6-エッセイ

リソースは有限

時間は限られている。
能力は限られている。
資金は限られている。

何もかもが制約の中にある。

パソコンは年々高性能になっている。CPUもメモリも盛りだくさんだ。しかし、それを使うアプリケーションも高機能になり、結局たくさんのCPUやメモリを要求する。余裕があれば、ついでに複数のアプリケーションを動かしてしまう人間の欲求もある。結局、快適さはたいして変わらない。

「もっと高機能を、もっといろいろなことを、もっともっと……」

リソースは有限なのに、欲望には限りがない。何もかもを満たそうと思えば、結局すべてが中途半端になってしまう。

開発のためのリソースだって有限だ。「こういう機能が欲しい」と分かったところで、呪文を唱えたら即座にそれが実装されるわけではない。人手がいる、お金がいる。

あれもこれも欲しいという声に流されると、結局すべてが中途半端になってしまう。

リソースは有限なのだから、向かうべき点を見定めなければならない。

コア・コンピタンス、と言うのは簡単だ。しかし、それを見定めるのは簡単ではないし、それを守り通すのはもっと難しい。

いつしかコア・コンピタンスは「当たり前」になり、それ以上の何かが要求されるようになる。限りのない要求が。

Scrapboxを触ってみて痛感したのは、ある種の知的作業を行う上では、速度や快適さがもっとも重要な要素だ、ということだ。

いや、本当は、ずっとずっと前から、私はそれを知っていたのかもしれない。アナログツールの使い心地の良さはまさにそこにあるからだ。文字を書いた次の瞬間に、図を描き入れられる。切り替えるボタンなど、どこにもない。「思ったら」その通りのことができるのだ。

・ある種の便利さが手に入る代わりに、その速度が5%でも失われるのと
・ある種の便利さは永遠に手に入らないが、その速度がずっと維持されるのと

どちらを選ぶだろうか。この選択肢が提示されたなら、きっと後者を選ぶだろう。しかし、私たちはこのトレードオフがうまく見えない。何もかもが、うまく満たされるのだと思ってしまう。それがテクノロジーという魔法の役割だと感じてしまう。

しかし、リソースは有限なのだ。

閉架と開架の使い勝手は違う。それは当然だ。

で、なぜ二つの書架があるのかと言えば、リソースをうまく使うためである。

だから、二つの(あるいはそれ以上の)システムがあっていいし、あった方がいいのだ。
※この辺は『アルゴリズム思考術』が参考になるかもしれない。

人間の要求を適度に満たすために、閉架と開架の中途半端なものを作ってしまうくらいなら、システムは分かれていていい。あとは、それをつなぐうまい仕組みがあれば十分だ。私たちが今考えなければならないのは、そのブリッジングではないだろうか。

少なくとも、「開架の方が、閉架よりも優れている」みたいな議論は無用であろう。というかそもそも無意味ではないか。どの基準において、どんな効用において「優れている」と言えるのか。物差しが変わったら、評価もまた変わるのではないか。そういう落ちついた話が必要だろう。

ともかくリソースは有限なのだ。人間の認知も、とりうる行動も限られている。それは線のどちら側にいても同じことだ。

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