物書き生活と道具箱

「ほぼ日手帳」のすごさ~アソシエ11月3日号を読んで~

普段は買わないのだが表紙の「手帳活用術」という特集の見出しに惹かれて日経ビジネスアソシエ11月3日号を購入。

特集のフルタイトルは「大発掘!読者のスゴ技、達人の最新テク 手帳活用術2010」。
日経ビジネスアソシエ 2009年11月3日号 (2009年10月20日発売)

いかにも10月後半の企画だが、”糸井重里”の名前を見た段階で中身もあまり確認せず購入。

企画は、簡単な手帳の解説から始まって著名な方の手帳のTipsを紹介していく。以前書評で紹介した「『結果を出す人』はノートに何を書いているのか」の著者である美崎栄一郎さんの手帳術も紹介されていた。
その他読者の手帳の使い方も結構数多く紹介されている。

この辺は、手帳に関して情報を収集している人にとってはそれほど珍しい情報はないだろう。
しかし、これから手帳を使い始める人にとってはいろいろな視点を得られると思うので一読の価値はあるだろう。

一番面白かったのが「手帳道場」という企画。これは名前の有名人手帳の開発者が読者に直接指導する企画である。
おなじみ「ほぼ日手帳」の糸井重里氏、「アクションプランナー」の佐々木かをりさん、「夢手帳☆熊谷式」の熊谷正寿氏の3人が登場している。もちろんほぼ日手帳ユーザーの私のお目当ては糸井塾長である。

糸井塾長はこう語っている

「『ほぼ日手帳』を使っているから夢がかなうとか、時間管理の達人になれるとかはないですよ。僕らは『楽しく使ってほしい』と思って作っているだけだから。だから『こう使いなさい』とか言えないし、ノウハウもない。」

非常に印象的なメッセージである。私は二つの意味で強い衝撃を覚えた。
まず、「手帳はただ効率的に生きるためだけに使うんじゃないよな」という私自身の思いが確信に変わったこと。これは一手帳ユーザーとしての思い。

もう一つは、他のビジネス手帳と徹底的な差別化を行うことでほぼ日手帳でしか満足できない、というユーザー層をきっちりゲットしているであろうそのマーケティングについてだ。

もちろん、糸井氏がそれを初めから明確に意識してこの手帳を作ったのかは分からない。しかし私を含めて納得してほぼ日手帳を使っている人はなかなか他の手帳に移行することはないと思う。この手帳にしか無いものがしっかりと打ち出され、提供されているからだ。

これは企業で新しい商品を開発していく上でも、個人としてブランドを立ち上げたいと思っている人にとっても重要なポイントになるのではないだろうか。

世の本屋にはビジネス書が多く並べられ「効率」「能率アップ」「デジタルとの融合」「○○ハック」・・・・・・などのキーワードがまさに踊り回っている。
そんな中で先の糸井氏のような言葉をはき出すのは実はなかなか難しいことだと思う。いくら他人に迎合しない方が新しいサービスを打ち出せると頭では理解していても、実際責任ある行動を取る段階で個人としてはそのような決断はなしにくい。

そしてそういった決断がなしにくければなしにくいほど、新たなる市場はそこに眠っているのことになる。決断しにくいのはあなただけではないのだから。その決断を行えば、それを待っていたユーザーはしっかりと受け入れてくれるだろう。

もちろん世の中には効率の良い手帳術に徹底的にこだわる人もいるだろう。ほぼ日手帳は太すぎる、カズンは大きすぎるという人も間違いなくいる。それはある面では正しい。ただそれを突き詰めていくと、手帳なんか必要なくてもiPhoneで十分ということになってしまう。単純に情報を扱う土俵でアナログの手帳とiPhoneが戦っても勝負の結果は目に見えている。

だったら初めから同じ土俵に乗らない、というのがほぼ日手帳のコンセプトになっていると思う。
※欄外にコラムあり

そういった思い切ったコンセプトの打ち出しと、徹底したこだわりがこの「ほぼ日」ブランドを支えているのだろう。そういったブランド作りはマーケティングの教科書を読んでいるだけでは一生かかってもできないのではないかと思う。発想、決断、実行、改良という段階を細かく丁寧に繰り返していく中で築かれていくものなのだ。

そういう手帳が自分の身近な所にある、というのは非常にうれしいことだと一手帳ファンとしても思う。そして持っているだけで楽しくなれる手帳を作れるというのはこれまたすごいことだと思う。私もなかなかの文具好きであるが持っているだけでワクワクした気分になる「文房具」というのはなかなかない。
(文具以外なら私の中では「MacBook」「iPod」「iPhone」がそれに当たるが)

まとめ

人生は能率や効率だけで置き換えられるものばかりではない。確かに仕事においては効率性は重要だ。しかし仕事だけが人生ではない。人生=仕事という人生に納得し、楽しめるなら話は別だがそれ以外のいろいろな要素があってこその人一人の人生といるだろう。

ほぼ日手帳は非効率かもしれない、しかし、非生産的でないことだけは長年ユーザーの私が断言できると思う。
生産性というのは何でもただ作り出せば上がる、というものではない。そこには自分自身にとっての価値あること、という基準がついて回る。それを知らずに生産性を語ることなどできやしないのだから。

参考文献・サイト
 ほぼ日手帳2010

 

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コラム

 一つのブログ記事の中にコラムを書くというのも少々変わった試みだがまあ物は試しである。
 さて、私が自分の感覚で面白いなと思ったことがほぼ日手帳に関してある。
 それは、数年「ほぼ日手帳」オリジナルサイズでスケジュール管理などをやっていたあと、iPhoneを導入した時のことだ。
 その便利さゆえに、iPhone以前の生活がうまく思い出せない、というくらい劇的に情報生活が変わってしまったあと、スケジュール管理に「ほぼ日手帳」が必要なくなったことに気がついた。
 そうして、その次に私が下した決断は、ほぼ日手帳に別れを告げること、ではなくより大きく(より高価な)ほぼ日手帳カズンを買うことだった。
 スケジュール管理以外に使っていた部分を、来年からは拡張して使うことに決めた。つまり日記的に使っていた部分をより広く使うために持ち運びの重要要素である手帳のサイズを無視して、広く欠けるスペースを有するカズンに移行することに決めたわけだ。
 不必要な機能が出てきたのに結果としてより高価なものを買っているというこの構図は、普通のビジネス手帳ではまず起こりえなかったと思う。いかにこの手帳に私が惹かれているかをしみじみと思い出させてくれるお話である。

5件のコメント

  1. 興味深く読ませていただきました。

    今回のアソシエは、
    手帳好きの方から非常に高評価のようですね。
    私も本を買うよりいいのでは?と思ったくらいです。

    糸井氏の話の中で、
    オンライン書店とリアル書店を例に挙げた話が、
    ほぼ日のよさをわかりやすく理解できました。

  2. ありがとうございます。

    今回の特集はこれから手帳を使い始める人には非常に参考になる情報が詰め込まれていたと思います。

    個人的にはほぼ日手帳ぞっこんですが、いろいろな手帳を眺めるのも楽しいものです。

  3. 「手帳はただ効率的に生きるためだけに使うんじゃないよな」

    これは、私も数年前に、ほぼ日手帳を見て思ったこと。で・・その姿勢で、続けてます。

    ほぼ日の一ページに書ききれなく・・貼りきれなくなったので、ノートでやってますが・・同じですね。楽しんでやってます。

  4. コメントありがとうございます。

    手帳については日常使う頻度が高いだけ、思い入れも強くなってきます。ただ流れる「情報」を管理していくだけだと、やはり何かつまらなさを感じてしまう人が結構多いのではないかな、思っております。

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