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『知ってるつもり 無知の科学』とScrapbox

Posted on 2019 年 1 月 30 日 by Rashita
Tag:
  • Scapbox
  • ,
  • 『Scrapbox情報整理術』
  • ,
  • 『知ってるつもり 無知の科学』

先日紹介した『知ってるつもり 無知の科学』は、読了のタイミングが違っていれば、間違いなく『Scrapbox情報整理術』の参考文献に挙げていた本である。

そのことについて少し書いてみたい。

■

『Scrapbox情報整理術』では、Scrapboxを「知のコラボレーション」ツールであると書いた。ここにはいくつかの意味が込められているのだが、ストレートに捉えればチーム内での知識の共有、ということになる。

で、『知ってるつもり 無知の科学』にはこんな記述がある。

レフ・ヴィゴツキーとマイケル・トマセロの研究から、知識のコミュニティには欠かせない要素があることを見てきた。個人には志向性を共有する能力が必要だ。他者と関心や目標を共有し、共通理解を確立する能力がなければならない。

たとえば、プロダクトを作るチームを形成したとして、そこには多様性があってしかるべきだが、少なくとも「良いプロダクトを作る」という目標は共有している必要がある。でないと、議論も知識の共有もあったものではない。よって、志向性を同じくするもの、というのは土台である。

さらに著者らはこう続ける。

もう一つの欠かせない要素は、情報の保管方法にかかわるものだ。共有知識は集団のなかで分散されている。すべてを持っている個人はいない。だから私個人が知っていることを、他の人々の知識とつなげる必要がある。

ここまでは問題ないだろう。多くの企業がそれを理解しているからこそ、情報共有のための方法が模索されている。が、重要なのはこの続きだ。

私の知識には単なる事実だけでなく、データの所在地を示す「ポインタ(位置情報)」や、後から数字や記号を入れるべき「プレースホルダ(空欄)」がたくさん含まれているはずだ。

私が「知っていること」は、事実として提出できる、つまり完全な説明を記述できるものばかりではない。「あれは○○さんが知っている」や「あれは○○を調べたらわかる」といったことも含まれる。さらに、「たぶん、△△」や「□□だと思う」などの不確かなものも含まれる。

ここで、情報の保管方法について考えてみよう。もし、そのツールが「完全な説明を記述できるもの」だけを求めていたらどうなるだろうか。そこに記述される、私が「知っていること」は、かなり少なくなってしまうだろう。知識共有の環は極めて狭まる。

「いや、そんな不完全なものを記述してどうなるんだ?」

もしかしたら、そんな疑問が出てくるかもしれない。答えは簡単だ。

「詳しいことを知っている他の人が埋めればいい」

それがチームということであり、知識を持ち寄るということである。個人の中に結晶化している(≒自発的に完全な記述が可能な)知識だけを一つの袋に入れる、というイメージではなく、お互いの欠けたものを、それぞれが補完していくようなイメージである。

自分が持っている知識でも、それがあまりに自明に感じられるならそれを記述しようという気は起きない。しかし、空欄がある記述(≒不完全な記述)を見かけたらどうか。人はそれを埋めたくなる。そうして、知識の補完が達成される。

このやりとりが行われる系の中では、「Aさんが持っている知識」「Bさんが持っている知識」というような区切りはほとんど意味がない。それぞれの知識は他の知識と相互作用しあって、強化・発展されていく。つまり、チームとしての知識として見た方が良い。

■

つい最近、Scrapboxではデザインが変わって、ページ作成者のアイコンが通常状態では表示されなくなった。

これは極めて優れたデザインである。以前の状態であれば、「Aさんが持っている知識」「Bさんが持っている知識」という区切りが意識されてしまい、他の人が「空欄」を埋めづらい空気があった。特にScrapboxに慣れていないユーザーであればそういう傾向があっただろう。自他の境界線を浸食してしまうようなタブー感がそこにはあったのだ。

今のデザインであれば、それぞれのページは「プロジェクトに属している情報」というフラットさがあるだけであり、ページの作成者は「トリガーを引いた人」くらいの位置づけになる。これであれば、自他の敷居を気にせずに、他の人も書き込みやすくなる。

それが知のコラボレーションを拡げていくのだ。

■

『知ってるつもり 無知の科学』で通底しているのは、「個人の思考」というものは抽出してそれだけを取り出せるようなものではなく、「集団の思考」に密接に関係している、という物の見方である。実際それはその通りだろう。

「個人の思考」という見方をしてしまえば、断絶が強まり、成果物は貧困になっていく。これは、極めて同質性の高い集まりにのみ身を投じた場合でも同じだ。

情報はどんどん共有し、不完全なものであっても投げかけていけばいい。そこに応答があるならば、知識はたしかに脈打ち始める。

創発(部分の総和以上の結果が生まれること)を求めるならば、完全に記述できるものだけではなく、不完全な記述を許容すべきだ。それは間違いなくドリブンを生む。ただし、志向性が共有されていれば、ではあるが。

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