0-知的生産の技術

自軸で閉じて、動かす

たくさんのノウハウとどう付き合うか、というのは現代に特有の問題として立ち上がってきます。

そんなときに有効なのが、自軸で切り分けることです。自分の軸で、ノウハウを選り分けること。自軸フィルター。

たとえば、文章を書く上でのノウハウってたくさんあると思うのですが、私は「自分が読んで面白いと思う文章を書いている人のノウハウは積極的に採用する。逆に面白いと感じない人のノウハウは、あまり積極的に採用しないか、むしろ逆をやる」という指針を非明文的に持っています。

面白いもので、「やり方」と「そこから生まれるもの」って、方向性的な関係性があります。「どう作るか」が「何ができるか」と関係しているのです。だから、「どのようなものを作り出している人なのか」という軸で、「どう作るか」のノウハウを判断するわけです。

そういう判断をしないと、ノウハウは試せないくらいにありますし、そもそも逆のことを言っているものも珍しくないので混乱してしまいます。だから、自軸で選ぶのです。

もちろん、それはある種の「閉じ」ではあります。広く開かれた心ではなく、フィルタリングを通した狭い関心でしかありません。それが十全であると考えるのはさすがに傲慢でしょう。一方で、オープンマインドになってしまうと、情報の濁流に押し流されてしまうわけですから、ある程度閉じないわけにはいきません。

そこで、「閉じて、動かす」です。

まず、自分の軸によって入ってくる情報を選り分けます。これは採用、お前は行ってよし、君はダメだね、という交通整理を行うわけです。で、しばらくしたら門を開きます。そして、未知のものを少しだけ招き入れます。これまで断っていたもの、これまで無視していたものを少し試してみるのです。少し齧ってみるのです。本格的に、大々的に行う必要はありません。それでも、その情報が示すことを虚心で取り組んでみます。で、その感触を確かめるのです。

だいたいの結果は、「やっぱりダメだよね」ということになります。無駄な行為です。徒労です。でも、その徒労があるおかけで、鎖国しすぎて海外とまったく疎遠になる、という状況は避けられます。変えるべきときがきたら、変えていけるのです。

これは、ノウハウだけでなく、広く情報に適用できる話かもしれません。自軸で閉じて、ときどき動かす。そして、軸そのものを再確認する。その繰り返しです。

なんにせよ、現代でノウハウマニアになると、沼から帰ってこられない危険性がありますので、なんでも受け入れるのではなく、一定の指針を持っておくことは有効でしょう。その指針を定期的に確認していけるのならば、閉じこもることはある程度避けられるでしょう。

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