7-本の紹介

2019年の<びっくら本>28冊 #mybooks2019

さて、2019年に読んだ本で「頭をガツンとやられた一冊」を紹介していきます。今回は絞り切るのが難しかったので、部門別にたっぷりとお送りします。

SF部門

『三体』(劉慈欣)

圧倒的な迫力と、ほとばしるストーリーテリング。ともかく続きを読ませてくれ、という気持ちでいっぱいになります。

『なめからな世界とその敵』(伴名練)

現代的なSFというか、いろいろ積み重ねた先にあるSFという感触の作品です。

『息吹』(テッド・チャン)

精緻で、悲しく、SFらしいSF体験を与えてくれる作品です。人間とは、知性とは。あらためての相対化が、私たちの知覚を変容させてくれそうです。

小説部門

『ロイスと歌うパン種』(ロビン・スローン)

ばりばりのITと、もこもこの有機物。それらの対比を描くのではなく、融合や調和を描く作品です。全体的にチャーミングですね。

『デッドライン』(千葉雅也)

圧巻というか、驚嘆というか、文体と内容の呼応という点において、そして文学性と哲学性の両立(というよりもそれは量子的ゆらぎ)において、すさまじい作品です。「よくまあ、こんなすげぇもの書けるな」というのが書き手としての率直な感想でした。

ノンフィクション部門

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング)

テレビを二時間観る時間があるなら、この本を読んでからにしましょう。

『ハーバードの個性学入門』(トッド・ローズ)

日本で特に強い「平均思考」がいかに人を蝕んでしまうのか。私たち、つまり自分自身と他者の評価について再考を迫る一冊です。

『人類の意識を変えた20世紀』(ジョン・ヒッグス)

もう、単純に読み物として面白いです。この20世記、私たち人類は何を通り過ぎてきたのかが一つの指針を元に語られていきます。

思想・哲学部門

『無責任の新体系』(荒木優太)

ああこんちきしょ、おもしれーな、という一冊。これから哲学・文学的なものに入る人の準備運動としても使えるでしょうが、とりあえず最後まで面白く読めますし、最後は最後で盛り上がります。

『ニックランドと新反動主義』(木澤佐登志)

加速主義などの動きについて、端的に知ることができる一冊で、しかも退屈さがありません。個人的にはちょっとしたホラー(あるいは廃頽に向かうSF)を読んでいるような気分にもなりました。

『自由という牢獄』(大澤真幸)

現代を生きる私たちにとって「自由」とは何か。これだけ自由が溢れる世界において、閉塞感が渦巻いているのはなんなのか。それを考える手助けとなるでしょう。

学術・教育部門

『在野研究ビギナーズ』(荒木優太 著、編)

わたしは(自己定義として)在野研究者ではありませんが、フリーランスで物書きの仕事をしているので、本書にはたいへん勇気づけられました。メジャーにならなくたっていいんだ、という小気味良い開き直りも一緒に得られたような気がします。

『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』(結城浩)

やさしい。とてもやさしい一冊です。つまり、優しく、易しいのです。人はわからないものを抱え、それとぶつかり、ときにのりこえ、ときに回避しながら生きていきます。誰かが何かに教えるという行為は、ほんとうに難しく、かつ予想もし得ないことが起こり得る人類の営為なのです。

知的生産部門

『論文の教室』(戸田山和久)

ここまで実用的・実践的な論文の書き方の本は始めてみました。しかも、文体が軽く最後まで読み通せます。どうしても知的生産系の話は「こうなるのが最高じゃん」みたいな理想論ベースで語られるのですが、本書は徹底的に実践的(現実的)です。

『書くための名前のない技術 case 2 Marieさん』(Tak. )

case 1、case 2ともに面白いのですが、どちらか一冊をあげるとしたら、私と近しい方法論のこちらをあげたくなります。個人の技法が語られるので、こちらもやはり実践的(現実的)な話になります。それが役立つのです。

『アンチ整理術』(森博嗣)

「絶対に整理しなければならない」というスタンスでもないし、「整理なんて全然まったく必要ではない」というスタンスでもありません。森先生らしく天邪鬼で、しかし本質的な整理についての議論が展開されていきます。

仕事術・マネジメント部門

『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』(ライダー・キャロル)

アナログノート術の極北みたいな一冊です。ノウハウ書であり、自己啓発書でもあります。昨今はiPadを使ったノーティングが徐々に勢いを増しているので、本書以上のノート術本はもう出てこないかもしれません。まあ、私は私で書きたいノート術がありますが。

『NO HARD WORK!』(ジェイソン・フリード、デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)

おおげさな話ではないんです。むしろ、仕事の中にあるおおげささ(経年劣化した慣習や形骸化した儀礼)を取り除いて、シンプルに人が仕事をして、成果をあげる環境を作ろうぜ、ってことです。

『管理ゼロで成果は上がる』(倉貫義人)

ある意味で、上の本の日本版という事例が紹介されています。つまり、アメリカだけで成立する話じゃなくて、日本だって(やれば)できるんだ、ということがわかります。非常に勇気づけられる話で、5年後くらいの日本の労働環境はもっとずっと労働者寄りになっている、のかもしれません。だったらいいな。

マーケティング部門

『ヒットの設計図』(デレク・トンプソン)

審美眼的な話はよくにおくとして、私たちは何を好むのか、という視点を中心に語られる一冊です。そこそこなじみで、そこそこ新しいもの。そこをいかについていくのか。何かを作り、生み出す人には参考になる本だと思います。

『ファンベース ──支持され、愛され、長く売れ続けるために』(佐藤尚之)

で、そうして生み出したものをいかにプロモーションするのかですが、これはもうファンベースなわけです。それ以外はないんじゃないかと思えるくらいです。昨今のマーケティング周りの不祥事は、このファンベースの考え方をとりさり、その上澄みだけを救おうとしているところに致命的な愚かさがあります。

自己啓発部門

『人生がときめく片付けの魔法』(近藤麻理恵)

こういう本の書き方、伝え方があるんだ(&効果を上げているんだ)ということで頭をがつんとやられました。片付けについても学べることが多い一冊です。

『Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法』(ロルフ・ドベリ)

簡単に言えば、「自己啓発大全」みたいな本です。全部を読めば、そのときの自分に使えそうなものが2〜3くらいはみつかるでしょう。それをせっせと実行していくのがよろしいかと思います。

幸福論

『迷いを立つためのストア哲学』(マッシモ・ピリウーチ)

ストア哲学の解説書です。といっても、学術的なまとめではなく、自己啓発テイストにまとめられています。「思考は、自分がなんとかできるものに向け、そうでないものは棚上げしておく」という考え方は、情報が押し寄せてくる現代では極めて大切になるでしょう。

『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(ケリー・マクゴニガル)

ストレスって、悪いことばかりじゃなくて、それとうまく付き合えば、力にだってなるんだぜ、というパラダイムを伝えようとしてくれる一冊です。過度のストレスに長期的にさらされている環境はまずいにしても、軽いストレスを含めたそのすべてを回避するようにしてしまうと、それはそれでよくない結果になりそうです。

『幸福論』(アラン)

幸福論ですが、心身論でもあります。私たちの心のクセについて語る本でもあります。メンタル的にかなりへばっていたとき、ずいぶん暖かい風をいただきました。

社会部門

『アイデンティティが人を殺す』(アミン・マアルーフ)

「自分」とは何か。自分を構成するものは何か。私たちはどのように、私たちをこの社会に定め、誰かを評価すればいいのか。「個性学」の話にも通じる重要な議論です。これからの日本では避けては通れない話になってくるでしょう。

『不自由な男たち』(小島慶子、田中俊之)

抑圧された女性という話はよく出てきますし、それはまったく正しいのですが、ある種の規範性を押しつけられる男性が持つ不自由さにも目を向けないと、シーソーをひっくり返す結果にしかなりません。男性だってしんどいんだし、そういうときはそういっていいんだよ、という当たり前の話を再確認する必要があるのでしょう。

さいごに

というわけで、今年はSFが大豊作でした。個人的に大満足です。小説では『デッドライン』のインパクトがすごすぎましたし、書き手として(特に何かを教える書き手として)『数学ガールの秘密ノート/学ぶための対話』からは学ぶことが多くありました。

とりあえず、面白い本をたくさん読めた今年一年に感謝です。

さあ、私もばりばりと原稿を書かないと。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です