ノートには表紙にも情報が書ける。別段ライフハックでもなんでもない。皆がやっていることだろう。
たいていはそのノートのタイトルだが、中身についての概要や使用していた期間が書かれることもある。つまり、ノートそのものについての情報をノートに記すことができる。
一方、デジタルノートはどうだろうか?
ああ、なんということだろう。デジタルノートには表紙に書き込むことができない。そもそも表紙というスペースがない。手書き系アプリは別として、普通のデジタルノートにはアナログノートのような表紙というコンセプトが欠落している。
つまり、そのノート(Evernoteではノートブック)そのものについての情報が記載できない。あたかも作ったあなたなら、このノートの役割は自明でしょ、と言わんばかりだ。ノートのdescription欄もなければ、そのノートに(Evernoteではノートブックに)タグ付けすることもできない。
iTunesのプレイリスト
iTunesではプレイリストが簡単に作れる。空っぽのプレイリストを作成しておいて、そこにドラッグでどんどん曲を放り込んでいけばいい。
しかし、このプレイリストにも概要を書き込むスペースはない。そのリストがなんだったのかは、全身全霊を込めてタイトルで表しておかなければいけない。
空っぽのメタ情報
情報はいい。もう、情報はたっぷり扱えるようになった。パソコン一台で、いっそスマートフォン一台でさまざまな情報にアクセスできる。
では、メタ情報はどうだろうか。メタ情報は、実はまだそれほど掘り下げられていないのではないか。
Evernoteでは、ノートにさまざまなタグ付けを行える。すばらしいことだ。しかし、ノートブックはせいぜいスタックに放り込むくらいである。iTunesでも、一つひとつの曲には多様なメタ情報が与えられている。しかし、それを束ねるプレイリストのメタ情報はほとんど空っぽだ。まるで、ユーザーが作った情報の束などには、ほとんど意味がないと言わんばかりに。
はたしてそれは本当なのだろうか。与えられる情報だけが重要で、自ら付与する情報はそれほど重要ではないのだろうか。
さいごに
当たり前だが、別にEvernoteのノートブックに表紙機能をつけてほしい、という要望があるわけではない。それでますます重くなったら本末転倒である。実際、概要を記述したければ、それを書いたノートを作り、放り込んでおくだけでいい。ただ、それを上部に固定表示できないので、見失う可能性がある、という点がネックなだけだ。
話が逸れた。
個々のアプリケーションの機能の話ではなく、情報の階段が上がりにくい環境ができあがりつつ、いやそれが当たり前にみたいになっているのではないかと危惧しているのだ。
どのようなものでも、まずは個別の情報の扱いから始まる。それは当然だ。次にそうした個々の情報を束ねることになる。それもまた当然の流れだろう。しかし、今はその段階でストップしているのではないか。それ以上の階層に上がりにくくなっているのではないか。そんな風に感じた次第である。
アウトライナーはまさに、いくらでも自由に階層を上がっていける装置だし、Scrapboxはむしろ階層を作らずに、言い換えれば情報とメタ情報を区分せずにユーザーが管理できるようになっている。どちらも面白いアプローチである。
個人的な印象だが、21世紀の知的生産ツールは、まだまだ探求の余地があると思う。アナログのメタファーに引きづられる必要は一切ないが、かといってそれらが私たちに与えていた情報を無視するのもどこか違うだろう。
さすがに今からGoogleの優位がひっくり返ることは考えにくいが、個人が使う知的生産ツールはまだまだ新参者が天下を取る可能性はあると思う。開発者の人たちには頑張ってほしいと思う。
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