「タスク」の研究

新しい習慣を加えること

以前、毎日一枚情報カードをScrapboxに転記していると紹介しました。

その部分は、かなりあっさり書いたのですが、本来、新しい習慣を始めるのは簡単ではありません。しかし、そのときは実際にあっさり済んだのです。

今回はそんなお話を。

一つの習慣から別の習慣へ

私は、一日をデイリータスクリストと共に過ごしています。一日分の「やること」をまとめたリストです。

そのリストは、Scrapboxにあり、毎日テンプレートを経由して作成しています。

ぽーんとボタンを押せば、以下のようなリストが自動的に作成されるわけですね。

で、ご覧いただければわかりますが、この項目の中に「断片からの創造カードの入力」があります。これがあるからこそ、私は忘れずに毎日カード作成に取り組めます。

で、この項目自体は、以下の部分から参照しているので、

ここに一行、「断片からの創造カードの入力」と書き加えれば、あら不思議、私の習慣(日課)にその行為が加わるわけです。

これが『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』で紹介した、習慣の連鎖、ということです。デイリータスクリストという習慣が、新しい情報カードの入力、という習慣につながっていくわけです。

不可能性を超える不可能

ここまでは話は簡単です。でも、何も考えないで他の人がこのノウハウを実行したからといってうまくいくわけではありません。いろいろな課題があります。

まず、デイリータスクリストが習慣になっていない人は、この方法が使えません。私は、何も意識しなくてもデイリータスクリストを作成し、それを参照して日中の作業を進めるようになっている(訓練されていると言い換えてもいいでしょう)から、そこに新規項目を追加することで、その項目を行動の選択肢に加えることができます。

デイリータスクリストが習慣になっていない場合は、この前提が崩れます。そして、無理にやろうとすると、負荷がかかりすぎて挫折します。もしこのままの形を目指すなら、まずデイリータスクリストを習慣化することから始めるのがよいでしょう。

あるいは、デイリータスクリストではなく、普段自分が日中参照しているものに項目を書き加える、というアプローチもあります。一種のリマインダーですね。

で、こういうやり方を「考える」ためには、ノウハウの具体的な手順ではなく、抽象的な理解が必要です。「なぜ、デイリータスクリストに項目を追加すれば、それが実行できるのか」ということについての理解です。

さらに、です。

たしかに私はテンプレートに項目を書き足すことで、それを実行に移せるわけですが、なんでもそれができるわけではありません。

第一に、実行不可能なことは、不可能です。項目に「100mを5秒で走る」と書いてあっても、それが実行できるわけではありません。これは直感的に理解できますが、なぜか「一日に10枚の情報カードを入力する」だとできるような気がしてきます。でも、日中は他にも活動があるわけで、その兼ね合いで「できること」は決まってきます。できることと、できないことがあるのです。テンプレートに書き込んだとしても、その実行不可能性が覆るわけではありません。

第二に、上記と似たことですが、仮に可能なことを書き加えたとしても、その項目数が150個もあればどうでしょうか。一日は24時間しかないので、当然実行は不可能でしょう。これは直感的に理解できますが、なぜか「20個くらい」ならできるような気がしてきます。でも、結局上と同じ話になるのです。

第三に、やりたくないことはできません。私は自由意志(と呼ばれているもの)でリストから項目を「選択」して実行に移します。なので、リストに記載されている項目に対して、どうしても「やる」という気持ちを持てなければ、実行に移せません。

そもそも、「断片からの創造カードの入力」は、将来的な本作りに役立つためだと自分が認識して、それを達成するためにテンプレートに書き加えたのでした。だから、毎日作成されるリストの項目を見ると、「そうだ、自分はそういう本作りを目指していた」ということも一緒に(かなり軽くではありますが)思い出すことになります。リマインダーです。だからこそ、着手に至れるのです。

仮に私が何の関心も、興味も、便益さえも感じていない行動Aがあるとして、それをテンプレートに載せても、まず実行には移されないでしょう。

テンプレートに行為を記載することは、その行為の発生を促す力はありますが、何かかも意のままに操るほどの力はありません。これは魔法でもなんでもないのです。単に「自分のトリセツ」に沿った、セルフマネジメントなのです。

当たり前の話かもしれませんが、一度確認しておきたい話ではあります。

調整する

というように、ごく普通のセルフマネジメント手法を使って、毎日一枚の情報カードを入力し続けています。で、これは他の「プロジェクト」(たとえば、「かーそる第三号作成」)にも使っているのですが、あるとき、日曜日のデイリータスクリストに「かーそる第三号作成」の項目が自動作成された際、違和感を覚えました。

「日曜日は、このプロジェクトはあんまりやりたくないな」

そういう気持ちを覚えたのです。

ここで取り得る施策は二つあります。一つは、「あんまりやりたくない」気持ちを飼い慣らし、日曜日にもそれを実行すること。もう一つは「あんまりやりたくない」気持ちを尊重し、日曜日にはその項目を自動作成しないこと。

どちらが正解ということはありませんが、このとき私が選んだのは後者でした。日曜日から項目を消しても月曜日〜土曜日には項目があり、そこで何かしらの進捗は生まれています。だったら、まあいいでしょう。+1日の進捗を生む代わりに、それをやるのが嫌になる方がはるかに高いリスクです。

とは言え、状況によっては毎日実行しないと締め切りにどうしても間に合わない、みたいなことはあるかと思います。「金メダルを取るためには休んでなんかいられない」みたいなこともあるでしょう。だから、この選択が必ず正しいとは思いません。目的が違えば、手段も異なるのです。

とりあえず、私は最高最大の進捗は求めていなかったので、日曜日には「かーそる第三号作成」はやらないことにしました。

で、新しい習慣というのは、どのような形にせよこういう調整が必要になってきます。最初に自分がやろうとした形が、そのまま最適であるという保証はどこにもありません。だからこそ、現実の自分(と達成したいこと)に合わせて調整するのです。でもって、その作業を面倒にしないためにも、少しずつ進んでいくのがよいわけです。

さいごに

「デイリータスクリストとテンプレートで、新しい習慣を楽々ゲット」みたいな話は、する方もされる方も頭を使わなくてよいので楽なのですが、でも、そこで省略されてしまっている「細かい話」について考えることが、案外セルフマネジメントを成功させる鍵を握っているのではないでしょうか。

あるリスト(ツール)が、自分にどのように作用するのか。

行動が起きやすいのか、嫌悪が先に立つのか、見たいのか見たくないのか、迷いやすいのか決めやすいのか、何を目的として(何を求めて)それを使っているのか。

そういうことを少なくとも一度は考えてみた方がよいでしょうし、日々の細かい調整の軸となるのはそういう反応です。そこを見て見ぬ振りして通ることは、結構難しいでしょう。

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