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読書について

本を読み継ぐ、語り継ぐ

Posted on 2020 年 6 月 3 日2020 年 6 月 3 日 by Rashita
Tag:
  • 読書

以下のツイートから話を始めようと思う。

Dainさんの著書『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』が出て、改めて「ここにこんな本があるぞ」と誰かに伝えることの意味を考えています。
前提として、書籍というものは、すぐに我々の前から、いや目の前を通り過ぎることすらなく消えてなくなるものである、というのがあります。 https://t.co/x8GoOYh99y

— 読書猿『独学大全』手直し中 (@kurubushi_rm) May 30, 2020

皮肉なまでの、逆向きの二つの性質がある。つまり、情報を残すものとしての書籍の性質と、流通する商品としての書籍の性質だ。前者は経年に耐えることが美徳になるが、後者は在庫というマイナスの数値として現れてしまう。

売れない本はすぐに新刊に押し流されていくし、ちょっと売れるくらいの本もやっぱり押し流されていく。出版点数が過激化する現代において、残る本は極めて限られている。

それが良いことなのかどうかという議論には意味がない。はるか昔からすべての本が残ってきたわけではないし、現代ではそれがとりわけ強い形で現れているに過ぎない。なんにせよ、淘汰は必要である。現代ではその淘汰が恐るべき速度で(そして適切かどうかもわからない基準で)進んでいるだけである。

一つ言えることがあるとすれば、読み継がれてきた本は、語り継がれてきた本でもある。「ああ、それならあの本が参考になるよ」と。「息子にはこの本を読ませたいんだ」と。「お子様にはこの本はいかがですか」と。誰かが名前を挙げ、誰かがリストアップし、誰かが陳列した(ないしは蔵書した)本だからこそ、別の人に読んでもらえる機会を得られた。何の助けもなく、書籍が自身の力だけで生き残ってきたわけではない。人がつないできたのだ。


気になる本をぜんぶ読んでいるヒマはないし、そもそも積読山を崩しているうちに人生が終わる。すべてを読まなくても、ネットの画面越しであっても、少なくとも「そんな本がある」ことを知らなければ始まらない。どうやって、知らない本を知ることができるか?


書店は、本との出会いの場所であるが、その絶対数は減少しつつある。近所に書店がない人、書店はあってもそのスペースが縮小して十分な品揃えがない人などはたくさんいるだろう。それに、売り上げのためにヘイト系の本が並んでしまっているお店もある。商売なのだから、ある程度は仕方がない。でも、それとは違う力学があってもいい。

幸い現代は、個人がメディアを持てる時代だ。書店のような「品揃え」はできなくても、個々の人が読んだ本、見知った本を自分のネットワークに拡散することができる。そのような情報交流のネットワークは、書店の代替とは言わなくても、オルタナティブな情報源となるだろう。ある力が弱まっているならば、それとは別の力で支えればいい。

つまり、現代では本を買うだけでは十分ではないのだ。もちろん、買うことは大切で、買わないと書店と出版社と著者にはお金が入ってこない。でも、買っただけで維持されるほど、現代の出版業界はタフではない。本を読んだ人が、その本について語るという助力が必要とされているのだ。

そうした語り(=発信)が、その本を知る人を増やし、何かしらの機会を増やす。


でも、書物とは、多くの人に忘れられている性質かもしれませんが、何年も、何十年も何百年、何千年と「読み継がれる」ことがあるものです。せいぜい百年かそこらで肉体を維持できなくなる人間とは異なり、書かれたことは時間を超えることができるのです。

自分の目の前の本を読むかどうかという問いは、個人的な時間のなかではそれなりに重要な悩みかもしれませんが、しかし書物のほうからすれば、別の時代の誰かが読んでくれればいいのです。あなたにとってその本を読むタイミングが来なくても、その書物がいつか誰かに読まれるならば、そのタイミングまで本を待たせてもいい。


もちろん、だったらたくさん宣伝した方が価値なんですか、という疑問は出てくるだろう。パワーゲームによる騒がしさが心配になる気持ちはわかる。そういうのがまったくなくても、本を取り巻く環境が維持されるならそれに越したことはない。が、現代のメディア環境が変化しつつあることを考慮すれば、そこに多数の声(による助力)が必要である、という状況は変えがたいように思う。

それに、宣伝の声は騒がしさばかりではない。発売した新刊や、人気の本を褒め称えるだけがレビューや紹介ではない。数年前に読んだ、そして今思い返しても役に立ったと、面白かったと、また機会があれば手に取りたいと思える本を広めることも、一つの紹介である。でもって、そうした声が増えていくならば、騒がしさよりも好ましさが広がっていくだろう。


再読に耐える本を書く(本を書く心がけ)|結城浩


だからこそ、書き手は再読に耐えうる本を書いておきたい。時間が経っても色あせない、あるいは時間が経ったからこそ面白さがわかる本。シュワっと爽快で一瞬でなくなる泡ではなく、じわじわと染み込んでくる本。そういう本は、語るに値する本だと言える。時間が経っても紹介する価値がある本。

そうした本と、本の紹介ネットワークは相性がいい。新刊だけなら皆が同じ話をするだけだが、時間が経っても価値が色あせない本はさまざまだろうし、同じ本でも語り方は異なるだろう。その語り自体に価値も生まれてくる。

だから、本を読む人は、読んだ本について語って欲しい。何も長文のレビューをあげる必要はない。書名たった一つでも価値を持つのが現代の情報環境なのである。そのようにして本の存在が知られ、必要とする人に手にとってもらえる確率があがる。それは同世代の話かもしれないし、次の世代なのかもしれない。少なくとも、本はそのことを気にしない。本は誰かに読まれさえすればいいのだから。

ともかく、語り継がれるためには、誰かが最初に語り始めなければならない。それがあなたであってはいけない理由はどこにもないのだ。

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