7-本の紹介

【書評】『書くための名前のない技術 case 2 Marieさん』(Tak.)

case 1に続く「書くための名前のない技術」シリーズ第二弾。今回はMarieさんがインタビュイーである。

書くための名前のない技術 case 2 Marieさん
Tak. (2019-11-15)
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全体の形式は、case 1と同じ。前後二つのパートに分かれており、前半はインタビューの書き起こしが、後半はその内容を踏まえた著者による考察が提示されている。分量的にはごく短く、読み始めた日に読了できるだろうが、温かいお味噌汁のように読み終えた後じんわりと胃に熱量が残る一冊である。滋養強壮。

case 1と比較するならば、そちらが対比的だったのに対して、こちらは倍音という感じがする。共鳴、共振、響き合いといったところだ。もちろんそれは、著者とインタビュイーの「書くための」スタンスが似ていることが影響しているのだろう。

概要

目次は以下の通り。

Part 1 Marieさんインタビュー
 書き手としての活動
 書くための道具と環境
 書くための技術とプロセス
 書くためのメンタル
Part 2 Marieさんの「書くための名前のない技術」
 書くための技術とプロセスについて
 書き手としての活動について

興味深い点はいくつもある。まずは、「Wordのアウトラインモード」だ。この界隈で情報を追いかけている人ならば耳にしたことがあるだろうが、あのWordをアウトライナー的に使おうという試みである。と、今いかにも無謀なことをしようとしている風に書いているが、話を聴く限りはたしかにそれは有効な手段であるように思える。

残念ながら私とWordの友好関係は十年以上も前に断絶してしまっているので自分で確認することはできないのだが、著者が上の本で語っているメリットを聞くと、「なるほど、それは便利そうじゃないか」と感じてくる。これは、最新のツールを使わなくたって知的生産の話題は掘り下げられるのだ、という希望が持てる話でもある。

次に興味深いのが企画の立ち上げ方、本の作り方である。私の記憶の限りだと、Marieさんはあまりこの手の話題を書かれない。少なくとも(私のように)嬉々として開示するということはない。だから、Marieさんがどのように本作りを進めてこられたのかは想像するしかなかった。もちろん、著者や私と似たような進め方をしているんだろうなと予想はしてたし、その予想はあたっていたわけだが(こういう予想はまず外れない)、今回はより具体的な形でそれを知ることができた。これは、「役に立つ」とか、そういう視点とはまったく別に面白い話であった。映画のメイキングを観ている雰囲気に近い。執筆の環境作りや、ブログ記事から「本」を立ち上げる話などは、少なからずの人の参考になるだろう。

最後に興味深いのが、出版社との付き合い方である。これが実に現代的であり、私と似ている部分が多かった。セルフパブリッシングにはセルフパブリッシングの、商業出版には商業出版の役割がある。それに優劣をつけてどちらかを切り捨てるようなことをせず、それぞれとうまく付き合っている。そこにあるのはこだわりであって、固執ではない。その確固たる、しかし自由な足取りは観ていても気持ちのよいものだ。もちろん、それはそのまま「どんな本を書くのか」というコミットメントと実践にも関わってくる。

共振する

以上がPart 1の概要であるが、さらに注目したいのがPart 2である。ここではPart 1の内容が著者的な視点で再検討されているのだが、ここが熱い。あくまでcase 1との比較に過ぎないが、著者のボイスが一段階くらい大きく聞こえてきた気がする。なぜだろうか。

もちろんそれは著者とインタビュイーのスタイルが近しいからだろう。「シェイク」というキーワードを軸にすると、実装の形は違えど二人は同じようなことをしている。だからといって、「やっぱりそうですよね」というつまらない(≒先の展開がない)共感で終わってはない。むしろ著者は、似たスタイルの「書き方」を通して、自身の「書き方」に新しい光を当てている。

そのことは、Point 3「組み替えながらコンセプトを待つ」で明らかだろう。ここでは、「シェイクの終わり」(なんか小説のタイトルみたいだ)について、それまでよりも具体的な説明がなされている。恰好をつけていえば、それが定式化されている。こうした発見は、似たスタイルを持つ人間との対話でしか見出せないのではないか。そして、著者はその発見に(ある種の)興奮を覚えているのではないか。私が感じた熱量が錯覚でないとしたら、その熱源はこの興奮であろう。

さいごに

蛇足になるが一つ付け加えておこう。

著者はpoint3で以下のように述べている。

最上位階層が決まることによって、シェイクは拡散から収束へと移行します。

この最上位階層が、≒コンセプト、というわけだ。コンセプトの発見によって、シェイクは拡散から収束へと移行する。この定式は、次の疑問を逆照射する。つまり、「コンセプトとは何か?」、だ。

日常的によく使われる言葉ではあるが、自分で本作りをしていると扱いがやっかいな存在であることは痛感させられる。これは改めて取り組むべき問いであろう。

ともあれ、case 1に続きcase 2も非常に楽しめた。続刊も待ち遠しいし、待ち遠し続刊があるというのは人生に彩りを与えてくれるものである。

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