「タスク」の研究

GTDの有用さを抽象的に抽出すると

GTDの有用さを抽象的に抽出すれば、以下の要素が挙げられるかもしれない。

・(状況の)コントロールと見通しの重要性
・「これは何か?」という自問
・断片的なメモの習慣
・リストを見返すこと

コントロールと見通しの重要性

まず「(状況の)コントロールと見通しの重要性」である。何もわかっておらず、何も思い通りになるものがない、というのは精神的に厳しい。不安であり、ストレスであり、たぶんスペックも十全に発揮されない。それは解消したい。

なにも完璧でなくてもいい。ある程度の見通しと、ある程度のコントロール(ないしはコントロール感)があればいい。GTDは高度という概念を使っているが、あれは上から見下ろすものではない。私たちの現実は常に高度0である。つまり、より高く大きい目標は、「遠く」に見ておけばいい、という話でもあるのだろう。高度が低いところははっきりと、高いところはぼんやりと見えていればいい。それだけでも「見通し」の感覚は得られる。

コントロールも同様だ。何もかもを自分の思い通りにできる必要はない(し、それは現実的な要請ではないだろう)。先日私は私事でタスクが圧迫されたのだが、先送りとトリアージを駆使して状況に対処した。「自分のやりたいこと」が十全にできたわけではないが、なさねばならないこととやりたいことは小さく確保できた。状況があり、自分の対処があり、多少は望む結果を得られる。これが「コントロール感」を担保してくれる。そういうことができれば、状況に追い立てられているような感覚は緩和する。それで十分だろう。なにも、自分の独裁者になる必要はないわけだ。

「これは何か?」という自問

GTDでは、ワークフローの形で実装されているが、その根本にあるのが「これは何か?」という自問である。もやもやしたもの、漠然としたものを放置しておかない姿勢。いつかやろうと放置しているメールに対処すること。なんとなく気になっている押し入れを放置しないこと。それが状況を一歩前に進めるために必要なことだ。

もちろんこれは、コントロールと見通しを支えることにも貢献する。レンズが曖昧模糊の水滴で曇っているならば、遠くの目標どころか身近な場所すら見ることはできない。

断片的なメモの習慣

ユビキタス・キャプチャーという表現もされるが、ようするにメモ習慣だ。ちょっとした思いつき、気になることを放置しないこと。それらを書き留めて、後から処理できる体制を作ること。これでうっかりミスはだいぶ減るし(もちろんゼロにはならない)、適切な先送りをするのにも役立つ。

つまりこれも、コントロールと見通しを支えてくれる。「書き留めておく」習慣がなければ、すべては押し寄せてくる状況にリアルタイムへの対応に押し流される。これはコントロールがある状況とは言えない。メモは、(対処)の時間を変更可能とする、強力なテクノロジーなのである。

もちろんこのメモが発展したものが、リストである。リストはそれ自身が見通しを与え、またリストの操作を通すことで状況へのコントロール感を与えてくれる。一列に並べる、という形式を取らなくても、複数の項目の集合体という意味でのリストは必須であろう。

リストを見返すこと

GTDでは、レビューという形で実践に組み込まれているが、そこまでたいそうなことをする必要は実際ない。自分が書き留めたものを、見返す習慣があればそれでよい。

なぜ見返す習慣が必要なのか。それは、いろいろなものが時間と共に変化するからだ。社会であったり、環境であったり、上司の意向であったり、自分の考えであったりと、常に同じものはほとんどない。対象によっては、短時間ではほとんどかわらないものもあるし、結構動いてしまうものもある。その程度によって、見返す頻度は決定されるだろうが、ともかく見返しは有用である。

でもって「見返す」のだから、その対象は書き留めたものとなる。それは、広義のメモであり、つまりはリストを含む総合体である。もう一度言うが、そのすべてを見返す必要はない。頻度に合わせた再確認が行われればいい。

そしてこれは、「これは何か?」の再適用とも言える。ある時点で、「これは何か?」の自問に答えたその結果が、未来において持続しているとは限らない。だからこそ「これは何か?」ともう一度問い直し、その答えに合わせる形でメモ/リストを再編していく。

そうすることで、コントロールと見通しが再び賦活される。

言うまでもないが、そういう行動を取ること自体が、少しメタなコントロール感に寄与している。目の前の状況というよりも、少し高度のある状況に対処できている、という感覚が得られる。その点も、存外に大切だろう。

さいごに

以上の点を押さえておけば、使用するツールや実装の形が異なっていても、GTD的な恩恵は受けられるだろう。そしておそらく、他のタスク管理用法においても、同様の抽象的な「有用さ」が含まれるのではないだろうか。コントロールと見通しをまったく重視しない管理というのは、少し考えにくい。

あるいは、この抽象的要素を用いることで、チームにおけるGTDの運用についても考えていけるようになる可能性がある。いや、もうその段階ではGTDという言葉を持ち出さなくてもよいだろう。ぜんぜん違う名前を当てたって構わないはずだ。ともかく──どのように呼ぶにせよ──チームにおける「タスク管理」(ないしは「プロジェクト管理」)も重要な事柄であることは間違いない。

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