「タスク」の研究

体重計・タスク管理・分析思考

万能感覚を傷つけること

「へえ、体重を測るだけのダイエットがあるんだ。それなら自分にでもできそう」

といって毎日体重を測りながら、バカバカ大食いを続けていたら、当然痩せるはずはありません。体重計があなたのカロリーを吸い取ってくれるわけではないからです。

実際、私も減量目的のために体重を計り続けたことがあるのですが、そのときは認知が変わりました。食事を目にしたときに、「これを食べたら、あの数字が増えるんだな」というこれまでに得たことがない感覚が生まれたのです。当然それは、「食後のデザートはやめておくか」とか「大盛りが無料らしいけど、普通でいいや」という行動の変化を引き起こします。数字の連続的な記録が分析思考をトリガーし、それが行動を変えた。だから、体重が減る(あるいはあんまり増えない)。そういう結果が引き起こされます。

逆に言えば、分析思考が刺激されず、認知も変わらず、行動も変わらないなら、何も変わりません。体重を測っていれば痩せるんだから、バカバカ大食いしても大丈夫だろう、と分析思考をオフにしていたら、何も変わらないのです(むしろ体重は増えるかも)。

タスク整理では

タスク管理にも似たようなところがあります。自分の「やるべきこと」を精緻にリスト化し、完璧に把握したら、それでその「やるべきこと」の達成が確約されるわけではありません。リストが私の代わりにその「やるべきこと」を実行してくれるわけではないからです。

やるべきことのリストがあることで、新しいタスクが発生したときに、「これをやっちゃうと終業時刻を押しちゃうな……まあ、そんなに喫緊でもないし明日でもいいか」とか、「こんなに雑用ばかりしていたら、重要なタスクにぜんぜん着手できないじゃないか」とちゃぶ台をひっくり返すようなことが起きない限り、それ以前とそれ以後に何の変化も起きません。同じ状況が続きます。だって、やっていることは同じなのですから。

リストを作って管理していれば大丈夫だろうと安心し、「やること」をどんどん増やし続けていれば、結局「やること地獄」にまっさかさまです。分析が止まっているからです。

『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』では、タスク管理は行為達成の補助には役立つが、だからといってタスク管理をしていればすべてがなせるようになるわけではない、と口を酸っぱく言っています。できることはできる、できないことはできない。その(ごく当たり前のような)状況を認識すれば、「だったら、何ができる? どんな行動を取った方がいい? 何を切り捨てる必要がある?」というような分析思考が起動します。そうすれば、タスクの選択(何をするか? 何を自分のタスクとするか?)も変わっていき、さらにタスクの着手もまた変わってきます(あるいは、そのような効果が期待できます)。

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超人思考・万能感覚がマズイのは、この分析思考を麻痺させるからです。自分はなんでもできる、〜〜さえやっていればうまくいく、という感じ方は、当然のように分析思考を鈍らせます。その感覚を(父の名的に)傷つけるところからしか、状況の変容は起きません。逆に、その感覚を保存するために、「なんでもできる」と謳う方法論に近づいていけば、皮肉なことに(あるいは期待した通りに)何も変わらないでしょう。

さいごに

超人思考・万能感覚が傷つけば、結果的に「なんでもできる」という感覚は失われます。それはちょっと怖いことかもしれませんし、急激にそれが進めば、「なんにもできない」というような無力感に支配されることもあります。だから、注意深く進めていかなければなりません。

現実を見つめれば、ひとりの人間ができることはいっぱいあります。それは間違いありません。かといって、それはすべてではないのです。「いっぱいだけど、すべてではない」。このほとんど何にも言っていないような中庸な感覚こそが、傷ついた私たちの感覚です。

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