、マッドサイエンティストの思惑にのっかってやろうじゃありませんか。

既存の考え方(整理についての常識)をいったん放り投げて、物をただ漂わせておく。

整頓できないこと、全体が把握できないこと、どこになにが「置いてあるか」がわからないこと。それを受け入れるのです。

それくらいラディカルな変化が、Scrapboxビフォーアフターにはあります。

一つ言えることは、既存のツールと同じように使おうとすれば、既存のツールと同じような結果にしかなりません。わりと自明なことです。だったら、それは既存のツールでやればいい話ですね。

Scrapboxを使うときは、無重力体験に身を委ねるのが面白いです。これはもう、グレイトにマジな話です。そうすると、既存のツールを使う上で、意識しなければならなかったこと(あるいは無意識に意識していたこと)の多くから解放されます。

情報のリゾームは、そのような空間にて広がっていくのだろうと、私は推測しています。

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