先日、名古屋のアウトライナーセミナーを紹介したわけだが、それに関連したインタビューがアップされていた。
Tak.さんにインタビュー 2回目 – ごりゅごcastの公開メモ
で、さらにそれに関連して佐々木正悟さんも記事を上げられていた。
3月9日(土)アウトラインプロセッシング入門セミナーは行けたら名古屋に行って聞いてみたらいいよ、という話 – 佐々木正悟のライフハック心理学
強い印象を受けた話が2つあります。
- タスク管理ツールが人生のタスクリストだとすると、アウトライナーは文章作成のタスクリストとも言える。
- アウトラインで思考のメモを並列にキャプチャしていって、それを階層という形式によって大小と関係性を区別できるなら、1断片としては文章をキャプチャするのがベスト
この2点について考えよう。
仮固定のタスクリスト
まず、1つめだ。この前半部分については、以下の本で解説されている。
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アウトライナーというツールが、タスク管理ツールとしてうまく機能するのは、全体の構造が仮固定だからである(他にもいろいろ理由はあるが)。
別の言い方をすれば、日々変化するALLは常に「仮のもの」です。そしてALLの一部である以上、目標もまた仮のものなのです。
この点に関しては、拙著も参照できるだろう。
目標は、常に「めじるし」でしかない。目的に向かうための「めじるし」だ。そして、多くの目的は「生きる」という大きな目的の下に配置される目標でしかない。よって、それらは容易に変化するし、むしろ容易に変化しなければかなり窮屈な思いをすることになる。
ここで、アウトライナーだ。
アウトライナーの特徴の一つに、「組み換え」がある(by 私的「真のアウトライナー」)。単に上下を入れ換えるだけではなく、階層構造全体を容易に入れ換えることができる。これが重要なのだ。
タスクがプロジェクトになり、プロジェクトが別の何かになる。メモがタスクとなり、検討候補が指針となる。そして、目標であったものが、目標でなくなる。そういう変化は、私たちの中で自然に起こる脳の変化と対応している。だから、その情報を扱うツールも、同種の変化に対応していなければならない。
さらに、私たちは多くを「見誤る」。やろうと思ったこと(もっと言えば、やるべきだと思ったこと)すべてができるわけではない。そういう現実に直面したとき、軟着陸できるような、そんな柔軟性が必要なのだ。
だからこそ、アウトライナーである。
もちろん、「アウトライナー」でなければならない、という話ではない。アウトライナーならそれがうまく扱えるということであり、つまり必要なのは「アウトライナー的」なことができるツールだ。
目標でも計画でも段取りでもなんでもいい。「こうしよう」と思った考え(あるいは理想)と、実際にできることのギャップを帳尻合わせできるツール。それらが常に「仮のもの」でしかなく、変えてもいいのだと思えるようなツール。それがあればいいわけだ。
文章におけるタスクリスト
ここで、「アウトライナーは文章作成のタスクリスト」という話に入る。これは、斬新な視点であるし、また、タスクの管理を上記のように──つまり、常にそれが仮固定のものでしかないという風に──捉えているならば、極めて有用な視点になるだろう。
率直に言って、目次案通りに本を書き上げるのは極めて難しい。というか、ほとんど不可能といっていいくらいだ。最初に目次案を立て、その通りに書けた本など一冊もない(記憶の限りでは)。どうしても、書き進めながらの修正は発生するし、ときにそれは大規模な再構築を伴うことすらある。
だったら、そう。「はじめから、そんなもの作らなければいいのではないか?」という直感がよぎる。昔も私はそう考えていた。しかし、話はそんなに単純ではない。なにせアウトラインとは、修正するために作るのだ。修正したあとの構造がきちんと機能しているかを確かめるために作るのだ。
その点は、以下の本からでも確認できる。
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この本でも、小説を書く前にアウトラインを作ることが推奨されているのだが、しかし「アウトライン通り」に書くことは推奨されていない。自分の判断で「脱線」すべきと判断したら、そうすることは許容されている。
だったら、アウトラインなど必要ないかというと、やっぱりそうではないのだ。アウトラインを作ることで、全体の流れやパーツの配置、緩急のつけどころ、描写の過不足、といったことが確認できる。こういう話になりそうだ、という「目処」がつき、それに合わせてさまざまな調整ができる。
そして何より重要なのが、「話が終わること」がわかっている、ということだ。Aから進み、途中いろいろあるけれどもXという地点に落ち着く。それがわかっていると、安心して筆を進めることができる(むろん、そうではない書き手もいることは言うまでもない)。
この辺は、『映画大好きポンポさん2』の脚本の書き方の解説にもつながるだろう。
いくつもの、ほんとうにいくつもの「物語の走り方」を検討した上で、バチーンとつながるものが見出せたらば、後はただ走るだけである。そして、そこに至るためにはいくつものシミュレーションと修正が必要になってくる。それをアウトライナー的なツールは助けてくれる。
さいごに
というわけで、この話は二つの方向から検討できる。一つは、タスク管理から見た文章執筆、もう一つは文章執筆からみたタスク管理。実に興味深いものだ。
残念ながら今回は「文章のタスクリスト」という点について十分に掘り下げられなかった。これはまた改めて考えてみたい。
で、もう一つの「アウトラインで思考のメモを並列にキャプチャ」については次回書くとする。