「タスク」の研究

やるおわと言語の他者性

『勉強の哲学』に、「言語の他者性」という概念が出てきます。

勉強の哲学 来たるべきバカのために
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言語それ自体は、現実から分離している。
言語それ自体は、現実的に何をするかに関係ない、「他の」世界に属している。

だから、ある意味内容を、かならずある記号表現と対応させなければならない、ということはありません。その二つは切り離せるもので、ある意味内容に別の記号表現がくっついたり、ある記号表現に別の意味内容が貼りついたりすることが起こりえます。

(前略)、まさしく同じ原理=言語の他者性(言語は現実から分離している)によって、言葉の、ある環境での偏った意味づけは必然的ではなく、いつでもバラすことができる、別の意味づけの可能性がつねに開かれている、ということになります。

だからこそ、言葉は道具として機能します。人は道具を作り、道具は人を作る、という意味においての道具です。

二つのリスト

『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』(以下やるおわ)では、タスクリストとTodoリストを区別しました。

言語の他者性から考えれば、この二つの名称はまったく違ったものでも構いませんし、なんならそっくりそのまま逆にしても構いません。大切なのは、その二つが違う名前を持っている(≒違う意味内容を有している)という点です。

その違いさえ確認できればいいのですから、たとえば二つのリストをAリスト、Bリストと呼んだって構いません。それでも、その二つが何であるのかを自分が分かっていれば、リストの運用には支障を来しません。

しかし、たとえそうであっても、この二つのリストは違う名前で呼ばれる必要があります。だからこそ、やるおわでは徹底的に用語が並べています。差異のバリエーションを飾り立てています。

そして、暗黙に問いを突きつきつけるのです。「あなたが使っているそのリストって、何リストですか?」と。

たとえば、買い物リスト

買い物に行く前に作るリストのことを考えてみましょう。たとえば、以下のような「買い物リスト」はどうでしょうか。

・バナナ
・豆腐
・オレンジジュース
・カレー

一つだけ変なものが混じっていますね。頭に浮かんだことをそのまま書くと、こういうリストが出来上がります。

もしあなたが、リストの作成者であり、買い物の実行者であれば、このようなリストでももしかしたら機能するかもしれません。「カレー」とみたときに、牛肉、たまねぎ、ニンジン、カレーのルウ、というものがパッと浮かび、絶対に忘れないなら買い物は支障なく行えます。

でも、買い物初心者・料理初心者ならお手上げでしょう。スーパーの店員さんに「すいません、カレーください」と言ってしまうかもしれません。そのときは、お弁当コーナーに売っているカレーが指さされることでしょう。

同じことが、「やること」を書き込むリストにも起こります。頭に浮かんだことをそのまま書くと、(本書で言うところの)タスクとプロジェクトが入り混じったリストができあがってしまうのです。そして、三日後(あるいは5時間語の)自分が困ることになります。

たとえば、やることリスト

名前は何でもいいのですが、たとえば「やることリスト」を作ったとしましょう。そこに、どんどん「やること」を書き込んでいく、というのが第一段階です。

で、そのリストを使い続けていると、たとえば「やること」と「やりたいこと」の差異が気になってきます。適当に書き込んだものの中に、「やること」ではないもの、つまり「やりたいこと」とか「アイデア」とかが混ざっていることを発見するのです。そこから、リストの分別みたいなものもスタートします。

で、そうした概念の混乱がありうることに気がつき始めると、最終的には「やること」ってなんだろう、みたいな問いに向き合うことになります。言い換えれば、これまで自分がやることリストだと思っていたものが、実は「やること」リストだった、ということに気がつくのです。つまり、自分が「やること」だと認識したものが、そのリストに入ってくるのだけれども、その認識って歪んでいないのか、というメタな認識になるわけです。

つまり、最初にやることリストを作ることで、そうしたものを処理できるようになりつつ、そのことがそこに書き込まれたものが自分にとっての「やること」だと認識されるようになり、いつのまにか「自分にとってやることは何か?」という問いについて考えなくなっているな、ということに気がつく、というややこしい変化が起きます。

だから、なんでもいいです。自分でしっくりくる名前をリストに与えてあげてください。そして、そのリストについて考えてみてください。「このリストって、一体何だろうか」と。そういう問いを積み重ねていると、リストは単なる備忘録以上の存在になります。

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