断片からの創造

情報カードがうまく操作できない問題

以下のツイートについて思ったことを少し書く。

私は、書籍の構成を考えるときなどに、付箋やカードをよく使う。断片を操作して、全体を作る。そういう知的操作である。

であれば、私は上記のツイートに同意しないのかというとそうではない。むしろ、強く同意する。この奇妙なねじれが、本稿を書こうと思った動機である。

では、その「ねじれ」とは何なのか。実際には、何もねじれていないのだ。

私が付箋やカードを書き出すとき、それは「ひとつになったもの」を解体している。具体的には、あるテーマについて、私が連想する巨大な情報グループの要素を部品として、つまり断片的に書き出している。そしてそれは、たいてい一つの紙の上に貼り出される。というか、そうして紙の上に貼り出されることでしか(≒全体の中に位置づけられることでしか)、そうした断片は意味を持たない。象徴的に言っているわけではない。実際的にそうなのだ。

付箋の一枚に「ズレがある」というのがあるが、これ単体では何のことかさっぱりである。別の言い方をすれば、貼り付けたこの紙から取り出したとき、この付箋は実質的に意味をロストする。あくまで、部品としての断片なのだ。

ようするに、私のこの知的操作は、頭の中に全体として存在するものから、その要素を一つずつ取り出して、付箋の上に書き留め、それを貼り付けている。つまり「ひとつになったものを解体」して「操作」している。

こんなことをくどくど書いているのは、これが「こざね法とカード法」の違いだからだ。

「カード法」は、それ自身で独立的に存在可能な──紙から取り出しても意味がロストしない──情報単位で着想を保存していく。つまり、先ほどのツイートを援用すれば「最初から断片になったもの」だ。私の言い方なら、「最初から全体になったもの」だ。
※私の認識では、断片=全体なので、この言い換えは何の問題も起こらない。

一方「こざね法」は、すでに全体の一部として構成されているものを、断片的に扱いながら、その流れを整えていく(操作していく)。部品一つひとつは、それ自身では意味がロストするが、だからこそ、それは全体の一部として貢献する。

ここで何が言いたいのかと言えば、ツイートでは「カードみたいに最初から断片になったものがうまく操作できない」とあるが、付箋やカードを使う私でも、それは同様なのだ。「こざね法」的な操作を、独立的なカード(たとえば、発想工房の1ページ)で行うことは難しい。そしてこれは、そもそも論として、もっと大きく敷衍できる。「カード」(カード法としてのカード)は、そもそもそういう操作をするためのものではない。別の言い方をすれば、それぞれの情報単位が可能とする「操作」は基本的に異なる。

たとえば、橋本商会に「全体像を俯瞰してもフーンとしか思わない」というページがあるが、大量の「カード」を眺めても、たしかにそれは「フーン」としか思わないだろう。そこには「全体像」なるものが存在しないからだ。

しかしそれが「こざね」ならば話は変わってくる。「こざね」を操作していくためには、全体の俯瞰は必要である。なぜならそれは、全体として機能して始めて価値を持つからだ。

この二つは基本的に別の知的営為なのである。少なくとも、そう考えた方が混乱は少ない。

しかし、アナログツールと違って、デジタルでは「こざね」と「カード」は、峻別しにくい。物そのもののサイズの差がなく、また一行書き留められるツールが、数千文字書き留められたりもするからだ。だから、ついつい二つを混同してしまう。Scrapboxのページを、こざね法的に操作したくなってしまう。しかし、そういうことをするならば、初めからアウトライナーに保存しておいた方がいい。メディア(ツール)は指向性を持つのだから、それに合わせて使い分けることがユーザーの役割である。

まとめておこう。こざね的情報単位とカード的情報単位は異なるが、その異なり方は「操作」の違いとしても顕現する。こざねもカードも操作可能だが、そこでまなざされる行為は異なっている。

最初に戻ろう。

私は、書籍の構成を考えるときなどに、付箋やカードをよく使う。しかし、たとえ媒体としてカードを使っていても、それは(やや大きめのサイズ)のこざねなのである。あらかじめ全体として機能するように書き付けておいたカードとは違っている。そこで行われる行為は、もともとひとつのものの解体と再構築である。バラバラのものを寄せ集めて大きな構造を作っているわけではない。

この感覚は、アウトライナーを使っている人ならばすぐにわかるだろう。しかし、そうでない人には一見わかりづらいかもしれない。そう思って、本稿を書いてみた。もちろん、こんな話とはぜんぜん別に「カード(という媒体)に書いてあるとやりづらい」という課題はあると思うので、「カードを使いなさい」という話ではないことは一応添えておく。

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