先日の記事で、ノートにタグづけしてアイデアに関連性を持たせるようにしていることを紹介しました。
では、Evernoteの以外のツールならどうなるでしょうか。たとえば、WorkFlowyやScrapboxなら?
WorkFlowy
おそらく、以下のような項目が並ぶことでしょう。
実際は、着想というのは非連続的に思いつくので、アウトライン各地に散らばっている項目を近くに寄せて、そういう集合を作ることになろうかと思います。
で、それぞれの項目について掘り下げるのが次の一手です。
階層をあがる
次に、これらは一体何なのかを考えるステップがありえます。階層を一つ上にあがるのです。
二つの項目が「R-styleの記事を移動させる」にまとめられて、残りの二つが「R-styleの雑多さ」にまとめられました。
さらに考えてみると、「R-styleの記事を移動させる」は「R-styleの改修」という大きな項目に入れられそうです。
そうなると、アウトライン各地に散らばっていた、「R-styleの改修」に関する項目が吸い寄せられることになります。実際は、アウトライン各地を訪問し、「あっ、これはR-styleの改修系だな」と思えるものを、ここに移動してくるわけです。
で、こうして集めれば、また変化が生まれます。いくつかの項目は一つにまとめられるかもしれませんし、二つ以上の問題を一気に解決する新しいアイデアを思いつくかもしれません。ともかく、これで「R-styleの改修」に関する総覧的プロジェクトページ(プロジェクト項目)ができあがったわけです。
このページ(項目)を見ておけば、必要な情報(アイデア、タスク)はいつでも私の手中に収まります。
Scrapbox
では、Scrapboxはどうでしょうか。
おそらく次のようなページが並ぶことでしょう。
それぞれのページの中身は、たとえばこんな感じになります。
これらのページを眺めてみると、「R-styleというサイトのSEOが弱く、一部の技術的記事が他の人から読まれにくくなっている状態」に問題を感じているのだな、ということがわかります。その状況を問題だと感じていることが根源となり、上のようないろいろな思いつきがあふれ出てくるのでしょう。
一つの解法としてR-styleそのものの検索順位を上げることで、もう一つの解法としてははじめからSEOに強そうな外部サイトに記事を切り出すことです。で、それを決定するのが、「R-styleが雑多であること」に私が(あるいは読者さんが)どれだけ価値を見出すか、ということになるでしょう。
そういうことが、それぞれのページを読んでいると、ぼんやりわかってきます。
つながるアイデア、浮かび上がる関係性
で、それぞれのページの下にある関連ページには、R-styleタグ(リンク)を共有する別のページが一覧されます。
すると、最初の項目に挙げなかった「R-styleのカテゴリーを整理しよう」というページが見つかりました。数日前に作ったページのようです。
さらに、「Scrapboxのちょこちょこリファクタリングしていくあの感覚を、ブログにも持ち込めないだろうか」というページも見つかりました。問題意識がリンクしていく感覚があります。
そしてここで、私の脳内に新しい概念の光が収束していきます。「これはR-styleのリファクタリングについてのアイデアだな」。
では、そのタグ(リンク)をつけてまわりましょう。たとえば、こんな感じです。
冒頭行に「#R-styleのリファクタリング」持ってきたのは、本文中に「[R-style]」が含まれており、たいていの場合{R-style}という集合は、{R-styleのリファクタリング}という集合を内包するからです。つまり、ページ内に[R-style]が先にあると、「#R-styleのリファクタリング」の関連ページが表示されない結果になるのです。それを避けるための「先リンク置き」です。
ただし、そうしていないページもあります。
このページは、「R-styleのリファクタリング」に関連しているページですが、リファクタリングの内容に関するページではありません。むしろ、リファクタリングについて考えているときに生まれた発展的なアイデアです。だから、このページを閲覧しているときに、「R-styleのリファクタリング」だけを抽出して見たくなることはありません。R-styleの項目に吸収されていたってぜんぜん構わないわけです。だから「先リンク置き」はしません。
で、もし実際にリファクタリング作業を進めていくならば、以下ページに作業内容等を書き込んでいけばいいでしょう。
必要な情報・関連する情報は、すべて下に表示されています。
共通点と差異
ご覧のように二つのツールでは、やはりアプローチは違います。当然、得られる結果も違います。
とは言え、共通点もあります。WorkFLowyでは、項目を並べた後に「一つ上の階層」について考えたこと、Scrapboxでは、「R-style」という大きなタグ(リンク)から、「R-styleのリファクタリング」というタグ(リンク)を作ったこと。この二つは、基本的には同じような知的作業です。乱暴に言えば、共通する要素をあぶり出す抽象化となるでしょうか。
それがあることで、WorkFlowyは項目が大きく育ち、Scrapboxではページ同士の関係性がよりくっきりと浮かび上がるようになります。
しかし、二つのツールはやっぱり違います。
まず、WorkFlowyは、関連するページの要素が一望できます。もっと言えば、二つ以上の項目の詳細を視野に入れることができます。Scrapboxでは(普通のブラウザを使っている限り)、一回で視野に入るのは一つのページの中身だけです。どれだけ高速でページが表示されようとも、人間の短期記憶の弱さからいって、複数個のページの中身を同時に検討する、というのは難しいでしょう。その点は、WorkFlowyが優れています。
しかし、WorkFlowyは、半固定とは言え、情報をツリー構造下に配置します。たとえば、「R-styleの改修」と「R-styleの雑多さ」は分かれ、改修作業内容と、「R-styleの混雑問題とScrapboxの死活混在問題は似ている」という考察は別の場所に位置することになりました。もし、後者をテーマに文章を書くならば、この項目はどこかに移動されれ、また別の項目を混ざり合って大きく成長していくことになるでしょう。しかし、着想の発端となったのは、「R-styleの改修」について考えていたことでした。それが離ればなれになってしまいます。
つまり、項目の配置において関連性が提示されるWorkFlowyでは、何かしらの事情で別の処理をすることになった情報(≒位置を変えなければいけない情報)の関連性が失われてしまうわけです。ツリー構造に情報を配置しないScrapboxでは、そのようなことは起こりません。どれだけそれぞれのページを書き換えようが、作った関係性は維持され続けます。
さいごに
もちろん、Scrapboxでも、ページの中で個条書きを使えばツリー構造を表現することはできます。
逆に、WorkFlowyでも、インスタグラマーのようにタグを使いまくれば、項目の位置が移動しても関連性を保持することはできます。
だからこれはツールの話でありつつも、本質的には「ツリー構造」と「リンクネットワーク構造」の対比の話です。しかし、それぞれのツールが基本的に指向している方向性というのはあるので、半分くらいはツールの話でもあります。
では、どちらがいいのか?
God only knows.
というのは、いささか投げやりですが、それぞれに良いところがあるので、自分に合う方を確かめてください、としか今はまだ言えません。そのうち何か言えるようになるかもしれませんが。
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