7-本の紹介

【書評】『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』(ライダー・キャロル)

つまり、ノートは最高なのである。

バレットジャーナル 人生を変えるノート術
ライダー・キャロル
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 89

「バレットジャーナル」は、優れたノート術だ。一冊のノートとペンさえあればスタートできる。小難しい記法を習う必要もない。シンプルでありながら、拡張性を持っている。アナログの良さが十全に発揮されているメソッドである。

非常にシステマティックにまとまっているノート術なので、拙著『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』でもタスク管理の一手法として紹介させていただいた。それくらいポピュラーになりつつあるノート術である、本書は、その日本初の公式ガイドブックである。

とは言え、すでに書き方を簡易に紹介した公式のWebサイトもあるし、その日本語訳もある。また、さまざまな解説本もたくさん発売されており、そのうちの一冊は以前にも紹介した

本書のPart1とPart2で手に入る情報は、概ね上記の情報源と大差はない。少し言えば、Part2での各モジュールについての掘り下げが詳細だということくらいだろうか。

しかし、詳細というのは案外重要である。というのも、私はこのPart2を読んで、それぞれのモジュールの位置づけがようやく理解できたからだ。やはりざっとした解説だけではわからないことは多い。

加えて言えば、このモジュールという考え方が、バレットジャーナルの独自性と拡張性を支えてもいる。箇条書きで記入する・記号を使う、というノートメソッドは多いのだが、それだけでは不十分なのだ。少なくとも、情報管理を支えるシステムとしては弱いと言える。その点を、モジュールという概念が見事に解決している。

でもって、私の見立てでは、このモジュールという考え方は、ノートにある種のカード法的発想を組み込んだものと言える。もちろん、ページをバラバラにするわけではないが、それぞれを独立した部品として扱い、他の情報とゆるやかに関連付けて行使する、という手つきは、カード法のそれである。カード法好きの私が、バレットジャーナルに惹かれるのも無理はないだろう。

と、話が脱線したが、Part1とPart2はさておいて、本書の肝となるのはやはりPart3である。ここでは、「ノートの書き方」ではなく「ノートの使い方」が解説される。つまり、セルフマネジメント手法がかなり具体的に解説されている。

こればかりは、いくら書き方を写真で学んでもまったくたどり着けない。このメソッドを、なぜ・どのように運用するのかのコアに触れなければならない。でもって、この「なぜ」と「どのように」は密接につながっている。言い換えれば、「なぜ」があるからこそ「どのように」が導かれる。「どのように」に注目するあまり、「なぜ」が放っておかれると、ツールの運用はうまくいかない。

この点に関して、著者は複雑な心境を抱えているのだろうと推測される。Part3を読む限り、このメソッドは自分にとって余計なものから距離を置くためにある。自分と対話し、自分について考えるためのゆとりを手にするためのメソッド。それがバレットジャーナルのコアであろう。

当然そこには、「うまくできない自分へのまなざし」が生まれることになる。自分と対話すればするほど、「理想的でない自分」がそこにいることに気がつかされるのだから。よってバレットジャーナルの導入においても、ゆっくりじわじわと進めていきましょう、と提唱されている。おどろくほど『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』で書いたことと同じである。でも、それは必然的な帰結なのだ。一気に、ジャンプは危険。記録を長くつけている人間ならば、よく知っている事実である。

でもってそのことは、単にメソッドの導入という話だけに留まらない。セルフマネジメントは、自分が自分を管理することであり、自己の立ち上げに自己そのものが関与しているのだ、と拙著で書いたが、自分というものについての理解も、一気にジャンプは危険なのだ。これもまたゆっくりと──そして、記録と共に──進めていかなければならない。

にもかかわらず、「バレットジャーナル」というものの印象は、華々しく飾り立てたインスタ映えするようなページである。はたしてそれは、自己の対話の結果として生まれたものなのだろうか。それとも、肥大化する承認欲求を満たすためだけの行為なのだろうか。

無論、他者がそれを線引きすることなどできない。人によっては、ノートを飾り立てるその瞬間にこそ、自己との対話が生まれたり、ある種のゾーンに入っている、ということはあり得る。しかし、そのように書く(描く)のがバレットジャーナルのコアであると認識されてしまっては、それは悲しいすれ違いというものだろう。

だからこそ、「なぜ」の確認なのである。「どのように」と「なぜ」をセットで理解すること。それが悲しいすれ違いを生まないためには必要だ。

ともあれ、ノートは最高なのである。どんなやり方でも、書き続けていればきっと何かは手に入る。自分に関する何かは。

▼こんな一冊も:

「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門 (星海社新書)
倉下 忠憲
講談社
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「箇条書き手帳」でうまくいく はじめてのバレットジャーナル
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