1-情報ツール考察

情報ツールの5要素

前回の記事で、いきなり「情報作業ツール」という言葉を持ち出した。私の造語である。

今回は、この言葉について考える。

はじめに情報ツールありき

まず、情報を扱うツールの総体として「情報ツール」がある。これはすべての概念の上位にあたるものだ。情報作業ツールは、その下に位置づけられる。

では、他には何があるか。たとえば、以下のようなエレメントが考えられるだろう。

ただしこれは、実存する一つのツールに一つだけ対応するエレメントではない。むしろ、そのツールが持つ機能の一つの側面、と言った方がいいだろう。よって、一つのツールに、複数のエレメントが対応することはよくある。

情報保存ツール

情報を保存しておくためのツールだ。現代の電子的ツールなら、ほぼこの性質を備えていると言っていい。ただし、ネットサービスの一部では、時間が経てば消えてしまうものや、コンテンツが追加されると古いコンテンツが見えなくなる、というものもあるので、そうしたものは対象から外れる。

とりあえず、知的作業を行っていく上で、最低限必要なエレメントである。

それぞれ見ていこう。

情報検索ツール

情報を探しだし、取り出すためのツールだ。これまた、現代の電子的ツールなら、備えている性質である。つまり、たいていは「保存できて、検索できる」ようにはなっている。

ただし、Googleのように、「自分が保存したわけではないけども、検索できる」ツールというのはある。それを考慮に入れるならば、他のインプットツールも、このカテゴリに入ってくるかもしれない。

情報整理ツール

情報を「整理」するためのツールである。ここでややこしいのは、「整理」という言葉の多義性である。『Scrapbox情報整理術』でも書いたが、整理は、「あとで取り出せるように置き方に一定のことわりを持たせておく」という意味合いもあるし、周期表のように一定のことわりのもとで情報を配置することで、一つ上の視点から情報を眺められるようにするという意味合いもある。

Scrapbox情報整理術
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ここでは、おもに後者の意味合いで「整理」という言葉を割り当てている(前者は、検索に相当するだろう)。よって、この整理は分析と言い換えてもいい。データベース、あるいはマインドマップなどもこのエレメントを持つだろう。

情報作業ツール

情報を使って作業をするためのツールだ。執筆作業が一番わかりやすいが、それだけではない。メモ書き、アウトラインの作成なども入ってくる。

「知的作用」を与えるためのツールという言い方もできるだろう。

情報発信ツール

情報を他の誰かに伝えるためのツールだ。現代ではブログやソーシャルメディアが一般的だが、広い視点で捉えれば、本もそれに相当するだろう。

ツールの多エレメント性

もう一度書くが、これは存在しているツールを「分類」するためのものではない。そこにある機能的性質をはっきりさせるためのエレメントである。

一つのツールは複数のエレメントを持つし、また、ツール同士の相互作用によって、新しい役割が付与されることもある。

たとえば、「ブログ」は、情報発信ツールではあるが、「Google」の検索結果に取り込まれることによって、情報検索ツールの一部にもなるし、なにより、自分の「情報保存ツール」になる。そ

のブログ自身に検索機能がついていないとしても、Google経由で検索できる、ということが起こりうるわけだ。

開発と用途の乖離

で、この「一つのツールに複数のエレメントが宿っている」、というのが情報ツールについてのややこしさを生み出してしまう。

たとえば、「情報保存」については、それほど多様性はない。「できるだけ一カ所しておいて、後で見つけ出せるようにしておきましょう」で事足りる。前回の話を引き継げば、ここにプラグイン・システムは必要ない。柔軟な「後で見つけ出せるようシステム」(≒検索軸)を構築できれば、それで十分だろう。

しかし、「情報作業」については、そうではない。情報保存ようなある種の法則を定式化することは、ほとんど無理に近い。なぜなら考え方は──姿勢及びメソッドの両方の意味を含ませて使っている──個々人で違うからだ。いや、こう言い換えよう。個々人で違う何かを情報に与えることが、「知的作業」だからだ。でなければ、知的生産を行う意味などないではないか。

知的生産というのは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら──情報──を、ひとにわかるかたちで提出することなのだ。

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対象をAを見て、Bという言説がすでに存在しているなら、そのBを自分の知的作業で生み出してもあまり意味がない。違う何かを生み出してこそ、それをやる意義のランプが点灯する。

あるいは、知的作業というのをもっと精緻に捉えて、「頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがらを生み出すこと」と「一定の関数で、情報を処理していくこと」に分けてもいいかもしれない。前者が発想で、後者が分析、というわけだ。

で、後者に関してはもしかしたら定式化は可能なのかもしれない。しかし、前者は無理である。発想を生み出しやすい環境は想定できるが、その道筋を統一規格でまとめることは不可能だろう。

情報ツール系に向けて

ここで問題が生じる。開発側がツールの「情報保存」エレメントに重点を置いているのに、ユーザーが「情報作業」エレメントを求めると、不幸なすれ違いが生まれるのだ。

いくら一つのツールに複数のエレメントが宿るとは言え、機能としては別の軸である。一つの方向を伸ばせば、どうしても他の方向に不満や問題が生まれてしまう。
※そう考えると脳はそうとう高度なことをやってのけている。

だから切り分けることが肝要だろう。一つの情報ツールですべてをこなそうとせず、ツール連携のゆるやかなネットワークで、一つの「系」を想定するのがよいと思う。

当然、一つのツールは複数のエレメントを持つので、その「系」には重複した機能が生じることになるが、その辺は役割分担を考えるか、あるいは冗長性として捉えることもできるだろう。