先日、ふと思い立ってScrapboxで企画案を考えてみた。
『情報社会の歩き方〜知的生産とその技術〜』 – 倉下忠憲の発想工房
予想通りの結果と言っていいだろう。関連ページが大量に掘り起こされた。
そう、これを求めていたのだ。というよりも、こうなるように、これまでこの発想工房を運用してきた。
過ぎる時間、貯まるページ
毎日少しずつページ数が増えている。着想を書き留め、リンクを作る。まるで情報カードに書き込むように、小さな思想の断片をページ化する。そういう作業を繰り返してきた。
さすがに「すべて」とは言い切れないが、それでも相当の数のページがこのプロジェクトには貯まっている。
で、一つひとつのページには、以下のように「説明」を入力し、ページリンクを付与してある。
こうしてかけてきたわずかな手間のリターンが、企画案ページで一気に回収される。自分がこれまで考えてきたことの断片が、企画案という大きな塊(結晶、と言ってもいいだろう)に吸い寄せられる。
ここで私がやったことを、アナログツールでたとえるならば、まず企画案のための箱を作り、そこに1000枚ほどある情報カードの束から、「これは関係するな」と思うものを箱に移動させた、ということになる。少なくとも、情報の移動で言えばそれに類することが行われている。
が、実際に私がやったことはそういうことではない。単に、『情報社会の歩き方〜知的生産とその技術〜』という企画案について自分が考えたことを書き込み、いくつかのキーワードをリンクにしていっただけだ。それだけで、たったそれだけの作業で、私の過去の着想がこの場所に集まっている。
Scrapboxは、時間を超越する。
つまりは、そういうことだ。
ありきたりな言葉とハッシュタグ
上に表示した「知的生産の分類」のページをご覧いただきたい。最下部に「#知的生産の全体像」という(いわゆる)ハッシュタグがある。こういうのはよくつけたくなるし、つけたとしても(それ自体に)害はあまりない。
しかし、である。
私が、『情報社会の歩き方〜知的生産とその技術〜』の企画案ページを作ったときには、このハッシュタグは活躍しなかった。実際にこのページを引っ張ってきたのは、そのハッシュタグ(=ページリンク)ではなく、「知的生産」というひどくありきたりなキーワードである。
えっ、「知的生産」というのは、そんなにありきたりな言葉ではない?
たしかにそうだろう。一般的には。しかし、ここで一般性は何も関係がない。私という人間にとってありきたりかどうかなのである。ありきたり、というのは、ほどよく言い換えれば、よく使う、ということだ。頻出する。よく顔を出す。ほら、よくいるだろう。いろいろなイベントとかでしょっちゅう顔を見かける人を。そういう人はありきたりではあるが、実際は人と人をつなぐことがよくある。媒介者なのだ。
一見、それ専用に作られたハッシュタグの方が情報をつなぎそうな気がする。しかし、わざわざ作られたものは、ありきたりではない。つまり、あまり使われない。なぜなら、ありきたりではないから、というのはトートロジーだが、ようするに「思い出せない」のだ。今回、企画案ページを作ったときも、このハッシュタグの存在は完全に忘れていた。まあ、そうだろう。
ありきたり、というのは、自分の脳の言語化機能において高頻度で用いられるパターンということだ。その言い回しは、ある部分で無意識なものである。しかし、意識的に作られたハッシュタグは、当然意識的なものである。意識的にならない限り使えないのだ。
※無意識的なパターンにネーミングを与えた場合はその限りではない。
さいごに
日々思いついたことを断片化し、ページリンクを加えておく。
そうすると、それを後から引き出せるようになる。いや、この「引き出せる」という表現はあまりに意識的に聞こえるかもしれない。
Scrapboxが行っているのは、言語化のパターンをキーにした、自動的な連想の引き出しである。だから、私の脳にとってごくナチュラルな動作だけで完結する。
実際、もう一度書くが、『情報社会の歩き方〜知的生産とその技術〜』を書き込んだときに私がやったのは、頭の中に浮かんでいることを書き出しただけだ。それだけで、過去の着想を引っ張り出せた。
でも、これは何も特別なことではない。人間は、毎回回まったく新しいことを思いついているわけではない。ある思いつきは、過去の思いつきと関係している。そもそも『情報社会の歩き方〜知的生産とその技術〜』という企画案自体が、過去の自分の思いつきの積み重ねによって発生している。その企画案(大きな思いつき)は先駆的に、過去の着想と関係性を持っている。だから、自然に他のページとつながりを持つ。
ただし、ある時点の自分は、過去の着想すべてをうまく思い出せるわけではない。詳細を忘れてしまったり、思いついたことそれ自体を忘却することもある。
だから、記録のアシストは大切だ。
でもって、1000枚の(あるいは1万枚の)情報カードを、はしからはしまで確認していかなくて済むというのはたいへんな恩恵であるように感じられる。
100枚ほどだったら、あんまり感じないだろうけれども。
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