1-情報ツール考察

Draft・チラ見・潮目

たぶんアウトライン・プロセッシングに似ていると思う

最近の私の.orgファイルの中身である。基本的にはこれ一つしか使っていない。org-modeには高度なTodo管理の機能もあるが、そういうのは今のところスルーしている。入っているのは、いまだ完成に至っていない原稿、つまりDraftである。

構成

大きく二つのブロックがある。デイリーブロックとプロジェクトブロックだ。上部の日付見出しの塊がデイリーブロックで、それぞれの日の雑多な思いつきを書き記す。org-modeは、見出し以下を折りたためる機能があるので、現在は折りたたまれている。開いているのは、7/29の分、つまり当日分だけだ。そこが、私の意識のラインである。

その行より下が、プロジェクトブロックである。すでに枠組みがあり、書こうとしている原稿の下書き。普通なら専用のファイルを設けて保存するところだろうが、一つのラインにまとめて保存している。ワンアウトラインの思想だ。

この大きなラインは、潮目を作っている。その日思いついた雑多なことと、すでに枠組みを持つ原稿の下書き。そのどちらもが、実はDraftである。極端なことを言えば、すべての思いつきはDraftなのだ。その中で、明確な枠組みを持つものを「下書き」と呼び、そうでないものを「思いつき」と呼ぶ。それだけである。だから、それらを混ぜてしまう。一緒くたにして、保存してしまう。

するとどうなるだろうか。

潮目の動き

画像を見てもらうとわかるが、「デイリーに生きる、について書いていきたい」という行がデイリーブロックの最南端である。この行を目にした後で、私はその下にある各種のプロジェクトに目をやることができる。なるほど、「タスク管理と生産性」の文脈で何か書けるかもしれない。いやいや、メルマガで連載を始めてみてはどうか。そういう会議が脳内で発生する。

別段この時点で決意する必要はない。決まらなかったら決まらなかったでいい。何なら、デイリーにその会議の「議事録」を書き残してもよい。そして時間が経ったあと、もう一度後に検討すればいい。その際は、一つ見出しを上げて、この項目をデイリーから出しておいてもよいだろう。

あるいは、使い道が決められるなら、ちょちょちょーという感じでこの行を下に移動させて、どこかのブロックの内側に潜り込ませることもできる。そうすれば、アイデアの断片がプロジェクトに組み込まれたことになる。

このような越境性こそが、ワンアウトラインの思想の肝である。並んでいるから、飛び越えられるのだ。

折を見てチラ見

デイリーに思いついたことをメモしている、あるいは何かしらの原稿の下書きを触っている。そんなとき、ふと別のプロジェクトが目に入る。「そういえば、自分はこのテーマで原稿を書こうとしていたっけ」。そのほんのわずかな興味、ささやかな想起、その瞬間にtabキーが走る。

そうそうこんな内容だった、というところで、テキストを書き換えたり、追記したりが発生している。それがなくても、一時的にその内容が自分の脳内にロードされる。内容が活性化する。文字数を増やす大いなる契機である。そして、それが終われば、いつでも好きなタイミングでtabキーを押せばいい。それで内容は隠され、私の意識は本線に復帰する。

ここには「移動」の感覚がまったくない。まるで、机の上に広げてある書類をちらっと見るような、あるいは、今書いているノートをめくり返し数ページ前を読むような感覚である。

Evernoteは、ノート(やノートブック)を変える。Scrapboxは、リンクを踏む。どちらも、移動の感覚が伴う。それは意識を別の場所に移すような感覚である。しかし、このワンラインにはそれがない。単にチラ見しているだけだ。

だからこそ、一日に何回も発動していける。強い意志など必要なく、というかむしろ目の前の作業からの気分転換的に別のプロジェクトのDraftを開いてしまう。そういうことが起こりえる。

さいごに

これはorg-mode(私はSpacemacsで使っている)での話だが、同じことはアウトライナーでも言えるだろう。同じ場所において、一部を隠せること。それにより、本来なら独立して扱われるオブジェクト同士が混ざり合う場が生まれる。潮目が生まれる。

こんなものは、オブジェクト指向の設計ではあってはならないことだろう。Aの機能の一部が、ずるずると移動して、知らない間にBの機能になっているだなんて。それはたとえば、「知識」というものならば、同じことが言える。それらはきちんと独立的に管理されるべきだろう。関連的ではあっても、中身が露出して別のところに移動するなんてことは避けたいところだ。

しかし、原稿はそうはいかない。原稿は、単に知識を並べるだけのものではないからだ。そこには何かしら、「織る」とも呼べるような感覚が伴う。だからこそ、要素が移動できることは強みとなる。

いや、もしかしたら、これは原稿だけに言えることではないのかもしれない。「アイデア」というより大きなものに敷衍できるのかもしれない。もちろんそれはいきすぎた敷衍かもしれないので、その判断は読者に委ねるとして、私は今のこのワンライン運用を結構気に入っている。別のツールにもどんどん取り入れたいくらいには。

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