見返しの動機づけ

一体何が違うのだろうか。

上がEvenroteの「展開したカードビュー」で、下がScrapboxだ。見た目的には一緒である。というか、私以外の人間にしてみれば、この二つは同じなのかもしれない。しかし、私の中では違う。

その違いはどこからくるのか。

それはそれとして、Evernoteはやっぱり素晴らしい。2008年に保存したメモが即座に取り出せる。今私はカフェでこの文章を書いているが、綴じノートならまったく不可能なことだった(まず家に帰られなければいけない)。で、2008年から10年分のメモがEvernoteには蓄積されている。これをやってのけたEvernoteは、知的生産的なイノベーションではあっただろう。

だから、いろいろな形で、私はここにメモを放り込んだ。それができるだけのシステムもあった。

新しく書き留めたデジタルだけでなく、それまでに書いていたアナログのものも放り込んだ。ごくごく単純に、こんなことができるだけでも素晴らしかった。やはりEvernoteは偉大なツールである。

しかし、この10年でこれらのノートがどれだけ活躍したかというと、あまり胸は張れないし、そのことを思うと気分も晴れなくなってくる。

時間が経ったから、アイデアが古くなった?

そういうわけでもない。たしかに、一行だけ書き留めたメモはもはやさっぱりであるが、きちんと文章にしてあるメモは、ノートを開いて読んでみると、今でも何かに役立ちそうな気がする。アイデア的にはアクティブな状態だと言える。

ご覧の通り、「コンテキスト」欄には、関連するノートまで表示されている。それを辿って、アイデアの網の目を進んでいくこともできる。そんなところも、Scrapboxと似ているではないか。

でも、やはり違うのだ。

先ほどこう書いた。

ノートを開いて読んでみると、今でも何かに役立ちそうな気がする。

逆に言えば、「ノートを開いて読んでみないと」ダメなのだ。そして、そこが大きな問題だった。

4000以上もあるアイデアノートは、あまり読みたい意欲が湧いてこない。理由はいくつかある。中でも数が多すぎるのと、文章が読む形に整えられていない点が大きい。それはややもすれば苦行チックである。

だから、私は「パラパラと閲覧できる」UIを求めた。アナログのノートのように閲覧できれば、見返しが進むだろうと思っていた。しかし、それは誤った認識による、誤った推測であっただろう。「読みたい気持ち」が湧いてこないものを、「読みやすいUI」で埋めたとしても、実践されるかは非常に怪しい。問題は、そちら側ではないのだ。

我々メモ魔にとって、メモを書く気持ちは切実である。まったく冗談ではなく、「書こう」という意欲は非常に高いのだ。

「メモを書きたい」→

という風に、頭の中に何かを思いついたときには、それをメモする動機付けが生まれている。

しかし、である。メモを見返すことは、メモ魔にとってそれほど切実性はない。

そう。メモ魔にとって、簡単にメモを取れることは非常に重要なのであるが、ぶっちゃけて言えば、メモ魔は多少面倒でも頑張ってメモを書こうとはする。自分で工夫すらする。しかし、メモを見返すことは、そのようには処理されない。そこに動機づけは生まれない。

それが一番の問題なのである。あるいは、クリアすべき課題と言ってもいい。

今でも、Evernoteに蓄積したメモは有用である。それは間違いない。

しかし、それを見返すことがあまりナッジされていない。自主的な努力によって見返すことが、言い換えれば動機づけがあからじめ存在することが前提のシステムになっている。

唯一、コンテキストだけがその制約外にある。正直、この部分の機能強化が過去の情報を活かすためのカギだと思う。表示されるノートが、10とか20とか、最低でもそれくらい増えたり、あるいはもっと面白いギミックが含まれれば、まだまだEvernoteが活用される余地はあると思う。

逆に言うと、今とまったく変わらない状態であれば、Scrapboxの方がはるかに過去のページを開いて読もう、という動機付けは生まれやすい。何しろ、「今そのときに自分が書きたいと思ったキーワードを含む、過去に自分が書いたページ」が提案されるのだ。

つまり、動機づけが高いまさにその瞬間に、「ほら、これ、どうですか?」と表示されるのである。これはもうクリックするだろう。

Scrapboxは、情報を貯めていくためのツールではない。

もちろん時間が経てば貯まっていくが、それは結果的なものである。Scrapboxにページが1000あろうが、4000あろうが、実質的にそれは関係ない。少なくとも、その全体をスクロールして見て回る、というようなことはほとんどしないはずである。

それよりも、「今書きたいこと」が大切なのだ。それが過去のページを釣り上げる。釣られて私もそのページを覗きたくなる。動機づけが生じている。

もちろん、何のリンクもはらずに情報を保存したり、ただただ機械的に情報を放り込んでいく使い方なら、上記のようなことは生じない(そういう使い方だってScrapboxの使い方とは言える)。その意味で、使い方は、結構重要なのである。

なんでもいい、というのと、等しい成果が保証される、というのは別の話なのだ。

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