物書き生活と道具箱

知的生活とは何か その5

前回は、知的生活の対話性について考えた。そして、対話には常にある種の「手間」がかかることも確認した。

ここで、ライフハックとの対比が出てくる。

ライフハックは、極論すれば「手間」を最小化するための方法論である。効率性は、ライフハックの大きな一つの指標だと言えよう。

だからこそ、知的生活とライフハックは相容れない、というわけではない。むしろそれは補完的に働く。

知的生活においては手間は重要なファクターである。だからこそ、その手間を掛けるための時間が必要となる。事務作業などは効率化して空き時間を作り、掛けたい手間を掛ける。

ファイル整理などは、自動化して勝手にやってくれるのがいいだろう。しかし、何かについて考えることをそのように処理しては知的生活とは言い難い。効率化のために対話を放棄するなど、論外である。

まず時間を掛けたい対象があり、そのための効率化がある。それがひっくり返っては、何が何だかわからない。

何もかもを効率化した先に待っているのは、「私は何もかもを知っている」という誤った全能感だろう。効率化できない対象を、あたかも存在しないかのように扱うその手つきは、危なっかしいことこの上ない。

考えてみればいい。ポスト・トゥルースの世界くらい「効率的」なものはないのだから。

総じて言えば、次の二つにまとめられるかもしれない。

・不安定さを引き受けること
・手間や面倒さを害悪だとは捉えないこと

不安定さとは、愚かさであり、変化の可能性である。手間や面倒さとは、手を伸ばすことであり、リンクをつなげることだ。

あなたの世界は、あなたの脳内で起きている。手間は、それに干渉する。

私は長々と一連のこの文章を書いてきた。「あなた」は、その文章を長々と読んできた。手間だ。手間と手間の交換だ。上の二項目のまとめだけであれば、どれだけ「効率的」だっただろうか。しかし、この一連の文章から何を受け取るかを、私は決めたくない。

私は「あなた」に向けて、この文章を書いている。

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