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Doblogの回想、あるいは胸に宿るインターネットの温かな感覚

以下の記事を読んで、懐かしい気持ちが湧いてきた。

東浩紀さんの回想と、はてな村周辺の話 – シロクマの屑籠

とはいえ、はてな村というコミュニティがあり、お互いに見知った仲だったからこそ議論の場が成立していたのだろうと思うし、そうした見知った仲を深めていくアーキテクチャとして、はてなブックマーク、idコール、はてなキーワード、はてなハイクなども機能していたように思う。

『ブログを10年続けて、僕が考えたこと』にも少し書いたが、私はここに──つまりWordPressと独自ドメインに──来るまでは、Doblogというサービスでブログを運営していた。Doblog。実に懐かしい響きだ。最近ではブログサービスの終了も珍しくなくなっているが、その当時(2009年)では、結構レアな出来事だったように思う。

場の終わり。

それはひどく悲しい出来事だった。痛ましさを通り越して、喪失感すらあったように思う。なぜならその場は、非常に居心地が良かったからだ。

Doblogにおいても、シロクマさんが「はてな村」について書かれているような事柄は成立していた。たぶん、それを支えるアーキテクチャがあったのだろうが、もはや私の記憶は濃密な霧の向こう側なのでたしかなことは言えない。ただ、訪問者の足跡や、グループ的なもの、そしてトラックアップといったものがブロガー同士の交流を活性化させていたことはなんとなく思い出せる。

誰かが何かについて記事を書く。そこにコメントがつくこともあれば、別の誰かがトラックバックを投げかけることもある。肯定の意見もあるし、否定の意見もある。あるいは、ぜんぜん別の視点からの意見もある。なんにせよ、それは同じ土俵の上で行われていた。一つ上のレイヤーからの、通り魔的なコメントの吐き捨てなどではなく、一プレイヤーとしての意見のぶつかり合いだった。

トラックバックが付いた記事を読みに行く。そこには、その人のブログがあり、別の記事が並んでる。それらもフムフムと読む。すると、その人の意見の背景が見えてくる。コンテキストと言い換えてもいいだろう。一つの意見が、一つの意見としてフォーカスされるのではなく、「ある人の考え」という総合的な形で浮かび上がってくる。

そうしてその人の考えを受け取ったら、そこで終了ということもあるし、また、別の切り口で自分の意見を書くこともある。そうして、意見のやりとりが続いていく。断片的ではなく、断続的に。

もちろん、そんなことが四六時中発生していたわけではない。何の反応も得られないままに垂れ流されていた記事の方が多いくらいだろう。しかし、それほど高頻度ではないにせよ、たしかにそのような交流は──もっと言えば議論は──発生していた。

私はまだ、そのときの温かな感覚を胸に抱きながら、インターネットに接している。あるいはそれは懐古主義なのかもしれないが、やはり一つの希望のように思えて仕方がないからだ。

「Twitterは議論に向かない」という意見を見かける。あるいはもっと拡張して「人間は議論に向かない」という意見もある。たぶん、それらは正しいのだろう。しかし、ここでは見方を変えてみたい。

「議論というものを成立させるためには、場の環境を整える必要がある」

つまり、二人の人間がいさえすれば、それで議論がスタートできるわけではなく、ある特殊な環境が整えられてはじめて議論(もっと言えば建設的な議論)がスタートできるようになる、ということだ。ある時代の「はてな村」には、そしてDoblogにはその特殊な環境があった。そして、たしかにその意味で、今のTwitterは(ひいてはインターネットは)議論には向いていない。整えられた環境が崩れ去り、自然状態に近づいているからだ。

しかし、この見方を取る限り、「ある特殊な環境」さえ整えられるなら、インターネットにおいても議論の場が確立できる、という希望を抱くことはできる。もしかしたらそれは幻想なのかもしれないが、かといって無力主義に陥って、諦観の眼差しで状況を眺めているよりも、ずっとマシではないかと、個人的には思う。

もちろん、それがどんな環境なのかは私はぜんぜんわかってはおらず、むしろその答えをずっと追い続けている節がある。私の活動の多くは、胸に宿るインターネットの温かな感覚を取り戻そうとするあがきなのだという気すらしている。

このことについては、ぜんぜんまったく答えはない。どうしたらいいのかのヒントすら持ち合わせていない。

でも、だからといって、この場所から立ち去りたくはないのだ。そういう気持ちだけを持って、今日もブログを更新している。

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