タスク管理の仕組みについては、おおよそ次の三つの要素が決定に関わってくるのではないでしょうか。
・自分(なにができるか)
・要求/目的(なにをしたいか)
・環境(なにを使えるか)
三要素
自分
自分という存在のスペックです。それは能力であり、好みであり、築かれてきた経験でもあります。
その中には、変化・向上可能な部分もあり、なかなか変え難いものもあります。
要求/目的
タスク管理の実行主体である存在が、何を欲しているのか、あるいは何を要求されているのか、です。
「心穏やかに仕事をしたい」
「最重要タスクだけこなして、あとは無難に過ごしたい」
「改善を日々進めたい」
というものや、
「絶対にやりおとしのないように」
「やるべきことをすべてこなせ」
「なるべく続けられるように」
というものがあります。
どちらも変え難いものではありますが、絶対に変わらないものでもありません。
環境
どんな道具が使えるのか、という要素と、どのような時間の使い方ができるのか、という要素があります。
「会社ではクラウドツールは使えない」
「出先ではノートパソコンは開けられない」
「お金がないので高いノートは使えない」
というのがあるでしょう。
また、「しょっちゅうお客さんから電話が関わってくる」「上司の依頼にすぐ応えないと怒り狂う」「家族の臨時の依頼に応えることがデフォルトになっている」みたいものもあるでしょう。
齟齬への二つの対策
上記の三要素の綱引きによって、タスク管理システムは形成されていくのではないかという視点を仮にとってみましょう。つまり、それぞれの要素を加味して、それを満たすシステムが「ちょうどよいシステム」(ゴルディロックス・システム)だと言うわけです。
ここで、ノウハウ、というよりも他人のタスク管理システムの有用性について考えてみます。
他人は他人で、上記の三要素を考慮してタスク管理システムを構築しています。よって、自分がその他人とピタリ重ならない限りは、そのシステムをそのまま運用しても、「ちょうどよいシステム」にはなりません。そこで、二つの対策があります。
・カスタマイズする
・自分を合わせる
カスタマイズする
他人のタスク管理システムに含まれているツールやノウハウが、自分・要求・管理にそぐわないときは、そのツールやノウハウを部分的に変更できます。
クラウドツールが使えないのに、クラウドツールが使われているなら、そうではない別のツールに置き換える、といったことがそれにあたります。
これをさらに拡張させると、あるタスク管理システムから自分が使えそうな部分だけを抜き取る、という情報摂取になります。
自分を合わせる
他人のタスク管理システムに含まれているツールやノウハウが、自分・要求・管理にそぐわないときに、自分・要求・環境の方を変えていく、というやり方もあります。
・タイミングができないならタイピングを練習する
・クラウドツールが使えないなら使えるように申請を出す
といったことです。
カスタマイズの問題点
上記の二つは有用かつ実際的な対応ですが、問題もあります。
まず、カスタマイズでは、変更していい部分かどうかを見極めることが必要です。たとえば、あるタスク管理方法で「一日分のリストを作る」がコアにあるとしたら、そのリストをどんなツールで作るのかは変えられても、一日分のリストを作るというものを変えてしまうと、もはや別物になってしまうでしょう。つまり、変更可能な部分とそうではない部分があるわけです。
それを見分けるには、なぜそうしたツールやノウハウが使われているのかを理解しなければいけません。ようするに、自分・要求・環境を押さえる、ということです。
この点が、ノウハウの断片的な情報摂取における問題点となります。「うまくいく」やり方が短いメッセージで語られても、それがどのような自分・要求・環境において「うまくいっている」と言えるのかがわからないと、自分の場合に適用しにくいわけです。
また、逆向きの問題もあります。自身の自分・要求・環境について理解していないと、「それに合わせて」カスタマイズすることは不可能だ、という点です。
そのような状態では、「なんとなくうまくいかなくて、そのまま止めてしまった」みたいなことが起こります。あるいは、「しんどいけど、やらなければいけないからやっている」みたいなことも起こります。後者は結構しんどい状況です。
この状況を脱するには、自身に関心の目を向けなければいけません。自分が何を欲しているのか、どんな環境にあるのか、手持ちのカードはどれくらいなのか、ということを知る──というよりも、常にそうした情報を求めておくことが有効です。言い換えれば、ズレや違和感を感じたときにそのままにせず、むしろその違和感から、自身の「自分・要求・環境」とはどのようなものなのかを探っていくのがよいでしょう。
そしておそらく、いったんそれらを掴まえてしまえば、以降から他人のタスク管理システムとの付き合い方も楽になってくるはずです。
自分を合わせるの問題点
自分・要求・環境は、変化・変更可能なものなので、他人のタスク管理システムに合わせていくことも可能です。
ただし、その変化には時間がかかります。能力の習得にも、予算の請求にも、交渉事にもやっぱり時間はかかります。その間の齟齬に関してはある程度我慢するしかありません。
また、そうした変化が「必ずうまくいく保証」もありません。状況によっては、いかんともしがたいものはあるでしょう。この辺は納得しておく必要があります。
さらに、要求/目的に関しては、もっと扱いが繊細です。
あるタスク管理ツールが提供するものと、自分が所属する組織からの要求が合致しない場合、ある程度は交渉によってその要求に変化を加えることも有用でしょうが、場合によっては鼻つまみ者扱いされたり、最悪「使えないやつ」認定されたりもします。「社員は組織に合わせるものだ」という文化が強いところほどそのようになるでしょう。
また、自分の目的にも似たことは言えて、たとえば完璧主義の人が「ほどほどでいきましょう」的システムに合わせることによって、結果的に「ちょうどよいシステム」に近づくというくらいならば問題は小さいのですが、あることを為したいと考えている人がそのことそのものに疑義を感じる、あるいは無価値に思えるようになる変化は、結構大きなものです。
人間は、変化するものであり、変化したあとの価値観で生きていくので、過去は常に置き去りにできますが、でもその人にとって失われてはいけないものもあるのではないか、という疑問は一定量キープしておきたいところです。
さいごに
というわけで、今回はタスク管理システムの三要素について考えてみました。
おそらくこの見取り図は、タスク管理に関する情報を摂取するときに役立つのではないかと、考えています。
▼こんな一冊も:
講談社
売り上げランキング: 45,440