5-創作文

纓と球の対話

纓「たとえば君が弱音をはくことで、離れていく人間がいるとしよう。それでフォロワー数みたいなものが減るかもしれない」
球「はい」
纓「でも、仮にそれが減ったとしても、君の価値が減ることはない。そういう数字の減少は、君という存在を何も棄損しない。そういう数字とは関係ないところで、君という存在は成立しているんだ」
球「……」
纓「納得いかないようだね」
球「納得いかないというよりも、だったら何が僕という存在を成立させているんですか」
纓「愛だよ」
球「愛?」
纓「そうさ。君の存在を愛してきた人たち、そして君が愛を注いできた人たちによって、君の存在は成立している。それは弱音をはこうが、フォロワーが減ろうが揺らぐことはない」
球「それはどれだけ確かなんですか」
纓「愛の存在と同じくらいに確かだね。つまり、それを信じることができるならそれはそこにあるし、そうでないならそれは見えない、という意味において」
球「まるで神様みたいですね」
纓「そこに違いがあるとは、私は思えないよ」
球「……」
纓「たとえば、これはね。君自身がどれだけ自分の価値を棄損させようとしても、それは叶わないことを意味しているんだ。君の自信と、君の価値は切り離されている。むしろ、それを受け入れることが、自信の始まりじゃないかなと私は思っているくらいだよ」
球「よくわかりません」
纓「私だって似たようなものさ。単にそんな風に考えているというだけで」
球「それでもあなたは自信たっぷりに思えます」
纓「自信を理解していることと、自信があることは別物だからね。そもそも、私は自信があるわけではない。自信があるかどうかは重要じゃないと考えているだけだ」
球「そう考えられること自体が、自信があるってことじゃないんですか」
纓「そうとも言えるが、だからといって事態が変わるわけではない。自信とは具体的な何かを保有していることではないんだ。あらゆるものを捨て去った後に残る、いや残ってしまうものを認めることだ。そこからスタートすれば、失うものは何もない」
球「それはとても怖いことのように思えます。勇気が必要というか」
纓「意志だよ。勇気ではなく意志。ガタガタと震えていても、一歩前に踏み出す力を意志と呼ぶならね」
球「それを僕は持つことができるでしょうか」
纓「そう信じることができるならね。それが世界を上書きするために必要なことだよ」

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